悪役令嬢はピンチに陥る
ピンチです。
えーっと…なぜこんな状態に?
帰りの馬車の中でなぜか私はダグラスに追い詰められていた。
いやいや、人生初の壁ドンがこれでいいの?
しかも厳密には壁ではないし、正解ではないわよね。
ときめきではない何かを暴かれそうな緊張でドキドキしてるし!
「お嬢さま、私はお嬢さまの護衛なのでわざと怪我をしようとするのは見過ごせないのですが」
ダグラスさん、ちょっと目が怖いです。
「わざと怪我をしようとなんてしてませんわ。痛い思いは嫌ですし」
一応抵抗してみる。
「私の目にはあえて後ろに倒れ込もうとしたように見えましたが?」
わーん。
ダグラスさんがお怒りです。
他のみんなは気づかなかったのに、なぜあれがわざとだったって気づくのよー。
「他の者の目は誤魔化せても私の目は誤魔化せませんよ。基本的にいつでもお嬢さまだけを見ていますので」
…いや、うん。
それが護衛の仕事だものね。
うんうん、うっかりドキッとしたのは気のせいということで。
職務に忠実なのはいいことです。
「仕事熱心なのは良いことだと思いますわ」
「お褒めいただき恐縮です。しかし私の仕事にはお嬢さまの協力が不可欠なのはおわかりですよね?守られる気のない護衛対象を守ることほど難しいものはないのですが」
「もちろん理解していてよ」
「それであの行動ですか?」
「ですから、わざとではないのです」
「へえ?」
キラリと光った瞳が獲物を狙う猛獣みたいよ、ダグラスさん!
近い近い近い!
ダグラスの非常に整った顔と低音で耳に響く声が私を追い詰めていく。
これセクハラだってばー!
いや、セクハラって立場が上の者が下の者に強要するやつだっけ?
この場合私の方が一応立場が上だから当てはまらないの?
もはや思考が迷子です。
「…ごめんなさい」
「…わかればよろしい。これからはあんな無茶をしないように」
ダグラスがこれだけ言うのは、私が怪我でもしようものならダグラスがその責任を問われるからだろうか?
「もし怪我をしたとしてもそれは私の不注意ですので、お父様にはあなたの責任ではないことをちゃんと伝えますわよ?」
「…そういう問題ではありません」
…そういう問題ではないの?
じゃあどういう問題なのか。
聞きたいところだが、聞いてもダグラスは答えてくれないような気がした。
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