悪役令嬢は王家の秘密を知る
「エレナがライアン殿下の婚約者に選ばれてから、王家よりウェルズ家の当主である父上と後継者である私にある話があった」
急に過去の話を始めた兄に私は戸惑う。
「国王陛下には正妃である王妃様とは別に側妃様がいたことはお前も知っているだろう?」
たしかに、国王にはかつて側妃がいた。
その側妃はもう随分前に亡くなったはずだ。
「元々は側妃様の方が国王陛下の婚約者で正妃候補だった。お二人は政略的な婚約ではあったが仲は良好で、お互いを思いあっている理想的な関係だったと聞いている」
それは知らなかった。
もう少し上の世代なら知っている話かもしれないけど。
「ところがあと少しでご成婚というタイミングで側妃様の御父上が暴漢に襲われて亡くなってしまった」
側妃はたしか侯爵家の出のはず。
その当主が亡くなるというのは大事だけど…たしか嫡男がいたよね?
「跡を取るご嫡男はまだ成人前で、侯爵家は一気に後ろ盾としての力を無くした。それにより当時の婚約者である側妃様は婚約者から降ろされ、代わりに今の正妃様が新たな婚約者に、その後正妃になった」
ええ…。
なかなかの大事件じゃないの。
…タイミング的にいろいろ考えちゃうよね。
当主を襲ったのがただの暴漢だったのかを。
きな臭いと感じるのは私だけではないはずだ。
「でもその話は公になっていませんよね?」
「そうだ。詳しいことは伏せられたままで、ただ婚約者が変わったことだけが周知された」
それは誰に対する配慮だったんだろう。
元婚約者の身の安全のためだったのか、それとも新たに王妃となった者のためだったのか。
「それでも国王陛下は元の婚約者、つまり側妃様を大事にされて離宮に住まわせていたわけだが…」
そう。
国王陛下は現王妃と成婚後に元の婚約者であった侯爵家の令嬢を側妃として迎え入れている。
側妃はほとんど公の場に出てくることもなく社交もしなかったから、本人を知る人はあまりいないと言われているけど。
「そしてここからが本題だ」
兄が声を潜めた。
「これは公にされていないことだから、エレナも決して他の者には漏らさないように」
念押しをした後に告げられた言葉に、私は息を呑む。
「王子殿下…ですか?」
「そうだ。国王陛下と側妃様の間には秘匿された王子殿下がいる」
「それは…王妃様とライアン殿下は知っていらっしゃるのかしら?」
「王妃様はご存じだがライアン殿下は知らされていないだろう」
しかもその王子はライアンよりも年上ということだから、順番としては第一王子になる。
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