悪役令嬢は舞台に上がる
さてさて、みなさま糾弾のお時間です。
私が講堂に入っていくと中は異様な空気に包まれていた。
ああ、もう始まっているのね。
他の生徒たちの視線に導かれるまま講堂の舞台上を見ると、いかにも悲しげな顔をしたエマがライアンに向かって何かを訴えている。
ふむ。
さながら「私のバイオリンが壊されていますわ!犯人はエレナ様です!目撃者もいましてよ。なぜこんなことを」とか言って泣き崩れようとしているという感じかしら?
講堂内にはまだそれほど生徒の数が多いわけではないが、発表会はもうすぐ始まるしほどなくして保護者などの観客の入場も行われる。
近くの生徒たちが私に気づき、誘われるかのように道を開けてくれた。
ええー。
モーセの十戒の海割りみたいになっちゃってる。
舞台の花道のように開けられた道を通って、私は講堂の舞台に上がった。
「いったい何の騒ぎですの?」
私の声が講堂内に響き渡る。
多くの生徒の視線がいっせいに突き刺さった。
おう…。
視線で串刺しにされそうな勢いね。
ダグラスとジェシカ、そしてノアには舞台に上がらずに下で待機してもらうように言ってあるから、現時点でエマたちと対峙しているのは私だけ。
「エレナ様!なぜこんな酷いことをなさったのですか!」
私を見るなりエマが声を張り上げる。
エマ、それはさすがに端折りすぎでは?
ゲームの内容を知らないままここにいたらいったい何のことかさっぱりわからないわよ。
「エマ様、突然訳のわからないことを言われても困りますわ。何があったのか教えていただいても?」
なので、ちゃんとクレームはつけさせてもらうわ。
オーディエンスも説明を求めていると思うしね。
「しらばっくれるつもりですか?」
エマが可愛らしい顔に似合わないキツイ目つきで問い詰めてくる。
エマ、あなた可憐さや可愛さが売りでしょ?
今のままだと般若って言われちゃうわよー。
「エレナ嬢。発表会で演奏予定のエマ嬢のバイオリンの弦が切られていた。心当たりはあるか?」
エマを背後にかばうようにライアンが進み出てくる。
へえ。
ゲームに比べると今までのライアンはそこまでエレナに拒否感や嫌悪感を持っている感じはなかったけれど、やっぱりここではエマをかばうのね。
エマ、背後に隠れているからってあなたの顔が見えないわけではないのよ。
ざまぁみろ感が顔に出ちゃってるわ。
共感を得られないヒロインってヒロイン失格じゃない?
「まったくありませんわね。私は今ここに来たばかりですわよ?」
「嘘よ!あなたが楽器を集めた音楽室にいたのを見たって人がいるんだから!」
私の言葉に被せるようにエマが言う。
あなたがそこで出しゃばっちゃうとライアンが格好良くエマをかばうシーンが台無しになるのでは?
ゲームをなぞるのであればそこら辺は気をつけて欲しいわよね。
「言いがかりですわ」
お話にならない、とでも言うように言い切った。
「エマ嬢はバイオリンの弦を切ったのはエレナ嬢だと言っている。実際にエレナ嬢が音楽室にいたと証言した令嬢もいるし、本当のことを言って欲しい」
ライアン、私の意見も聞きたいという風に言ってるけれど、ほとんど私が犯人って断定してるじゃない。
トラブルを解決するには双方の意見を聞いて判断するのが大切なのに。
「ライアン様のおっしゃる通りですわエレナ様。目撃者もいることですし、言い逃れはできませんわよ!」
「そう。この公爵令嬢であるエレナ・ウェルズに対して、そこまでおっしゃるのね。では、その証言とやらを私の前でもう一度言っていただけるかしら?」
うわー!
私悪役令嬢っぽくない?
公爵令嬢の…なんて、地位を名乗るのっていかにもって感じよね。
「絶対にあなたの化けの皮を剥がしてやるんだから!」
化けの皮が剥がれるのはあなたよ、エマ。
ていうか、こんなことを言うヒロイン嫌だわ。
ゲームのエマってこんな性格だったかしら?
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