45.うごめく迷宮も余裕
《シーフSide》
俺、マイ、そしてルイスさんの三人は、円卓山に取り残されたという調査隊の救助へとむかうことになった。
俺たちがいるのは、円卓山の麓。
見上げるほどの大きな岩山が眼前にある。
麓の一部分に亀裂があり、そこから中へと続く通路があった。
どこか人工的な雰囲気を感じさせる通路だ。
岩を削って作った……ようには思えない。
岩の中に通路を入れた? みたいな。
「……では、これより救助へむかいます。今回この山の中に取り残されてる調査隊員約、12名を助けるのが依頼です」
「あくまで救助が目的、だね」
「ええ。中は迷宮化してますが、あくまでも救助が目的です」
森や洞窟など、魔素がたまりやすい場所は、ダンジョンになりやすいのだ。
理由はわからない。とにかく、魔素が建物にたまることで、そこが迷宮となるらしい。
「今回のクエストは、かなり難易度が高いと言えます。調査隊によると、中にはSランクモンスターが蔓延っているそうです。また……これを見てください」
ルイスさんが地図を広げる。
筆写師などのサポート職業持ちが作ったらしい。
「か、かなり……広い。内部……複雑……ですね」
俺もマイと同意見だ。
結構通路が入り組んでいる。
Sランク魔物がうろつくなか、この迷路を突破するのは難しい気がした……って、あれ?
「中の連中って生きてるのかな? 結構ヤバそうなダンジョンだけどここ」
「良い着眼点です。ただ、大丈夫です。彼らはダンジョン内にあるセーフゾーンに取り残されてるのです」
ダンジョン内には魔物が入ってこれない場所が、一定箇所存在する。
そこは特殊な結界のようなモノが張っており、絶対安全。それゆえセーフゾーンという。
「なるほど……そっからでなきゃ安全か」
「あ、あの……帰還用の、転移結晶って、、持ってないんですか……?」
あ、たしかに。
使うと一瞬で、近くの街へ飛ぶ転移結晶って言う便利アイテムが存在するのだ。
それ使えば一瞬じゃ無いか?
「彼らはそれを持ってはいたようですが、使えない状況らしいです」
「使えない状況?」
「ええ。ただ、詳細は不明です」
うーん……結晶が何らかの理由で使えないのか。
そうなるとめんどうだな……。
「だいたい事情は把握したよ」
「では、出発しましょう」
ルイスさん俺、マイ、そしてフェン(子犬化してる)。
この四人で、中に居る12人を助けに行く……のだが。
「待った。ルイスさん。地図役に立たないかも」
「? ! まさか……」
さすがルイスさん、察しが良いね。
「通路が、動いてる」
「シーフ兄さん? 通路が動くって……?」
「文字通りだよマイ。ダンジョン内部の通路が、結構あっちこっち入れ替わったり、消えたりして、元の構造からかなり変化しちゃってる」
なるほど、とルイスさんがうなずく。
「ここが迷宮となっているなら、通路が変動しててもおかしくはない……危なかったです。ありがとう、シーフくん」
「ども。あ、道案内は俺に任せてよ。耳良いからさ、俺」
ダガーでかつん、と迷宮の壁を叩く。
コウモリがそうするように、反響音から、内部の構造を把握する。
また、遠くで人間の音がする。
そこへたどり着く最短の道のりも、わかっている。
「さすがです、シーフくん。あなたがいてよかった」
「すごいです兄さんっ!」
さて、出発だ。
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