悪役令嬢は唖然とする
初めてのお友だちを得てウキウキの私はすっかり忘れていた。
たとえ学園へ入学したとしても、月に一度の婚約者としての面会が無くなったわけではないことを。
えー。
毎日クラスで顔を合わせているんだし、十分じゃない?
正直面倒でしかないのよ。
しかしもちろんそんなことは言えない。
入学してから半月後の週末に私は内心嫌々ながらも王城に来ていた。
そもそも、学園へ入学してからは勉強が本分ということで公務は減らしてもらっている。
そのため今までよりも王城へ通う頻度は減っていた。
元々王城に良いイメージが無い身としてはあまり率先して来たい場所ではないのだが。
相変わらず、ライアンとの面会は温室にセッティングされている。
果たしてこれは誰の趣味なのか。
私自身はもちろん花々を眺めることは好きだが、できればそれは気心の知れた相手や好きな人としたいものだ。
「そういえば、エレナ嬢はクラスメイトのエマ嬢と親しくはないのか?」
突然ライアンの口からその名前が出て、当然私は警戒した。
なんだなんだ。
エマの名前がここで出るの?
まだゲームの時間は始まったばかりなのに早くない?
「いえ。あまりお話しする機会もありませんので、特別親しくはありませんわ」
とりあえず無難な返答をしてみる。
「そうか。彼女は平民として育ったようだが、男爵家の娘であることがわかったため引き取られてこの学園へ入学することになったようだが…」
ええ、知ってますとも。
「やはり平民と貴族では勝手がだいぶ違うようで苦労しているようなのだ。頑張っていて健気だとは思うが、きっと大変だろう」
まぁ実際的な話、平民として育った者がいきなり貴族としての振る舞いを求められたらそれは大変だと思う。
根本的に考え方も違えば、立ち居振る舞いも違うのだから。
というか、もうそんな個人的なことも話すような仲になってるの?
そして婚約者との面会の時に話す話題として、クラスメイトとはいえ他の女性の話をするのはアウトじゃない?
ライアンのマナーのなってなさに心の中でモヤモヤするものの、表面上は何事もなかったように私は話を聞き続ける。
「とても困っているようだったから…エレナ嬢、いろいろと教えてあげるのはどうだろうか?」
は?
この坊ちゃん正気?
どこの世界に婚約者に別の女性の世話を頼む奴がいるのよ。
仮に私がライアン関係無しにエマと仲良くなったのならそれでもいいと思う。
でもこの関係性でそれを頼むのはデリカシーがなさすぎでしょう?
もう一つ言うと、王太子という立場上できる限りクラスメイトには平等に接するべきだと思う。
いや、クラスメイトに限らず学園の生徒全員に対してだろうか。
貴族の中には子どもが同じ学園生であることをきっかけに王太子に取り入ろうとする者もいるわけだし、人を見極める力も必要でしょう?
私の心の中など知る由もないライアンはいかにも良い思いつきだとでもいうような表情だ。
「ライアン様のお考えもよくわかりますが、エマ様にも仲の良いお友だちがいらっしゃるでしょうし、お友だちにいろいろと教えていただいた方がよろしいと思いますわ」
「そうだろうか?私が知る限り、エレナ嬢以上にマナーなどに詳しいご令嬢はいないと思うのだが」
そう。
そこはちゃんと評価しているのね。
「お褒めいただき恐縮ですわ。それでも、エマ様もまだあまり親しくない私に教わるよりお友達の方が気持ち的に楽だと思いますの」
「わかった。エレナ嬢がそこまで言うのならそうなのだろう。女性同士のことは私にはわからないしな」
そう思うなら下手に首を突っ込まない方がいいのよ。
変な気を使うと双方に迷惑だってなぜわからないのかしら。
そして、エマの攻略スピードに私は少しの不安を感じた。
ライアンルートの場合、今の時点ではまだそこまで親しくなかったはず。
エマは一体誰を攻略しようとしているのだろう。
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