悪役令嬢は証明する
一瞬の沈黙の後、ダグラスはいかにも困った子を見るような目で私を見た。
「先ほど倒れた時に頭は打っていないと思いますが、もしかして見えないところで打ちましたか?それとも何か悪い物でも食べたとか。いずれにしてもお嬢さまの妄想が突飛すぎてついていけませんよ」
「そう…だな。エレナ、突然そんなことを言い出して、どうしたんだ?」
固まっていた兄もダグラスの言葉に同意する。
「頭は打っていませんし妄想でもありませんわ」
「俺が第一王子だなんて、どこからそんな発想が湧いて出たんですか」
呆れたようなため息をついてダグラスが言った。
その様子に動揺は無い。
本当、嘘つきなんだから。
ダグラスは息を吐くように嘘をつく。
その姿を見れば見るほど、私の胸は痛みを感じた。
「グラント国の王族にはその証明が体のどこかに刻まれている」
私はゆっくりそう言うと、ダグラスから視線を外さずに続ける。
「腰骨の辺りに、あるでしょう?」
「何がですか?」
「王家の紋章の痣ですわ」
小さな変化も見逃さないために、一瞬たりとも視線を外さない。
だからちゃんと気づいた。
ほんの一瞬、ダグラスの右手が動いたのを。
無意識に腰の辺りを隠したくなったのだろうか。
でもこれでわかったよね。
ダグラスの痣は右腰にある。
まぁ、私は友人が貸してくれた本ですでに知っていたけど。
「エレナ!」
そんな緊迫した空気の中で、兄が突然私の名前を強く呼んだ。
「はい!?」
なぜだろう。
別に怒られる心当たりはないけれどビクついてしまうのは。
「なぜそんなことを知っている?」
兄は非常にお怒りなご様子だ。
そうよね。
王族の証明である生まれつきの痣の存在は公表されていない。
下手に知られると痣を偽装して王家の血筋を名乗る輩が出てきかねないからだ。
それを思うと、さっきまで第一王子の存在すら知らなかったはずの私がそんな第一級の秘密を知っていることを不審に感じるのも無理はなかった。
「お兄さま、私はライアン様の婚約者ですのよ。そのことに関しては以前に聞き及んでいますの」
いや、もちろん嘘だけど。
さすがにあのライアンでもそんな大事な秘密はいくら婚約者といえどもホイホイとは教えてくれない。
でもここではそれしか信憑性のある言い訳が難しかった。
「違う!」
…はい?
何が違うと?
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