悪役令嬢は説明する
「私とライアン様の婚約は王命です。そこに私の意志は関係ありません。つまり、私はライアン様に特別な好意は抱いていないということです」
私の言葉に、ライアンが想像していなかったことを聞いたという顔をする。
えええ…。
なんでそんな顔をするの?
まさか私があなたのことを好きだと思っていたの!?
なんてプラス思考!
「それでも、国を支える一国民として、ライアン様の婚約者となったからには私はこの身を国のために捧げる覚悟をしております」
エマ、あなたにその覚悟はあるのかしら?
少なくとも私が転生する前のエレナにはその覚悟があった。
まぁ、今となってはもうその気もないけど。
「ですのでライアン様に特別な思いを持たない私にとって、エマ様がどうされようが興味はありませんわ」
そう言い切ってエマの顔を見ると、屈辱なのか怒りなのか、可愛い顔が台無しの表情をしている。
エマはライアンに対して背を向けているので彼には見えていないだろう。
エマ、ライアンには見えなくてもこちら側にいる他の人たちには見えちゃっているけどそれはいいのかしら?
「エマ様には興味ありませんが…ライアン様?」
私はさらに言葉を続けた。
「ライアン様には私という婚約者がおりますので、気軽に他のご令嬢にご自身の色をまとわせるのはマナー違反ですわ。そこはお気をつけいただいた方がよろしいかと思います」
「いや、私もそれはわかっている。今回はエマ嬢がドレスやアクセサリーが用意できないというので、級友として予算の援助とドレスショップの紹介をしたにすぎない」
つまり、エマは舞踏会の準備もできないほど家が貧しく、そして王太子の好意に対して非常識な依頼をドレスショップにしたということかしら?
それをここでバラしてしまうなんて、愚鈍な王太子ね。
たとえそれが本当のことだったとしても、公衆の面前で言ってしまうのはエマを辱める行為に他ならない。
そしてエマをエスコートしてこの場に現れたことの言い訳にはならないのよ。
「そうですか。それではライアン様は級友の中で他に援助を必要とされる方がいらっしゃった場合には同じようにするのですか?」
「それは…」
答えられないでしょうね。
ライアンは少なからずエマに対して特別な思いがある。
それが好意なのか、それとも自分を持ち上げてくれる相手に対する優越感なのかははっきりしていないのかもしれないけれど。
そしてエマ以外の令嬢はそんな厚顔無恥なお願いはしないから今後も他の令嬢に対して直接援助をする機会はないだろう。
貴族なんてもっとも体面を気にするものなのに。
家の経済状況を公にすることも、他人の婚約者にドレスをねだることも、すべて恥ずべき行為でしかない。
エマはこの社会のことを何もわかっていないし、未だにここがゲームの世界だと思っているから理解しようともしないのだろう。
そこをちゃんとしない限り貴族社会では弾かれるものなのに。
「エマ様も、今後はお気をつけくださいね」
再度ライアンからエマに視線をやると、エマは私に向かって一歩踏み出した。
ああ、今ね。
私はあらかじめ決めておいた合図をマチルダに送る。
背後のダグラスは作戦の段階から賛成していなかったから、彼の周りの空気がグッと低くなったような感じがした。
ダグラス、手を出してはダメよ。
私は作戦の行方を見届けるのだから。
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