悪役令嬢は驚く
「まだちゃんとご挨拶できておりませんでしたわね。私エレナ・ウェルズと申します。クレア様とは同じクラスですからこれからよろしくお願いしますわ」
クレアがどういった思惑で声をかけてきたかはわからないが、ひとまず挨拶はしておくべきだろう。
「もちろんエレナ様のことは存じ上げてますわ。…その、実は王都の目抜通りにある刺繍店に飾ってあるエレナ様の作品を拝見したことがあって…」
おおっと。
ここで思ってもみないところの話題が出たわ。
実はエレナは刺繍がとても上手だ。
一針一針刺していると無心になれることもあり、心が穏やかでない時や頭の中を整理したい時などにひたすら刺していた。
話題に出た刺繍店はエレナ御用達の店で、刺繍に関する物は全てその店で購入している。
その関係で店長とはそれなりに交流があり、以前請われて作品をプレゼントしたことがあった。
作品を店内に飾っているとは聞いていたが、まさかここでその話題が出るとは思わなかったわ。
「あの…今度男子だけが参加する武術大会がありますでしょう?その時に婚約者には刺繍したハンカチを贈るのが恒例なのですが、お恥ずかしい話私刺繍が苦手で…。もしよろしければエレナ様に教えていただきたいのです」
おおう。
美少女が頬を染めながらお願いしてくれているわ。
役得役得…って、そうじゃなくて。
言われて思い出したよ!
そういえば入学してから初めてのイベントとしてあったわ。
たしかヒロインはその時点で一番好感度が高い相手にハンカチを贈るはず。
えええ…。
ということは、私もライアンに刺繍入りハンカチを用意しないといけないの?
めんどくさい。
だがしかし、贈らないわけにもいかないだろう。
一応婚約者なわけだし、ここで波風を立てるのは得策ではない。
私が心の中でそんな葛藤をしているとは露知らず、クレアはじっと私の返事を待っている。
美少女が健気だわ。
ごめんなさい、放置する気はなかったの。
…っていうか、これってお友だちを作るチャンスなのでは!?
そのことに突然気づき、私は俄然やる気になった。
「もちろんいいですわ。私も刺繍をする予定でしたし、一緒にやりましょう」
いかにも自分も用意するつもりだった顔をして、私はにっこり微笑んで答えた。
ライアンのことなんてすっかり忘れてたなんて、言わなければ誰もわからないものね。
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