15.無茶苦茶
俺は次の修業へ突入することになった。
俺たちがやってきたのは、治療院の裏に広がる、森の中だ。
リリア院長の後ろを俺が着いていく。
……相変わらず、この人の足音はオカシイ。普通に歩いてるのに、全く足音がしないのだ。どうなってるんだよこの人……。
「つきましたよ」
たどり着いた先には、巨大な岩があった。
俺の身長の、三倍くらいはある大岩だ。
「これを切ってください」
「…………」
本気なのは、声から伝わってくる。
この硬そうな岩を、斬る……だと……?
「わ、わかりました」
そう、この人が冗談を言っていないのは声から伝わってくるのだ。
なら、やる一択だ。
「武器貸してよ」
「ありません」
「は……?」
武器は……ない?
「武器を使わずに、この岩を切ってください」
「!?」
……な、なんじゃそりゃ。さすがに無茶すぎるだろ!
「良いですか? 砕くのではなく、壊すのでもなく、斬る。武器を使わず。それが、あなたに課した修業その2です」
「…………」
むちゃくちゃだこの人……。なんて、弱音は吐かない。
これをやれば、強くなれる。そう呈示してもらってるのだ。
なら、やる。やらねば強くならないのだから。
「武器を使わずに、斬れば良いんだな?」
「そうです」
俺は岩に近づく。とりあえず、こんこんと、岩を指で叩く。
反響する音の具合から、大体の硬さが推し量れる。
……かなり、硬い。鉄以上の硬さをしてるのがわかった。
これを素手で……?
「…………ぜえい!」
俺は渾身の力を込めて、手刀を放つ。
がつんっ!
「っつうぅうう……!」
いってえ! ほ、骨が……骨が折れただろこれ!
「悪いけど、治療……って、いないし」
リリア院長が姿を消していた。俺が怪我するのわかってて、止めなかったうえに、消えた。
つまり、治す気はないってことだ……。
「くっそ……あの女……」
スパルタが過ぎるだろ。
だが、やるっきゃない。俺は手刀を構えて、そして攻撃を放つ。
「いっつぅ……」




