悪役令嬢は伝授する
さて。
場所はデュランのいる例のカフェ上階のギルド長室である。
「ほお。なるほどな」
一通り新聞や情報誌の概念を説明したところ、デュランの目が輝いていた。
おそらく儲けの匂いを嗅ぎつけたのだろう。
「唯一の懸念事項は紙に情報を刷るための方法ですけど…」
この世界、新聞はなくても本はある。
もちろん高価なものなので利用している者の多くは貴族だが。
しかし平民が通える寺子屋のような場所があるからか、識字率は高かった。
「それに関しては伝手がある」
へえ。
さすが情報ギルド長と言うべきか。
「そうですの。では印刷に関してはお任せしますわ」
返事をしながら、私はもっぱらミラの髪の毛を結うことに集中している。
「わかった。あー、ところでそれは何をしているんだ?」
「見てわからないかしら?ミラを可愛くしているところですわ」
物珍しさからかミラは大人しく椅子に座っている。
ミラの髪の毛は背中の真ん中につくくらいの長さだ。
私は上から編み込んでいって最後は三つ編みにしようとしているところだった。
前世では自分自身にお金をかけることもできなかったし、やってあげる相手もいなかったからしたことがなかったけれど。
いやこれ楽しいわ。
今度ミラをドレスショップに連れて行こうかしら。
着飾らせたら楽しそう。
リアル着せ替えごっことか?
「なんか変なこと考えていないか?」
「まさか。濡れ衣ですわよ」
もちろん考えている。
でもいいじゃない。
妄想万歳。
いくらデュランでも、私の癒しを取り上げるのは許さないわ。
頭の中は自由なのだから。
「最初に情報誌を行き渡らせるのは平民の間の方がいいかもしれませんわ」
「貴族じゃなくてか?」
「ええ。貴族間での話題なんて平民は気にしないでしょう?その点平民の間で話題になったものでそれが利用価値が高ければ貴族は無視できませんわ」
「あとは…そうですわね。情報誌に専用の名前をつけた方がいいかもしれません」
新聞紙という言葉はこちらの世界には無い。
万が一私以外にも転生者がいたらと考えると、安易に同じ名前にはしない方がいいように思えた。
ましてやヒロインが転生者だったら…という可能性もあるのだから。
「それはそうだな。じゃあエレナ嬢がつけるか?」
「いえ。それはお任せしますわ」
残念ながら私に名付けのセンスは無い。
そして下手に私がつけると前世の影響が出そうだ。
それにしても、本当にここは気楽だわぁ。
事件以来久しぶりに再会したデュラン兄妹は最初こそ多少かしこまっていたけれど、私からお願いして以前のように接してもらうようにしていた。
だいたい、この界隈でデュランにかしこまった対応をされたら一体何者かと思われてしまうじゃない。
黒幕は秘密でいてこそ、よ。
だから私はこれからもデュランを隠れ蓑に使わせてもらうつもりだ。
もちろん、デュランには内緒。
だって承諾は得ていないもの。
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