悪役令嬢はつき添う
そうこうしているうちに武術大会当日である。
私は約束通りクレアに刺繍を教え、それを機にとても仲良くなることができた。
クレアの不器用さには悩まされたけれど、あれだけ頑張るということはクレアのオーウェンへの想いはそれだけ強いということだろう。
そしてなんと!
クレアの紹介でお友だちが増えましたー!
わあい。
クレアと同じくクラスメイトのソフィ・オルティス。
オルティス伯爵の娘さんであり、あのベイリー・クラークの婚約者だ。
そう。
私が友人になったのは奇しくも脳筋オーウェンの婚約者クレアとメガネのベイリーの婚約者ソフィ。
3人とも攻略対象の婚約者というなかなか今後が心配なメンバーだ。
でもだからこそ、私はエマの思い通りにはさせないと気持ちを新たに気合を入れた。
「クレア様、オーウェン様にハンカチをお渡しするのでしょう?」
開会式が始まる前には渡した方がいいだろうと思って声をかけると、クレアが顔を赤らめながらモジモジしている。
おおう。
美少女の赤面顔を拝んでしまったわ。
気が強めな美少女にこんな顔をされてはドキドキしてしまうじゃないの!
なぜか私まで若干顔を赤らめていると、今日は屋外の大会の応援ということもあり厳密には授業時間ではないため、護衛として側にいたダグラスの視線が後頭部に突き刺さった。
わかっているわよ。
変なことは言いません。
「一緒に行きましょうか?」
隣にいたソフィがクレアに声をかける。
ソフィは栗色の髪の毛にサンフラワー色の瞳の小柄な少女だ。
柔らかな色合いが優しげな彼女の性格に合っている。
「ソフィ様もベイリー様に渡しに行くのよね?」
「あ。私は今朝もう渡してしまったの」
クレアの言葉に、ソフィがあっさりと答える。
ああー…そういえば、ソフィは今朝ベイリーと一緒に登校していたわ。
ハンカチを渡すために約束でもしていたのかしら?
「ええ!?そうなんですの?では、エレナ様は?」
私ね。
私は残念ながらまだ持ってるのよね。
ライアンにあげる予定のハンカチを。
でもなぁ。
ライアンにあげるくらいならダグラスにあげたいくらいよ。
刺繍は得意だし好きだけど、一応は婚約者である相手に公衆の面前で渡すからには手を抜くことができず、今回のハンカチはそれなりに力作なのだ。
ライアンにあげるなんて本当にもったいない。
それならボーナスでダグラスに渡した方がよほどマシな気がするわ。
まぁ、ダグラスにしてみればハンカチをもらうよりも現金をもらった方が嬉しいのだろうけど。
「私はまだライアン様にお渡ししていませんわ。きっとライアン様とオーウェン様は一緒にいらっしゃると思いますし、今から渡しに行きますか?」
「ええ。ぜひ」
気分的にはクレアのつき添いで、私はライアンたち大会参加者の控え室に向かうことになった。
そこでまさかの事態が起こっているなんて、もちろんこの時は知る由もない。
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