悪役令嬢は混乱する
リックとの契約も終わり、さてそろそろ帰ろうかと思ったところでダグラスがまだ戻ってきていないことに気づいた。
あれからけっこう時間経ってるよね?
さすがにダグラスがいないとここから帰るのは難しい。
一人歩きするなとも言われているし、どうしたものか。
デュランのところでミラをさらに愛でるのもいいかと思ったけれど、そういえばリックのカフェでは一度も飲食したことがないと気づく。
そうだ、せっかくだからダグラスが帰ってくるまで下で何か食べようか。
お店の客は場所柄平民しかいないし、裏通りにあるから客層は若干悪い。
私が客として行くのは危ないといえば危ないのだが、リックが店長を任されていることもあって店内の治安自体は悪くなかった。
多少の好奇心も手伝って、私はローブのフードを目深にかぶると顔も髪の毛も見えないようにして階下に降りることにする。
「リックの店に行くのか?」
「ええ。せっかくなので寄ってみようかと思いまして」
デュランの問いかけに答えると、私は情報ギルドのドアを開けた。
そっとドアを閉め廊下の向こうにある階段に向かおうと顔を上げる。
あれ?
廊下の向こう、階段に続く場所にダグラスがいた。
あんなところで何をしてるの?
そう思いながらも、戻って来たのなら今日はカフェに寄らずに家へ帰ろうかなと思ったところでダグラスが一人ではないことに気づく。
ダグラスの影にいる人は、私の立ち位置がずれたことで初めてその姿が見えた。
え?
マチルダ?
ダグラスの影に見えたのはマチルダだった。
あの二人に個人的なつき合いなんてないと思っていたけれど。
そこでふと思い出す。
初めてデュランにマチルダを紹介してもらった時、二人の反応がおかしかったことを。
初対面ではない感じだったにもかかわらず二人は初めて会ったふりをしていた。
どういうこと?
二人は以前からの知り合い??
それとも…まさかダグラスがナンパしているとか!?
いやいや、待って、落ち着け私。
さすがにナンパはないでしょ。
考えられるのは、以前からの知り合いとか、元彼女、とか?
元彼女…。
いや、まさかまさかで現彼女ということも…。
大混乱。
何事も勝手な思い込みは良くない。
ここはやはり本人に確認するのが一番なのでは?
そう思ってなんとか心の中の混乱を抑えたところで、ダグラスがこちらに気がついた。
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