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39.ムノッカス視点 2



《ムノッカスSide》


 一方、ムノッカスはというと……。

 荷物を取られてしまったので、いったん街へ戻り、補給をして再出発した。


 その頃には【なぜか】、岩鳥ロック・バードが急に見られなくなったのだ。

 そしてムノッカスが護衛する商人、クローニンの馬車は、ようやく、人外魔境スタンピード入口までやってきた次第。


「次は頼むぞ君たち……」


 クローニンから念を押される。

 一度大きく失敗したことで、彼らに対する信用はかなり落ちてる。


 しかし、今から新しい実力者を募るのは難しい。

 よって、クローニンはこのムノッカスたちを雇用し続ける必要があった。


 とはいえ、一度の失敗でかなりの損失が出ている状況。

 もう一度失敗されたときには、彼らを切ると決めていた。


「だだだ、大丈夫にきまってるぜぇ!」


 強気に出るムノッカスだったが……。

 しかし岩鳥ロック・バードに後れを取ったのは事実だった。


 しかも新メンバーカスワン、カスツール【だけが】、バーンデッド兄妹より遥かに格下である(と思ってる)。


 どうしても、悪い予感を拭えないで居た。


「ほんと、頼むよ君たち……。ここからは、砂蟲サンドワームっていうとても強力な魔物がいるんだ」

「だ、だいじょうぶ! この僕がいればなんとかなりますよぉ!」


 ムノッカスはあくまで、先ほどの失敗は新メンバー二人が足を引っ張ったせい、だと思っている。


 まだ自分が強い、と確信してる。


「ほんと頼むよ……」


 げっそり、と疲れた表情の苦労人……もとい、クローニン。

 彼がいなくなったあと、ムノッカスは仲間達に言う。


「やいてめえら! 僕の足ひっぱんじゃねえぞ! 特にそこのカス2名!」


 カスワンとカスツールを指さす。


「てめえらのせいで、さっきはとんだ恥をさらしちまったじゃねえか!」

「「はぁ!?」」


 二人からすればきちんと自分の仕事をしたつもりだった。

 しかしムノッカスは、彼らが足を引っ張ったと思っている。


「次足を引っ張ったらただじゃおかねえから……って、なんだよ?」


 カスワンが言う。


「愚か者だなって」

「なにぃ!?」


「あんたさ、バーンデッド兄妹がすごいやつって、なんで認めてやんないの?」

「はぁ!? なんだよ藪から棒に!」


 はぁ……とカスワンはため息をつく。


「どう考えても、盗賊の兄と、付与術師の妹は、おれらより格上だ。あんたの話を聞いて、そして戦ってる姿を見て合点がいったよ。あんたが強かったのは、あの二人がいたからだって」


 突然の【暴言】に、ムノッカスは切れてしまった。


「なんだ貴様ら! 足を引っ張った上こんどは、バーンデッド兄妹を擁護しやがるのかぁ!?」

「擁護っていうか、事実だし。あんたもやりにくさは感じてるんじゃ無いのか?」


 たしかに、そうだ。

 あの二人が抜けてから、どうにも身体のキレが悪い気がするのだ。


「いい加減、認めなよ。あの二人が有能だったんだって。そのおかげで、強く……」

「だまれぇええええええええ!」


 ムノッカスは声を荒らげた。


「リーダーに対してなんたる無礼! もういい! 貴様らはクビだ!」


 ついかっとなって、ムノッカスはそう言ってしまった。

 彼の頭からは、これから重要な任務があることが、すっぽりと抜けていたのである。


 カスワンたちは「あーそうですか!」といって、立ち去っていく。

 言ったあとから、ムノッカスは後悔した。


「ど、どうするのぉムノッカスぅ……」

「これから、もっと危険な場所いくのにぃ~」


 取り巻き二人が不安げな顔をしている。

 彼女らもまた、自分たちがいつものパフォーマンスを出せていないことに、気づいてる。

 ソンな状態で、付与術師と盗賊が抜ければどうなるか……。


「だ、大丈夫だ! こ、この僕がいるからも、問題ないさ!」


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