悪役令嬢は未来を懸念する
「ところで、ライアン殿下との仲はどうなっているんだ?」
今までついぞ妹の婚約者に興味のなかった兄の言葉に、私はその意図を測りかねた。
「といいますと?」
「教員にもライアン殿下とエマ嬢の話が聞こえてきているということだ」
ああなるほど。
まぁ、あれだけ一緒に行動していれば多くの人の目に触れるわけだし、さもありなん。
「どう、と言われましても。今のところ婚約者を降ろされた訳ではありませんし、変わらず月に一度のお茶会も続けておりますわ」
「そういう表面的なことはいいんだ。そうだな、言葉を変えよう。これからどうするつもりだ?」
いくぶん真面目に問いかける兄にどこまで答えようか悩む。
今の状況であれば兄は攻略対象からも外れているだろうし、協力を求めれば応えてくれそうな気がした。
「そうですわね。正直な気持ちを言えば、ライアン殿下の婚約者は降りたいと思っておりますわ。今のまま結婚しても幸せな未来など見えませんもの」
そこまで言って、少し間を置いてから続ける。
「ただ、この婚約が政略的なものだというのは理解しておりますし、公爵家に生まれた者の義務というのはわかっております」
「そうか…」
兄はそう呟くと腕組みをして椅子にもたれ、何事か考えるように上を見上げた。
「まさか私が婚約者を降りてエマ様が代わるわけにもいきませんし…」
公爵令嬢との婚約を破棄して代わりに男爵令嬢と婚約を結び直すことなど不可能だ。
そもそも王家に嫁げる爵位は基本的に公爵家か侯爵家、家の状況や王家にとっての利点がある場合に伯爵家の令嬢までが候補に入ることができる。
「それこそ、国王陛下に他にご子息がいらっしゃればライアン様が王太子を降りられる可能性もあったのかもしれませんが」
うっかり誰かに聞かれたら不敬罪と言われそうだ。
でも本当にそう思うのよねー。
だって、どう見てもライアンに王太子の座は重いもの。
ライアンがいずれ国王になるのかと思うとこれから先の国の未来が心配だ。
国王が愚かだとその余波を一番受けるのは平民だから。
たとえ今の王がどれだけ堅実に国を運営していったとしても、ライアンに代わったら数年で不安定になるのが目に見えている。
周りに優秀な人材を置いても最終決定をするのは国王だもんね。
国王が否と言えばどんなに良い政策でも破棄されてしまうし、逆にどんなに愚策でも通ってしまう可能性がある。
ましてやライアンを傀儡にして利用しようとする貴族がいたら、それは案外簡単にできてしまう気がした。
そんなライアンの素養も見越してエレナが婚約者として選ばれたのであり、そのせいでより厳しい王太子妃教育になったのだろう。
考えてみたらライアンの尻拭いのためにエレナは辛い思いをしていたのよ。
それなのにとうの本人があれでは…腹が立つわよね。
そんなことをつらつら思いながら言った私の言葉に、もたれていた椅子から急に体を起こした兄が食いついた。
「そうだ!その方法があった!」
え?
どんな方法があるのよ。
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