表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/110

107.



 俺の手が、岩の表面に触れる。

 力を込めて叩き割るのではない。

 ただ、「死」という概念を、対象に浸透させるイメージ。


 俺の耳は、物質の弱い部分を聞き分けられる。

 その中でも特に弱い、最も脆い場所の音。

 俺はこれまでの修行を通して、そして女神のアドバイスを耳に入れたことで理解した。


 ここだ、と思った場所に手を置く。


 ヌッ、と。

 俺の手が、まるで水面に触れたかのように、岩の中に沈んでいく感覚があった。


 ドゴォッ! という破壊音はしなかった。

 代わりに聞こえたのは、もっと静かで、それでいて恐ろしい音だ。


 サラサラサラ。


 俺の目の前にあった巨大な岩塊が、音もなく崩れ落ちていく。

 ひび割れたのではない。

 砕け散ったのでもない。

 岩を構成していた結合が解け、ただの砂の山へと還ったのだ。


「な……」


 俺は自分の手を見る。

 傷一つない。痛みもない。

 ただ触れただけで、硬度を持った物質を、塵へと変えてしまった。


『うん、お見事!』


 頭の中に、インドラの声が響く。

 どこか誇らしげな、満足そうな響きだ。


『物質における「死」とは、即ち「崩壊」であり「風化」よ。形あるものはいずれ壊れ、土へと還る。シーフの奪命ヴォーパルは、そのプロセスを極限まで早め、強制的に「終わり」を与えたの』


「終わりを、与える……」


 なるほど。

 生物なら心臓を止める。

 無機物なら、形を保つ力を奪う。

 それが、このスキルの真の姿だったのか。


 足元の砂山を見下ろす。

 これは破壊力じゃない。もっと根源的な、強制力だ。


「……ありがとな、インドラ」


 俺は短く礼を言った。

 以前の俺なら、こんな素直な言葉は出なかっただろう。

 俺は最強で、妹以外は全員敵で、神の言葉なんて胡散臭い戯言だと切り捨てていたはずだ。


 だが、耳を傾けた結果がこれだ。

 俺一人では決して辿り着けなかった境地に、今、立っている。


『ふふん、礼には及ばないわっ。あんたが強くなってもらわねば、あたしも困るからねー!』


 インドラは照れ隠しのようにプイッと顔を背け、ふんすと鼻を鳴らす。

 その仕草に合わせて、彼女の長い髪がふわりと揺れた。


 俺は拳を握りしめる。

 この力があれば、どんな敵が来ようとも――例えそれが、生物でなくとも殺せる。


 マイを守るための最強の矛が、今ここで完成したのだ。


【おしらせ】

※1/30(金)


新作、投稿しました!


ぜひ応援していただけますとうれしいです!

URLを貼っておきます!

よろしくお願いいたします!


『奈落の【魔法杖職人】が、自分の作る杖は神話級魔道具だと気付くまで~「魔力ゼロの役立たず」と森に捨てられた元聖女、廃工房で物作りしてたら、いつの間にか世界中の英雄から神職人として崇拝されてた~』


https://book1.adouzi.eu.org/n9638lr/


広告下↓のリンクから飛べます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ