悪役令嬢はアーティファクトをご所望です
その日私は久しぶりにデュランのところに顔を出していた。
目的はとある物を手に入れたかったからだ。
「おう、エレナ嬢久しぶりだな。学園はどうだ?」
デュランが近所のおじさんか親戚のおじさんのようなことを言う。
「学園生活はそれなりに楽しんでいますわ。今日はギルドへの依頼があって来ましたの」
「依頼?」
デュランがいぶかしむのも無理はない。
公爵令嬢であるエレナならわざわざ情報ギルドまで依頼に来なくてもたいていの物なら手に入るし、情報であっても公爵家お抱えの諜報員がいるからだ。
しかしそれはあくまで公爵令嬢として問題ないものであれば、だ。
当然依頼した内容は両親の耳に入るし、人を多く使えば使うほど秘密は秘密ではなくなっていく。
私は今後のために欲しいものがあった。
「ちゃんと報酬は払いますわよ」
「いや、そこを心配しているわけじゃないんだが…というか、お嬢ちゃんから報酬をもらうのもな」
「いいえ、ダメですわ。労働には正当な対価が必要。安売りは厳禁ですわ」
なんといっても、私の欲しいものはかなり希少な物だし値段も相当張るはずだ。
なんなら簡単には見つからないだろう。
「アーティファクトの情報を求めていますの」
「アーティファクト?」
デュランの眉間に皺が寄る。
あら。
せっかくの美形が台無しだわ。
「ええ。周囲の映像と音声を記録できるアーティファクトが欲しいのです」
簡単に言ってしまえばビデオカメラのことだ。
今後おそらくエマはいろいろな形でエレナを陥れようとするだろう。
そうなった時に周りの証言だけでエレナの潔白を証明するのは難しい。
もしかすると証言を撤回する人が出てくる可能性もある。
他の方法としては王太子の婚約者の立場を利用して王家の諜報員である影をつけてもらうことだが、これはこれで弊害があった。
例えば今回みたいにデュランのところへ来ることが困難になるし、エマに対抗するために何か企もうものならそれがすぐに王家に知られてしまう。
ライアンに私の計画が漏れればエマにも伝わるだろう。
それでは意味がない。
「周囲の映像と音声を記録って、そんなアーティファクトなんてあるのか?」
「ええ、ありますわ。我が家の文献にも載っていましたし」
まぁ、正しくはゲーム内に出てきたんだけど。
ちなみにその時使っていたのはエマだ。
エレナを糾弾する時の証拠にも使用していたし、この世界にそういった物があるのは間違いなかった。
ただ、あくまでアイテムの一つとして出てきただけだから、エマがそれをどこで手に入れたかがわからない。
用意したのはライアンだろうが、そのことを馬鹿正直に聞くわけにもいかないし。
「お金に糸目はつけませんわ。なるべく早く手に入れたいので情報が入り次第連絡して欲しいのです」
デュランに対して以前交わした契約を盾に命令することはできた。
でも私はそうしなかった。
あくまで対等に。
仕事として依頼した。
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