悪役令嬢は確認する
「そういえば、マチルダさんは予定通り音楽室に行けたかしら?」
私はジェシカに確認する。
エマの計画では他クラスの令嬢に私を目撃させそれを糾弾の場で証言させるはずなので、マチルダに私に成り代わってもらい、予定の時間に音楽室へ行くようにお願いしていたのだ。
「問題ないです。令嬢に目撃されたのも確認済みです」
そう。
それならエマは尚のこと自分の計画通りに事が運んでいると思うだろう。
「ありがとう。助かるわ」
お礼の言葉に、なぜかジェシカが一瞬驚きの表情を浮かべる。
あれ?
何か変なことを言ったかしら?
「どうかしまして?」
「いえ、仕事が仕事だからか、あまりお礼を言われることがありませんので…」
そうなの?
まぁたしかに金銭の発生する関係ではあるし、やってもらうことの対価は支払っているのだからお礼は必要ないと考える人もいると思うけど。
特に貴族はそう考える人が多いだろう。
それでも、たとえそこに利害関係があったとしてもやっぱりお礼は言った方がいいと思うのよね。
何よりも、『ありがとう』の言葉は人を幸せにすると信じたい。
「私が助かっているのはたしかですし、お礼くらい言いますわよ」
「そうなんですね」
どことなく嬉しそうにジェシカが答えた。
「さて。そろそろ時間かしら?」
時計を確認すると、ちょうど楽器が講堂に搬入された頃合いだ。
ゲーム内では悪役令嬢であるエレナにエマがいじめられる場面。
そのシナリオ通りに進むと思っているエマは、この後どういった展開が待っているかをまだ知らない。




