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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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「ここの領主って誰だったかしら」

「わかんない。隣の町にはギルド支部あるけど……専属の契約冒険者は居ないみたい。いつも人手不足で、なんか、私が隣町にいたころには、私から依頼を受けに行くんじゃなくて、向こうが私に依頼を持ってきてた」

「それは……確かに、こんな田舎なら冒険者もほとんど来ないのわかるけれど」


 それはそれとして、自身の治める領がこんなことになっているのに、何も対策を取らずに放置しているのはさすがにいかがなものかと思う。

 とはいえ、ここはオルトマン辺境伯領ではないので、私たちが好き勝手するのはさすがにまずい。

 私が首を突っ込んだのだって、最近町のはずれに魔物が出る、主に一角兎、と聞いていたので片手間に片付けれると思ったからだ。まさか、蓋を開けてみたらこんな、災害一歩手前だなんて誰が思うというのだ。


「殲滅するのは簡単だけど、一度に全部はさすがに無理だし、確実に取りこぼした個体から町に逃げるだろうし。そうそう、町のはずれに、炎狐と火喰鳥の死骸があったの。体中に穴が空いてたから、多分、一角兎に反撃されたんだと思う」

「は!? どっちも肉食で炎狐に至っては一角兎の天敵じゃない!! いくら一角兎が好戦的とはいえ、天敵を……つまり、数の暴力で天敵を倒せる、と学習した個体たちがあの中にいるってわけね?」

「恐らくは。それも、このあたりの草を食べることができず、町まで遠出するしかなかった個体たちが」

「……明らかに下位のカーストね。あるいは、尖兵か……尖兵なら、まだいいのだけど。下位カーストの一角兎までが炎狐を倒してしまったとなると、ちょっとまずいわね」


 まずいなんてもんじゃないです、姉様。


「とりあえず、ここの領主に報告した方がよさそうね。筋を通すなら父上か……せめて、兄上から話をつけるのがいいんでしょうけど」


 確かに、人員被害が出かねない討伐となると、事前に領主へと話を通しておくのが筋である。でも、宿屋の旦那さんの話を聞く限りでは、人を派遣してもらえるかどうか、少し怪しい。

 領地経営の方法は、もちろんその領主ごとに異なる。だから、自領の中であっても有事の際には優先して見捨てる土地もある、なんて話は聞いたことあるけれど……


 話をつけるなら、同じ領主である辺境伯である父上か、あるいは跡継ぎである長兄のヴィル兄上からするのがいいのは分かる。

 しかし、兄上は王都にいるはずだし、父上も領地から簡単に離れることのできない立場だ。いろいろと調整して、それからここの領主に、なんてことをしていたら、あっという間に数カ月が経ってしまう。

 貴族のあれこれを正当な手順で行おうとすると、非常に時間がかかるのだ。


「手紙のやり取りなんて面倒なことしてる暇ないし。仕方ない、私が一度戻って、父上から書状を貰ってから兄上を連れてくるわ。オルトマン直系二人が直接訪ねて行って、門前払いにはならないでしょうし。さすがに今日、明日にでも災害レベルに達するということはないもの」


 姉様の言葉に、私は頷いて賛成する。国内において、オルトマン辺境伯家の地位は決して低くはない。本家の人間は自領からあまり出ることはないが、分家は王都に根付いているし、何より前王妃殿下がオルトマンの系譜である。

 あからさまな敵対派閥は、ほとんどいないと言っていい。唯一、敵対的と言えるのは、現王妃の実家絡みであるが、それも表立って敵意を向けることはないはずだ。


 だって、我が家に嫌われたら、冒険者ギルドもその領地から撤退する可能性があるからね。

 もちろん、我が家からはそんな指示は出していないので、冒険者ギルドの意思である。

 ただ、冒険者ギルドとオルトマン辺境伯家は密接な関わりがあるというのは周知の事実なわけで。そして冒険者ギルドの支部が自領にないどころか、ギルドに嫌われているとなると、それは冒険者の手を借りるのも一苦労ということに繋がるわけで。そうなると、領内の魔物討伐も自前の騎士団だけでどうにかするか、頭を下げて国に支援を要請することになる。

 

 ……まぁ、まともな判断のできる貴族なら、そんな判断を間違えたりしないよね! というわけで、オルトマン家は王室派ではあるものの、中央からは距離を取っているし、貴族派からも表立って喧嘩を売られないという稀有な立ち位置なのだ。


「で、結局ここは、どこなわけ?」

「……わかんない!」


 家を出てから、あまり深く考えないで、あちこちをうろうろとしてきた。そのせいもあって、正直、今どこにいるのか、ということを意識しないでやってきた。できれば王都からもオルトマン領からも離れているところ……私を知っている人がいなさそうなところ……ということだけを意識してきたので、王都からもオルトマン辺境伯領(うち)からも離れているのは確かである。


 それを伝えると、姉様は、


「んー……一角兎が繁殖しやすい気候、土地で、なおかつ王都からもオルトマン辺境伯領(うち)からも離れている場所……となると……?」


 と、私には全く理解できないことをあれこれと考え始めた。

 魔物については姉様から学んだので知っているが、その知識の大半は、弱点や倒し方などの方に特化している。どうすれば倒しやすいか。なにをすれば狙われやすいか、など、魔物討伐を定期的に行う我が家には必修科目と言っても過言ではない。

 

「まぁ、あれこれ考えてないで、まずは最寄りの町できいた方が早いわね。……ラヴィニア? 何してるの、行くわよ」

「え、あ、うん……その、私はもう少し、観察してから行くね。何か見落としていることがあるかもしれないし」

「そう? まぁ、いいけど。一度家に戻るついでに、通信用の魔道具も持ってくるから、これからはそれで連絡とること。いい?」

「……」

「ラヴィニア」

「……はい……」


 一緒に戻ると、姉様にリートとリンデのことがバレるかもしれない。最悪、バレることも覚悟はしているが、できればバレたくない。

 そう思って、戻る時間をずらそうと思ったのだが、これからは通信用魔道具を持たされるらしい。確かに、私から姉様に助力を求めたわけだし、姉様としては連携を取るためにも、そして妹の安否を確認するためにも、当然のことかもしれないんだけど……だけどぉ!!


 あわわわわわわわ……

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