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14.俺の師匠がもの凄い人だった



 初クエストを終えた夜。

 ギルメンの皆さんが、俺たち兄妹の歓迎会を開いてくれた。


 めちゃくちゃ美味いメシに、酒を振る舞ってくれた。

 マイは疲れ果てて眠ってしまった。


 フェンに部屋まで運んでもらう。

 彼女は妹の部屋で一緒に寝るらしい。


 で、俺はというと……。


「あら、シーフくん? どうしたの、こんな夜更けに」

「マーキュリーさん」


 寮を出ようとしたところ、入口で、マーキュリーさんとばったり出くわしたのだ。


「俺はちょっと、届け物しに」

「? こんな夜更けに? どこへ?」


 空を見ると、よく晴れた夜空が広がっていた。

 今夜は満月だ。


「ちょっと、師匠のところに。歓迎会でもらった酒を、お裾分けしようかなと」


 俺は魔法袋から酒瓶を取り出す。

 ギルメンさんが俺たちに振る舞ってくれた酒だ。


 結構余ったので、瓶をもらったのである。


「! シーフくんを、ここまで強くした師匠……。ねえ、よければ会わせてくれない? その人に」

「師匠に? いいけど」


 まあいいか。

 別に人を連れてくるなとは言われてないし。


「じゃ移動するぜ。着いてきてよ」

 

 俺はマーキュリーさんと一緒に寮を出る。

 王都は建物が密集してるから、場所を選ぶな。


 結局俺は王都の外壁外へとやってきた。

「こんなところに師匠がいるの……? 街の外だけど……?」

「外って言うか……そら

「は? そ、宙ぁ……?」


 俺は酒瓶とおちょこを取り出す。

 そこに酒を注いで、地面に置く。


 おちょこの表面には満月が移っている。

「何やってるの?」

「門を開いてる」

「門……?」


 すると、おちょこの表面に浮かぶ月が、カッ……! と輝いた。


「へ? ちょ……これまさか転移の魔法!?」


 ぶぉん! と俺たちの体が光る。

 視界が真っ白に染まる……。


 一瞬のめいてい感のあと、俺たちは、さっきとはまったく違う場所に立っていた。


「え? ここって……え、ええ!? えええええええええええええええ!?」


 マーキュリーさんが周囲を見渡して、絶叫。

 そこは真っ暗な空間だ。


 見渡す限りの暗黒空間。

 けれど、宙には綺麗な星々がきらめいている。


 俺たちが立っているのは、硬い、灰色の地面。

 所々ボコボコとしている。


 そして……一番の特徴は、俺たちの背後に……。


「あ、青き星(ブルー・アース)じゃないの!?」


 俺たちの住んでいる星、青き星(ブルー・アース)が輝いてる。


「ここ……嘘でしょ……? あり得ない……まさか……月!?」

「え、うん。そうだけど」


 空に浮かぶ月。

 その月面に、俺とマーキュリーさんは立っている。


「え、!? あたしたちさっきまで、王都の外にいたわよね!? どうやって月面まできたの!?」

「師匠の作った転移門ゲートをくぐって。満月の日だけ、開く転移門ゲートなんだってさ」


 おちょこに満月を映すことで、転移門ゲートが完成。

 そこをくぐって、ここへ飛んできた次第。


「…………」


 ぱくぱく……とマーキュリーさんが口を開いてる。


「どうしたの?」

「げ、転移門ゲートってさ……ダンジョンの中にしかない、凄い設備なんだけど……」


 言われてみると、ダンジョンのボス部屋には転移門ゲートがある。

 が、それ以外で見たことがない。


「しかも転移門ゲートって、構築するのにとても複雑な術式を組む必要があるんだけど。でも……さっきのおちょこにお酒入れただけでしょ? それでどうやって転移門ゲートが作れるの!?」


「知らないよ。作ったの師匠だし」


 俺は月面を歩く。

 マーキュリーさんが後から着いてきた。


「て、てか……呼吸とかどうなってるの……?」

「あの転移門ゲートくぐると、特殊な加護を得るんだってさ。それで呼吸もできるし、普通に歩けるんだって」


 まあ、あんまよくわからないけども。


 ややあって。


 俺たちが月面を歩いていると、1つの、立派な城が見えてきた。


「あれが師匠の家」

「い、家って言うか……城じゃないの。さながら、月面城かしら……って、待ってよシーフくん!」


 マーキュリーさんを連れて、俺は月面城へ入る。

 青く輝く不思議な石で削って作られた、立派な城だ。

 

 中に入ると、あちこちに宝石が飾ってある。


「もの凄い数の宝石ね……」

「なんか昔師匠が地上にいたころに、手に入れた宝石なんだってさ。あの人、金と酒と肉が好きなんだ」


「なんという欲望に忠実な……一体、どんな人なのかしら……?」


 ほどなくして、俺は一番奥の部屋へと到着。

 ドアを開ける……。


「お、汚部屋……」


 足の隙間もないくらい、物であふれかえっていた。

 宝石とか、雑誌とか、パンツとか、とにかく部屋は物であふれている。


「いつ見てもきたねえなぁ……。女って綺麗好きじゃないのか? マイはいつも部屋をちゃんと綺麗にしてるぜ」

「へ、へー……そうなんだー……」


 マーキュリーさんが気まずそうな声を出す。

 なんだこいつの部屋も、汚部屋なんだろうか。


「おーい、師匠。いるんだろ? 弟子が会いに来てやったぞ」

「あら、珍しい。呼びかけるなんて。君は耳が良いから、どこに居るのかすぐわかるんじゃないの?」


 まあ、普通の人間の音なら、超聴覚で直ぐに拾える。

 

「師匠の音を拾うのは、無理」

「無理? 難しいじゃなくて?」

「ああ。無理。なぜって……」


 そのときだ。


「坊やぁ~♡ ひさしぶり~♡」


 ぐにょり、と俺の背中に大きな胸が押しつけられる。

 温かく湿った、けれど……柔らかいそれは、女の乳房だ。


 はぁ……と耳元に息が掛かる。

 ……酒臭さを、今、感じた。


 音よりもまず、だ。


「え!?」


 マーキュリーさんが驚くのも無理はない。

 彼女から見て、目の前に、女が現れたのだから(俺の背後)。


 一言で言えば、眼鏡の、爆乳女だ。


 タンクトップにホットパンツ、というラフな格好。

 くしゃくしゃの髪の毛は、青白く発光してる。


 薄着に、爆乳、眼鏡……。

 そして、頭の上には、三角帽子を被っている。


「【キルマリア】。また飲んだくれてたな」

「は!? き、キルマリアぁあああああああああああああああ!?」


 うっさ……。

 また大声出してる、このオバさん。


 ほんとデカい声だすの好きだな。

 

「キルマリアって……月の大賢者キルマリア様!?」

「あらぁ~? なぁに、私のこと知ってるの?」


 ささやくような声音で、キルマリア師匠が言う。

 俺に後から、蛇みたいに絡みながらな。

「知ってるもなにも……神域の八賢者(プラネテス)の一人じゃない……ですかっ!」


 神域の八賢者(プラネテス)……?


「ん? よく見たらあんた……マーリンの親類縁者?」


 また知らない単語が出てきた。

 誰だよマーリンって……。


「は、はい。神域の八賢者(プラネテス)がひとり、水星のマーリンは、あたしの祖母……ですけど」


 なんかマーキュリーさん、かしこまってる……?

 さっきから知らん会話が繰り広げられてて、置いてけぼり感が半端ないんだが。

「そっかマーリンの孫娘ね~」

「おいマーキュリーさん、いい加減説明してくれよ。さっきからあんた、何に驚いてるのだよ。神域の八賢者(プラネテス)って?」


 マーキュリーさんはため息をついたあと、説明してくれた。

 なんだかんだ面倒見のいいんだよな。このオバさん。


神域の八賢者(プラネテス)っていうのは、この世界にたった八人しか存在しない、最高峰の魔法使いのことよ」


 最高峰の魔法使い……?

 師匠が?


「地球の賢者ラブマリィ、太陽の賢者アベル・キャスター、など、歴史に名前を残す凄い賢者たちが、神域の八賢者(プラネテス)に所属してるわね」

「え、キルマリア師匠って、歴史に名前残ってるの……?」


「ええ。なにせ、世界を救った天才魔法使いですもの。大昔地上に降り注いだ神々を、塔に封じて世界を守ったっていうね」

「まじか……」


 世界を救った大賢者、それが……キルマリア師匠だったとは……。


「タダの飲んだくれババアじゃなかったのか……」

「坊や酷い! 私泣いちゃうわ! ベッドで慰めて~♡ むちゅ~♡」


 酔っ払った師匠が俺の頬にキスしてくる。

 ウザい。気持ち悪い。


 ぐいっ、と俺は師匠を押しのける。


「で、でも……納得したわ。世界を救った大賢者、キルマリア様直々に鍛えてもらったんだから。そりゃ、強くもなるわよね……シーフくん」


 なんか納得し、感心してる声で、マーキュリーさんが言う。


「でも……キルマリア様。あなた様は魔神を封じたあと、行方不明になってましたよね?」

「そうねぇ。疲れちゃって、この月面城に引きこもってたの。もう俗世と繋がりを持つのはこりごりってね」


「じゃあ……なんでシーフくんを鍛えたんですか?」


 俺に絡みついてる状態のまま、キルマリア師匠がニコッと笑う。


「顔♡」

「……へ?」


「坊やの顔が、もろタイプ♡ 私ね~。彼みたいな、男の子と女の子の中間くらいの、中性的な美少年が、ちょ~~~~~~~~タイプなの!」


 ……あれ? 師匠ってそんな浅い動機で、俺を鍛えてくれたの……?


「シーフくん……って。ものすっごい、ラッキーボーイなのね……月の大賢者様に鍛えてもらえるなんて、羨ましい」


 羨ましいだぁ?

 何言ってんだこのオバさんは。


「あらなーに、マーリンの孫ちゃんも、私にしごかれたいの? いいよ~♡ 大歓迎♡ たぁっぷり、痛めつけてあげちゃうよ♡」


「辞めといた方が良いよマーキュリーさん。この女、くっそドSだから」


 酒癖悪いうえに、ドSっていう、くそみたい面倒な性格してるから。

 マイを見習え。あの素直な天使を。


「え、遠慮しておきます……」

「あらそ。じゃ、坊や♡ ひっさしぶりにお稽古着けてあげる♡ 美味しいお酒のお礼にね」


 もうこいつ、俺の持ってきた土産、全部飲んでやがった。

 いつの間に……。


 ぱちんっ、とキルマリア師匠が指を鳴らす。

 俺たちは城の外へと移動していた。


「転移魔法……しかも無詠唱で。さすが、神域の八賢者(プラネテス)……世界を救った魔女……」

「坊や。クエストで新しいスキルと武器が手に入ったんでしょ? 見せてみなさいな」


 俺は牛頭包丁ミノ・チョッパー、そして……新武器、大鬼丸。(一本だけもらった)

 二つの小刀を、両手に構える。


「って、キルマリアさま。彼は妹の付与がないと、スキルが使えないんですが……」

「あー、大丈夫大丈夫。使えるようにしてあるから。少なくとも、ここでは、坊やの妹が【居る】ときと、おなじことできるから」


「な、何を言ってるのか……さっぱり理解できない……!」


 マーキュリーさんも困惑してる。 

 ほらね、師匠は適当な人だから、全然説明してくれないんだよ。


 だから、俺が世間知らずなのもの、しかたないだろ。

 っと。


「坊や、本気で来なさい♡ 優しく殺してあげるわ♡」


 ぺろり……とキルマリア師匠が舌なめずりする。

 俺は、2本のナイフをしっかり構えた。

 本気でやらないと、殺される。

 

「来なさい♡」

「ああ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] >太陽の賢者アベル・キャスター、 現在連載中の話の主人公w てことはアベルがやらかしまくって数十年後ぐらいかこの話の年代。
[一言] 居るときと同じように・・・どういう仕組みかなぁ 魂の奥底に履歴があったり? 付与が切れてもそれはタイマーがゼロなだけで しばらくは体内に残っててそれを強制的にタイマー動かす とか妄想すると…
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