14.次の修行
俺は音で、物を見ることができるようになった。
目では見えない存在を感知する力。
俺の耳は空気同士の面を捕らえることができた。
たんたんたんっ! と俺は空気の面を蹴り、そして崖の上へと昇ってきた。
着地すると、そこにはマーキュリーさん、そしてリリア院長がいた。
マーキュリーさんは安堵の息をつく。……だいぶ心配させてしまったようだ。それはほんとに、申し訳ない。
「頑張ったわね、シーフ君」
「あんがと。でも……まだだよな?」
こんなもんで、修業が終わりとは思っていない。
リリア院長がうなずく。
「無論。では、次の修業地へ移りましょう」
「え!? ちょっと休ませてあげなさいよリリア……」
マーキュリーさんがそういうも、リリア院長は首を振る。
「駄目です。何を甘いこと言ってるのですか?」
「ええー……甘いって……今この子は、何度も死にかけながら、新しい力を手に入れてきたばかりなのよ……?」
「だから?」
……なんて厳しい人なんだろう。この程度で、根を上げて貰っては困るとでもいいたいらしい。
俺はうなずく。
「マーキュリーさん。俺は行けるし、次の修業を早くやりたい」
「シーフくん……」
マイとはすでに、かなり実力の差が開いてしまってるのだ。
俺が休んでいる間に、マイはどんどんと才能を伸ばしているだろう。
だから、俺は休んでいられない。
「いい心意気です。それに」
リリア院長が俺に、手を伸ばす。
瞬間、俺の体から疲労感が消えた。
「一瞬でヒールしておきました。これで大丈夫でしょう?」
「ああ、サンキュー!」
これでまた修業ができる……!
マーキュリーさんは大きくため息をつく。
「止めても無駄か……頑張ってね」
「おう!」
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