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14:水も滴るなんとやら


「あはは! ごめんごめん、全部冗談だよ~!」



 湖から上がって来たヒメユリが笑顔でそんなことを言うから軽く燃やしてまた湖にぶち込んでやろうと思ったけど、PK判定が怖いので止めておく。



「PKerは名前が赤くなるからそれで判別できるんだよ。ほら、私は真っ白でしょ?」



 ヒメユリの言う通り、彼女の名前は他のプレイヤー同様白で表示されている。こんなヤバいやつセーフ判定にするアリフラの治安大丈夫なのか?



「いや、思いっきり善良なプレイヤーのこと攻撃してたけど何もデメリットとかないのか?」


「殺さない限りはレッドネームにはならないけど、カルマ値は上がっちゃうね~。と言ってもレッドネーム以外は教会にお金払えばいつでも潔白になれるんだけどね!! 資本主義最高!!」



 なるほど、攻撃するだけなら実質セーフか。



「ところでその髪はなんなんだ?」


「あ、これ? これアルユタの種族特性で動かせるんだよ。使うの難しいから意外と人気ないけど結構反則感ある強さなんだよねぇ。あ、触ってみる? 触ってみたい??」



 うようよと目の前に差し出された髪の毛を掴む。

 なんか妙な感覚だ。動物の尻尾みたいなものかと思ってたけど、尻尾のように真ん中に軸があるわけじゃない。正真正銘髪が動いているって感じ。



「へえ、こんな感じになってるのか」


「やーんロダメアちゃんったら触り方大胆」


「《燃えよ(イース)》」


「何してんのお!?」



 慌てて髪に着いた火を消そうとするヒメユリを転ばせて腕をつかむ。



「ルナ、足持って」


「わ、分かった!」


「ちょっ、君ら結構容赦ない――」


「せーのっ」



 タイミングを合わせて湖に放り投げる。

 ルナの方がSTRが高いので、ヒメユリは変な回転をしながら湖に落下した。



「投げ込んでから言うのもあれなんだけど、やってよかったのかな……」


「ルナだって結構攻撃されてたんだしこれくらいやり返して当然だから。それにリアルでもこんな感じだったしな」


「リアルで……なんか新鮮だなぁ。メアちゃんがやんちゃする様子、あんまり想像できないや」


「そうか? まあ、基本寝てるしな……」



 あくまでも過去の話だし、ルナが興味津々な様子でこちらを見てくるけどそこまで話したい内容でもないので適当に流すことにした。



――――――――



 再度湖から上がって来たヒメユリに、さっき聞けなかったことを改めて聞いてみる。



「そういえばさっき聞いてなかったけど、十二星群(アステリズム)ってなんなんだ?」


「あー、それ私にもわからないんだよね~……ってちょっと露骨に『こいつ無能だな』って目線向けるのやめてよ!」


「被害妄想も甚だしい。というか本当に何もわからないのか?」


「表記的にユニークモンスターの中で特定の条件にあてはまるものをまとめたグループみたいなものなんだろうけど、いま発見されてる十二星群アステリズムってバラバラ過ぎて共通点とかないし……まあ名前的に12体いるんじゃね? ってくらいかな。予想の材料が足りな過ぎて考察系プレイヤーもお手上げみたいだよ?」



 考察系プレイヤーに関しても気になるけど、それは今は置いておいて。

 十二星群に関しては他にも発見されているような口ぶりだったので、どんなものが見つかっているのかを聞いてみる。



「大陸中のどこかにランダムで現れて遭遇すると戦闘になる『堕智』と『掻葬』、大規模レイドバトルの形式で出現する『天魔』、人類に友好的でなんか別のユニークと敵対してるっぽい『神狼』……で、ロダメアちゃんたちが遭遇した『魔忌』ね。今のところはそれくらいなんじゃないかなあ」



 ユニークにも色々あるんだな…………あ、敵対って言葉で思い出したけど、一つ言うのを忘れていたことがあった。



「そういえばヴィムファロジカと戦ってる時に猫の鳴き声みたいのが聞こえたんだよな。なんか敵対してるっぽかったんだけど、そういう情報とかないのか?」


「あー、あの『にゃん』って声! あの声がしてからHP減らなくなったんだよね」


「…………二人とも今日始めたんだよね?」


「そうだけど」「うん!」



 私とルナの返答が重なって、ヒメユリは頭を押さえる。



「もはやビギナーズラックってレベルじゃないよそれぇ……ユニークに敵対できる存在って時点で完全にユニークだし、なんなら別の十二星群って可能性も……うん。まあとにかく、発生したクエストはまだ何も分からない状態なんでしょ? どういう条件かは分からないけど、やっぱ強くなる必要はあるよね~」


「確かにその通りだけど……なんか嫌な予感がする。ルナ、今日のところは帰ろう」



 笑顔でなんか言い始めたので危険を察知して逃走を図るも肩を思いっきり掴まれてその場に引き留められてしまう。

 パワー強すぎ。これがレベル差か……。



「というわけで! 君たち二人には私と一緒にユニークモンスター『惨骸ざんがい』と戦ってもらいます!!」



 ほら意味わかんないこと言いだしたぞ。



「ここまでの話聞く限り、私たちじゃレベル的に無理に思えるんだけど。というか今日始めたばかりの初心者誘ってどうするんだよ」


「その辺は心配なし! 『惨骸』はさっき言った広く知れ渡ってるユニークモンスターに含まれてるんだけど、ステータスでゴリ押すのが難しいから未だに撃破されてないんだよね。プレイヤースキルが重要ってやつ。まあもちろんある程度はレベル上げてもらいたいけど、必要なプレイヤースキルはさっき戦ってみたときに二人とも十分持ってるって分かったからさ。これは行くしかないよねえ!」



 なんかもう裏があるんじゃないか感が凄い。正直ルナまで巻き込んでるところが一番怖いんだけど……ただ話を聞く限りユニークモンスターの撃破は圧倒的なアドバンテージを生むと考えて間違いない。それだけのメリットをみすみす見逃すのは、誠に遺憾ではあるけれど私には出来そうもない。



「ちゃんと勝算があるんだったら、私は参加してもいい。ルナは?」


「うーん、私あんまりログインできるかわからないんだけど大丈夫かな……?」


「あ、ルナちゃんは役割的にレベル1でも問題ないからオッケー」


「そんな役割ある!?」



 と、そんな感じで話は進んで行き、何の気まぐれか偶然か、或いは謀略か……とにかく私たちは見知らぬユニークに挑むことになったのだった。




喧嘩するほど仲がいい?

ちなみにヴィムファロジカは正真正銘ロダメアたちが初遭遇です。やったね。

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