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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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 少し時間をおいてから町へと戻ると、すでに姉様は戻った後だった。宿屋に戻ると、旦那さんに「よく似た女性が来たが、家族か?」と聞かれたので、素直に姉だと答えた。

 少し話をすると、幸いというべきか、姉様はリートとリンデの存在には気づかなかったらしい。この町の名前と領主を確認してからすぐに家に戻ったようだ。

 詳しいことは子供たちの様子を見てから話します、と一度話を切り上げて子供たちの元へと急ぐ。


 一応、約束した時間通り、まだ出かけてからそれほど時間は経過していないし、これまでだって何度か二人を置いて依頼をこなしていたけれど。それでも、何度経験しても慣れることはない。

 足早に二人を見てくれているという奥さんのもとへと向かう。コンコンコン、と手早くノックをすれば、中から「どうぞー」という、ゆったりとした奥さんの声が聞こえてきた。

 部屋の中は、宿屋ご夫婦の私的な部屋なのか、私が宿泊している部屋とは調度品からして雰囲気が異なっていた。宿泊用の部屋は、良く言えば万人受け、悪く言えば平凡という印象を受けるが、こちらはお二人の趣味が全開なのだろう。調度品に統一性はなく、お二人が好きなものを集めました、という雰囲気である。


 ご夫婦のベッドの横に、借りている大きな籠が置かれており、なかでリートとリンデは機嫌良さそうにすやすや眠っていた。お腹をすかせて大泣きした様子もなく、その様子にホッ、と息をつく。


「ありがとうございました。とても助かりました」

「いえいえ、二人とも、とてもずっと機嫌が良くて。気がついたら大人しく眠っていましたよ」


 な、なんですと……?

 え、ママ以外と一緒の時のほうが、機嫌いいの? どゆこと?


 なんだかちょっぴり切なくなっていると、リートの目がパチリと開いた。私だと認識しているかのように、にこーっと笑った。

 もちろん、これは私だと判断したわけではない、ということは理解している。それでも、勝手にそう思って嬉しくなるのは私の自由だろう。


 リートを抱き上げると、次いで、リンデも目を覚ました。片腕にリートを抱いたまま、リンデに腕を伸ばすと、小さな手で私の指をぎゅっ! と握りこむ。


 ん~~~!! うちの子たち可愛い!!


 リンデがつかんだ私の指をそのまま自分の口に運ぼうとしたので、慌てて指を引き抜く。すると、リンデはきょとん、とした顔で私を見上げた後、何事もなかったかのように、自分の指をしゃぶり始めた。


 奥さんに改めてお礼を言って、調査結果を簡単に説明しようかと思ったタイミングで、二人が盛大に泣き始めた。どうやら、お腹がすいたらしい。

 タイミングとしては危なかったと考えるべきか、ちょうどよかったと考えるかは曖昧なところではあるが、奥さんが気を利かせて部屋を出て行ったので、二人のお腹を満たしてあげなきゃね。


 二人にたっぷりとおっぱいを飲ませて、背中を叩いてげっぷをさせる。二人が間違いなくげっぷを出したのを確認してから、おんぶ紐でリートを背中に背負い、リンデはそのまま腕で抱き上げて部屋を出る。


 そうして、食堂へと降りていくと、宿屋のご夫婦と今朝見かけた青年以外にも、何人かが集まっていた。みな、魔物の様子が知りたいらしい。


「それで、魔物の様子はどうでしたか?」


 どうやら、姉様からはなにも具体的なことは聞いていないらしい。町の名前と領主だけを確認してさっさと帰っていったようだ。

 ちなみにここの領主はイルヴィッツ伯爵というらしい。


 イルヴィッツ、イルヴィッツ、と何度か小さく転がすも、やはり名前に覚えはない。オルトマンと接点がなくとも、中央に影響があったり、大きな商会を持っていたり。あるいはその領地でしか取れない何か、あるいは大きな鉱山を持っているなどしていたらさすがに記憶に残っているのだが、全く覚えがない。

 それでも伯爵位ということは、おそらく、その更に上位の貴族にとっては居なくてはならない重要人物なのかもしれない。上位貴族にイルヴィッツという家名や爵位は存在していないはずなので、血族か、姻族か。いずれにせよ、この地域一帯ではそれなりの力を有している、と思った方がいいかもしれない。

 姉様が、兄上をも巻き込むつもりだったけれど、逆にちょうどよかったかもしれない。兄上ならば、上位貴族とその直属の家門も記憶しているだろうし。問題があれば、きっと、イルヴィッツ伯爵の上位貴族に根回ししてくれるはず。


 それはさておき。

 一角兎の現状については、今の時点でどこまで語るか。それが問題である。

 災害級到達まで秒読み開始、と言ってしまえば無駄に怯えさせてしまうし、そもそもそうなる前に何とかしたい所存。

 しかし、かといって「何の問題もありませんでしたよー」なんてことは、口が裂けても言えない状況なのが現実だ。


 町への被害はゼロで片付けたいが、万が一の場合は想定しておかないといけない。

 まぁ、この辺は我が家の後継ぎである兄上の方があれこれうまく対応してくれるとは思うけれど。


 うーん。


「そうですね、とりあえず……ちょっと、私一人で対応しきれるレベルではありませんでした。なので、伝手を使って、こちらの領主様に話を通すことになったので、明日か明後日には、もう少し詳しくお話ができるかと思います」

「領主様への伝手!?」

「お嬢さん、一体、何者なんだい?」

「えー……オルトマン辺境伯領の生まれでして。オルトマン辺境伯は、その、身分問わず、ある程度の実力があれば、オルトマン家と直接やりとりできまして。その関係で、少々……」


 嘘ではない。全くもって、嘘ではない。

 そう、オルトマン辺境伯領(うち)では、身分よりも実力がものをいう。だから、平民だろうがなんだろうが、実力者のことを、辺境伯直系(わたしたち)は把握しているし、直接連絡が来れば、よほどのことがない限りは無碍にはしない。


 ただ、そう、私がオルトマン直系の娘だって言ってないだけで! 嘘ではないのだ!!

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