悪役令嬢は再びピンチに陥る
やっとダグラスが対面の席に座ってくれて、ドコドコと打ち鳴らされていた私の鼓動も落ち着きを取り戻した。
うっかり息が止まるかと思ったわ。
類稀なる美貌って致命傷を与えられるのね。
そんなわけあるか!というツッコミが入りそうなことを考えながら私は胸を撫で下ろした。
すると、そんな私の気の緩んだ隙をついてダグラスがさらなる追求をしてくる。
「お嬢さまはなぜエマ嬢が手を出してくるとわかっていたのですか?」
「え?」
「あのタイミングでわざと転べたということは、エマ嬢がどういう行動を取るのかあらかじめわかっていたということです」
はわわわ。
ダグラスが鋭すぎて困ります。
「ええと、なんとなく?」
そんな答えで納得するわけないだろうと思いつつ、何と答えるのがベストなのかパッと思い浮かばなかった。
「なんとなく…ですか」
私の答えになぜかダグラスが考え込む。
えー…。
何を考えているのだろう。
まさか私が転生者だとわかったとか?
いやいや、まさか。
そんな荒唐無稽なことを誰が思いつくのよ。
私だって実際に自分の身に起こっているから信じられるのに。
そう思うと、私が本当は誰なのか、この世界の人には誰にも知られることはないのね。
そうか。
私という存在は心だけとはいえたしかに存在するのに、この世界にはいないものなんだ。
そしてきっとすでに元の世界にも存在しない。
突然気づいてしまった事実につかの間心がシンと冷え込む。
「お嬢さま?」
…は!
思わず思考の海に漂ってしまったわ。
「何かしら?」
いけないいけない。
あえて考えないようにしていたことに向き合ってしまった。
世の中にはどうにもならないことがある。
だからきっと、このあり得ない事態もどうにもならないことなのだ。
そう思わないと自分自身があやふやな存在であることを突きつけられてしまうから。
…乙女ゲームで転生ものとかよく見ていたけど、実際に自分に降りかかってみると単純に考えられるものでもないのよね。
ちょっとだけ。
どちらかというとメンタルが強めの私でも少しだけ落ち込むことを許して欲しい。
必ずすぐに立ち直るから。
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