悪役令嬢は困惑するー前世ー
友人に勧められたゲームは、一番最初の王太子の攻略ですでに頓挫気味だった。
「どうだった?どうだった?」
久しぶりに学食で一緒にランチをしようと席に着いた途端、友人のワクワクが抑えきれない瞳と目が合う。
「いやー…うーん…どうにもこうにも胸糞悪かったわー」
「ええー?なんで??」
心底びっくりした友人に、いったいどう伝えようか迷う。
「まだ一人目の王太子の攻略中だけど、悪役令嬢が悪い子には思えないし、王太子は残念王子だし、ヒロインがただの尻軽に思えちゃうんだよね」
「ああー…それね。そこは突っ込んじゃダメなとこだよ」
「どういうこと?」
ワクワクの瞳がいきなりスンっとなって驚く。
「あれはあくまでファンタジーだからね。細かいところを気にすると楽しめなくなっちゃうのよ。基本、ヒロインに感情移入するのがマストだし、倫理観とか言い出したらキリがないのよねー」
かなりゲームにハマっている友人から思わぬ冷静な言葉が返ってきて、むしろそのことに私はびっくりした。
「だって考えてもみてよ。逆ハーなんて現実ではありえないし、男爵令嬢が王太子と恋愛関係になった挙句に結婚まで行くなんて非現実的じゃん」
「それがちゃんとわかっているのにハマれる?」
「それはそれ、これはこれだからよー。頭を空っぽにして楽しむの」
ランチのA定食を頬張りながら、友人はこともなげに言う。
「そういうもん?」
「そういうもんよ。まぁ、そこら辺のことが気になるなら王太子よりも先に他のキャラから攻略した方がいいかも。そっちの方がまだマシだから」
そこまで言って「あ!」と友人は声を上げると続けた。
「でもダグラスは最後に攻略するのがおすすめよ!」
「んんー…最後まで辿り着けるかな?」
「頭空っぽにすれば万事オッケー」
友人の軽口に笑って、私は自分のB定食を食べる。
とりあえずは王太子を後回しにして…他のキャラを先にやってみようか。
その前に一度攻略本をちゃんと見ておこう。
攻略本を見てあまりにも納得できない感じだったら、友人には悪いけどそこで止めるつもりだ。
まったくときめかないわけではないんだけどなぁ。
願わくば、他のキャラではもっとドキドキしたいよね。
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