悪役令嬢は新たな護衛を雇う
レオの勤務初日、私は自分の部屋の応接間でレオと対面していた。
椅子に座った私の正面にレオが立ち、その隣にダグラスが立っている。
新しい専属護衛のレオは大型犬のイメージだ。
大きめの体躯に陽気そうな笑顔、人懐っこくて愛想もいい。
見た目も含めて、近衛騎士にいてもおかしくないくらいのスペックだった。
護衛としての実力はわからないけれど、服の上からでも鍛えているのがわかる。
それにダグラスの反応をみる限り無能とも思えなかった。
レオの初出勤日である今日、本来ならダグラスは休んでいいところを出てきている。
なんでも、新しい護衛とはこれから同僚になるわけだから顔を合わせておく必要がある、とか。
ついでに実力のなさそうなやつだったら追い出すとも言っていただろうか。
いや、追い出すことができるのは雇用者である父親だけなんだけど。
そう思いつつ、たしかにダグラスの言うことにも一理あったので好きにさせていた。
そしてそのダグラスが何も言わないと言うことは、レオは合格だということだ。
ゴールデンレトリバーと黒猫…。
いや、ダグラスは猫なんて可愛い存在じゃないから黒豹?
つくづく対照的な二人ね。
頭の中で二人を勝手に動物に例えて納得する私にダグラスの視線が刺さる。
いいじゃないのよー。
頭の中くらい自由にさせて。
っていうか、どうして変なことを考えているってわかったんだろう?
「先日一度顔を合わせていますが、私がエレナ・ウェルズですわ。あなたを雇ったのはお父様ですけれど、これからは私の指示に従ってもらいます」
「レオと申します。お嬢様にお仕えすることができ、光栄です」
そう言って、レオは胸に手を当てると綺麗なお辞儀をした。
うん、やっぱりね。
レオはきちんとした教育を受けている。
レオが持参したであろう紹介状を私は見せてもらえなかったから、彼が以前どこの家に雇われていたかとか、なぜそこを辞めて家にきたのかがわからない。
「先日の面接の日には聞けなかったけれど、あなたはなぜウェルズ家の専属護衛を希望したのかしら?」
「給金が良かったからです」
「…それだけ?」
「一番重要だと思いますが?」
公爵家の護衛は確かに給料は良い。
しかし専属護衛というのはたいてい幼少期につけられる。
その後信頼関係を築きながら問題や事情がない限りは同じ者が続けることが多いことを考えれば、今回の求人は異例ともいえた。
つまり、何かトラブルがあったり護衛がいつかない事情があるのではないかと疑われても仕方ないということだ。
その上高給となれば尚のこと怪しいと思うのが普通だけど。
でもでも、私は別に護衛を困らせないわよー!
…たぶん。
「わかりましたわ。差し障りがなければ伺いたいのだけれど、前はどちらで雇われていたのかしら?そこを辞めた理由は?」
「提出した推薦書の方に記載しておりますが、ご覧になっていらっしゃらないのでしょうか?」
「そうね。お父様が見せてくれなかったものですから」
私の返答にレオがしばし沈黙する。
「ウェルズ公がお嬢様にお伝えにならなかったのであれば、私から申し上げるわけにはいきません」
ぬぅ。
たしかに彼にとって雇用主はエレナの父親。
言ってることは間違っていない。
いないけどー!
普通はそれくらい教えてもいいのでは?
納得はいかないもののレオに言っても仕方ないことは私もわかっている。
わかっているけど、秘密の多い者を信頼するのって難しくない?
…というか、今この場にいるのって秘密を持っている者ばかりね。
転生者であることを隠している私と、怪しげな行動を取るダグラス、過去のことを教えてくれないレオ。
ああ…。
前途多難だわ。
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