悪役令嬢は王太子に会う
王太子とは庭園にあるガゼボで面会することになっていた。
グランド国王の第一子である王太子のライアンはプラチナブロンド色の髪の毛にロイヤルブルー色の瞳を持つ。
容姿だけは極上の男だ。
容姿だけは。
見かけ倒しもいいところよね。
生き様が見た目や雰囲気に出るようになるのは30代からだったかしら?
光り輝くような容姿も、重ねてきた人生の重さには敵わなくなるということだろう。
でもライアンはまだ14歳。
その容色は美しく、実態を知らないご令嬢には騒がれている。
しかも彼は自分をよく見せる方法には長けているのだ。
エレナは従順であるべきと教えられていたからライアンに逆らったことは無いし、王太子妃教育で感情を表に出すべきではないと厳しく言われているため、彼にとっては面白みも可愛げもない婚約者なのだろう。
誰のせいでそうなったと思っているのよ。
そもそも、子どもらしい遊びも心のままに行動することも、小さな頃から許されなかったエレナはそれだけでも可哀想だと思うんだけど。
そんな環境でも健気に頑張ってきたエレナにこの現状は厳しすぎるんじゃない?
両親は自分達の利益しか考えておらず、唯一の兄弟である兄はヒロインに懸想するロリコン、そして婚約者はもはや獅子身中の虫のようなもの。
四面楚歌だわー。
「久しぶりだな、エレナ嬢」
「ライアン王太子殿下にご挨拶申し上げます」
心の中で嘆いていることなどおくびにも出さず、私は優雅に挨拶をする。
ライアンは頷くとガーデン用の椅子に腰を下ろした。
するとすぐに侍女が王室御用達の紅茶とお菓子をサーブする。
さすが王室の侍女。
仕事が早くて的確だわ。
感心しながら見ていると、ライアンが若干不機嫌になった。
自分に注目されないと機嫌が悪くなるなんて幼稚ね。
エレナはライアンのご機嫌が斜めになるとすぐにその場を和ませるべく努力していたが、当然私にそんな気は無い。
たかだかそんなことで悪くなる機嫌など放っておけばいいのだ。
だからすましたまま紅茶を楽しんだ。
もちろん、こちらから話題を振ることもない。
誰もが自分の顔色をうかがってくれるだなんて思わないことよ。
「んんっ。あー、エレナ嬢は学園への入学準備はもう済んだのだろうか?」
さすがに沈黙に耐えかねたのか、珍しくライアンから話しかけてくる。
「そうですわね。ほとんどの準備は済ませましたわ」
今までなら『殿下はいかがですか?』と続けるところをあえて切った。
「そ…そうか…」
会話が続かずにライアンが困惑した様子が伝わってくる。
今まで、どれだけエレナが努力してきたかがわかるわね。
それを当然のこととして享受してきたライアンが腹立たしい。
正直、私はこのまま会話もなく面会の時間が終わっても一向に構わなかった。
話をしなければ気まずいなんて思う可愛さはとうの昔に失っているし。
でもライアンは居心地が悪いだろう。
ましてやエレナが今までは一生懸命に話しかけていたとしたら、その違いに戸惑っているかもしれない。
せいぜい困るといいわ。
エレナは今までそれ以上に困らされていたのだから。
そしてこれからはもっと困らせられるのだろうからね。
あの男爵令嬢とライアン、あなたに。
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