悪役令嬢は思い出すー前世ー
「今のイチオシはこれよ!」
そう言って友人が鞄から取り出したのはパッケージに可憐な少女と幾人ものイケメンが描かれているゲームソフトだった。
『黄昏の時にあなたを想う』
最近巷で流行りのゲームに友人は夢中だ。
感想を言い合ったりしたいし、貸すからやってみろと言ってきかない。
「いいけど…。でもバイトで忙しいから進めるのにすごく時間がかかるかもよ?」
「いいのいいの。私はもうかなりやりこんだし、ゆっくり進めてくれれば。その代わり始めたら私の話につき合ってもらうわよ!」
乙女ゲームという物をやったことがないわけでは無い。
でも奨学金をもらって大学に通いつつ生活費をアルバイトで稼ぐ日々に余分な時間はほとんどなかった。
「あ!あと、これも貸してあげる」
そう言うと、友人は鞄からさらに攻略本を取り出す。
「何、このゲーム攻略本まで出てるの?」
「そう!し、か、も、今度アニメ化もするんだってー!」
心底嬉しそうに言う友人に呆れながら、私は渡されたソフトを見た。
なになに…。
ヒロイン一人に対して攻略対象が六人か。
時間が無い中でゲームをクリアするためにはなるべく最短ルートで進めたい。
人によっては自力でのゲームクリアに拘ったり、ネタバレは絶対に嫌という人もいるけれど私はけっこう平気だった。
たとえ内容がわかっていても、いざゲームをしてみればそれはそれで楽しめるからだ。
攻略本にはそれぞれのキャラクターの特徴やバックグラウンド、攻略チャートが載っている。
「おすすめキャラは誰?」
「えー?そりゃあもちろんダグラスよ!」
どのキャラを見ても煌びやかで華やかな容姿だったけど、その中でも友人イチオシは黒髪の隠しキャラだ。
「ふーん」
「もう!反応が鈍いー!!」
「だってまだ何もわからないもん」
「パッと見でこのキャラいいなー、とかないの?」
「うーん…まぁ確かにこの黒髪の人は見慣れた感じで馴染めるね」
「感想…感想が枯れたおばさんのようよ!」
『嘆かわしい』とでもいうように言うと、友人は私の肩を掴んで顔を覗き込んでくる。
「いーい?あんたはまだ若いの!現実で彼氏を作る暇がないって言うなら、せめてゲームでもいいから心の潤いをチャージするのよ!」
恋バナ大好き人間に言われてもー…。
とは思うものの、この友人がいつも私のことを心配しているのは知っている。
実際彼を作る時間もなければその気にもなれないくらいに毎日は忙しい。
それでも、たしかにたまにはトキメクのもいいかもしれないと思えた。
「わかったわかった。まずはやってみるよ」
「そう!その意気よ」
とりあえず友人のイチオシ、黒髪の隠しキャラは最後に攻略するか…。
そう思って私はまずは王太子の攻略をすることに決めた。
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