悪役令嬢は探りを入れる
すっかり忘れていたけれど、月に一回の婚約者としてのお茶会は続いていた。
芸術祭が終わってから学校でもあまり一緒にいることがないせいでライアンと長く話すこと自体久しぶりな気がする。
「最近はどうだ?」
「毎日同じクラスで過ごしているのですから、おわかりなのでは?」
「顔は見ているがあまり話していないだろう?」
なんと。
ライアンにその自覚はあったのね。
てっきりエマと過ごすのに忙しくて私のことなんて考えていないと思っていたのだけど。
「そうですわね。特に変わったことはないですけれど…ああ、専属護衛が増えましたわ」
そう言って、私は背後に控えたレオを紹介した。
特別意識したわけではないけれど、何となく王城に行く時はレオを、王都や街に行くときはダグラスを伴うことが多くなっている。
馴染むから、かなぁ。
金髪碧眼のレオは近衛騎士にいても違和感がない。
つまり城内を歩いていても悪目立ちしないのだ。
「ほう。護衛が増えたのか。何か問題でもあったのか?」
「いいえ。ただ、元々専属護衛が一人だけだったのでそれでは少ないのではという話になりましたの」
「たしかに、公爵令嬢としては少ないな」
あなたの婚約者としても少ないでしょ。
今までそれで済んでしまっていたことを思うと、エレナは親からだけでなく王城でも大事にされていなかったのかもしれない。
たとえダグラスの腕が立つとしても普通二、三人護衛がいてもいいくらいなんだから。
まぁ、前世で庶民の私はその違和感に今までまったく気づいていなかったけどね。
「そういえば、ライアン様とエマ様が常に仲良く一緒に行動していると多くの方が親切にも私に教えてくださるのですけれど、どういうことかお伺いしても?」
そう。
あの芸術祭以降ライアンとエマは基本的にいつも一緒にいる。
ゲーム内では取り巻きだったオーウェンとベイリーは今では別行動だ。
だからこそライアンがエマと二人でいることが目立ってしまっているのだが。
そしてどこにでもそういったスキャンダルの匂いを嗅ぎつけていろいろ言いたい輩はいるもので、わざわざ私のところまで来てはピーチクパーチクさえずってくれる。
もちろん、嫉妬なんてまったくこれっぽっちもしない。
でも今の二人の関係がどれくらいかは今後の対策を考える上で必要になるから、私はあえてここで問いかけた。
「いや…それは…」
ライアンは困ったことを聞かれたとでもいうように吃ると視線をウロウロと彷徨わせる。
ほほう。
一応エレナに対して申し訳ない気持ちはあるんだ。
浮気してる自覚があるのに止めないのと自覚さえないのと、どちらがより罪深いのかしらね?
「芸術祭が終わってから、エマ嬢は周りのご令嬢に嫌がらせをされているらしい。その嫌がらせに本人もだいぶ参っているようだし、放っておけないだろう?」
いや、それ自業自得でしょ。
しかもそれくらいで参る性格とは思えないし。
「ライアン様は今のご自身の行動が正しい行動だと思ってらっしゃるということですのね?」
「それは…そうだ」
「わかりましたわ」
とりあえず、二人の仲がゲームのライアンルートの通りに深まっていることはわかった。
それにライアンの考えもね。
王太子が婚約者でもない特定の令嬢に対して特別扱いしている状況を『正しい』なんてよく言えるわー。
しかも自分の婚約者に向かって。
王太子という立場は重い。
他の貴族令息と違って間違うことが許されないのだと、いつになったら気づくのかしらね?
ま、私はこれで心置きなく断罪し返すことができるんだけど。
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