ヒロインの策略 Sideエマ
「どういうことよ!」
あたしはそう叫ぶと鍵付きの引き出しから引っ張り出したノートを机に叩きつける。
芸術祭の二日間が終わってあたしのイライラは最高潮だった。
ゲーム中盤の一番大きなイベントであり、共通ルートから個別ルートへと進むための大事なイベント。
その芸術祭であたしはエレナにことごとく恥をかかされた。
一日目の発表会では辞退する予定だったのにバイオリンの演奏をするハメになったし、二日目の夜会ではエレナがするはずだった嫌がらせを逆にあたしがエレナにしたかのような状態になった。
思い返してもはらわたが煮えくり返るわ。
バイオリンの弦を切るまでは問題なかった。
目撃者の女も用意して抜かりないはずだったのに。
どうして?
どうしてあの女はゲームのシナリオ通りに動かないのよ。
エレナがシナリオと違う行動ばかり取るから思った通りに進まないのだ。
どうする?
今のところライアンはまだあたしのそばにいてくれるけど、こんなことが続けばどうなるかわからない。
何か手を打たないと。
ゲームではこのイベントの後どうなるんだったっけ?
そう、たしか、高慢で意地悪なエレナよりも下位貴族出身で優しいエマの方が皇太子妃にふさわしいっていう噂が平民の中で流行るのよ。
エレナのエマへのいじめや嫌がらせを見かけた侍女や下働きたちが平民の間でそういった噂を流していく。
その噂が大きくなって、王家もそれを無視できなくなっていくのだ。
でも今のままだと自然発生的にそんな噂は流れないだろう。
こうなったら何とかして噂を流すしかないわね。
ゲームの中では口伝えで噂が広がっていくけど…。
そうだ。
たしか最近王都では新聞のような物が出回っている。
『王都だより』なんて、かなりベタな名前の物が。
口伝えよりも手っ取り早く広めるならそれを利用するのが一番だろう。
「どこで出しているんだっけ?」
つい最近侍女が買ってきてたはず。
探せばそれはすぐに見つかった。
発行元は王都の中心地にオフィスを構えているらしい。
特ダネがあるって言って持ち込めばいい?
侍女に頼みたいところだけど、それだと噂を広めたのが私だって侍女にバレちゃう。
ここはやっぱり自分で行くしかないか。
あたしはどういう記事を書いてもらうかを考えるとそれを紙に書き出した。
内容はもちろん、ゲームと同じ。
高位貴族が下位貴族を虐げるなんてよくあることだし、平民は自分たちに近い下位貴族に感情移入しがちだ。
本当はどうかなんて平民にはわからないからどうとでもなる。
「よし、これでいいわ」
満足のいく内容を書き上げると、私はその紙を畳んで封筒に入れる。
あとはこれをオフィスに持って行って誌面への掲載を依頼すればいい。
みてなさい、エレナ。
今度こそ悪役令嬢として糾弾してやるんだから。
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