表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
99/144

Episode09 「ネットダイヴ、やっぱハンパねぇ!」



 ウェブダイヴしたカートの最初の仕事は、いつだってセキュリティーシステムからとなる。


 そしてなぜか大半の場合は、ドラゴンの姿をしたプログラムが現れる。ここは草原ステージ。


「今回の敵は今までにない大物だな」


 竜型のレベルは大きさと色で判別ができる。


「黒いのもデカイのも初めてだな」


 ガテンのように文明レベルの低い星の、一般回線のセキュリティーなら緑。


 同じくガテンの国家レベルの物なら青色をしているし、大型の獣と大差はない。


 評議会加盟文明の一般回線では黄色、企業サイトで橙色、大企業や政府のラインで赤、評議会の運用システムが深紅。大きさもモビールサイズとなる。


「黒なんて初めてだ。色が濃くなるほどに強くなるんだよな。だったら最初から全力でぶつかろう。様子を見ている暇もないからな」


 大きな体をしながら、黒竜の動きはするどい。全力で突っ込むカートに反応している。


「流石に簡単にはいかないか」


 スピードで負けやしないが、一番相手をしてきた赤竜とは、比較にならないほど素早い。


「くそ、堅いな!」


 鎧のように堅い鱗に刀が通らない。


 カートは火の氣力を練った炎の槍を生み出し、関節部分に捻じ込んだ。


 黒竜が吠える!


「ダメージはあるようだけど、致命傷にはほど遠いな」


 身を隠す場所もなく、カートは動き続ける。


 次に狙うは竜の眉間。他よりも鱗の密集度が低い、刀が奥まで突き刺せそうな部分。しかしその分だけ危険も大きい。


「狙いは悪くないはずだ。けどどうやって技を届かせるか?」


 ネット内は現実世界と時間の進み方が違う。


 ボーラがモニターしてくれているはずだが、カートの動きに追い付けているわけはない。


 だがしかしまさかのタイミングで、外部から黒竜のデータが転送されてきた。


『遅れて悪い。ダイヴナビの調整に手間取った。俺もお前の能力を借りて、マークホープからだが、フォローをしてやる』


 思いがけない援軍に、カートの動きが変わる。


 黒竜の口から放たれる火球を避け、後ろに回り込むと、勢いよく背中に飛び乗り、頭めがけて駆け登っていく。


『貫く場所は赤く光らせてある』


「了解だ」


 脚が太く、胴の丸い、手は短い架空の獣。羽は大きく長い首を持つ黒竜。


「こいつだな。ボーラ、グッジョブだ!」


 マーカーはこのプログラムの数少ない急所、竜の首の根元にあった。


 1人で戦っていたら、いつ見つけられたか、分かったもんじゃない。


「いけ!」


 深く突き刺した刀は竜の急所をつき、跡形もなくプログラムは霧散した。


「ダミープログラムも正常に稼働、メインシステムを掌握する」


『入り口が開いた。フーレが侵入、扉を閉めてくれ』


「了解、ボーラが色々やってくれるから、今回は楽でいいよ」


 正直、最初は研修なんて面倒だと考えていたカートだが、この兄弟とならコスモ・テイカーとして生きていくのもアリかと、頭によぎったあり得ない妄想に苦笑した。


『なんだ、なにか良い事でもあったか?』


 褒められて上機嫌のボーラは、調子に乗ってカートを仏頂面に戻してしまう。


「監視カメラの映像……」


『ああ、いつもは静止画にしてるんだったな。今回は俺の方で入れ替えておいた。このクオリティーならバレるリスクも下がってるはずだ』


 細かい操作ができるわけではない、カートのイズライト。


 欠陥だらけの能力だが、効果はかなり高い。


 今のままでも十分と思われていた、里でも誰も考えなかった事を、ボーラはやってくれた。


『おっ、フーレが武器庫に到着したな。頼むっ!? だぁーーー!!』


「どうし!?」


 何もしていないのに頭に激痛が走る。思いげけない衝撃にカートは膝をついた。


「ボーラ!」


『す、すまん、カート……』


「何かあったのか?」


 頭痛の原因はネット内ではない。カートは直感的に、ボーラかマークホープ号に何かがあったと悟った。


 武器庫のロックを外してネットから出る。


「おい、ボーラ」


『カート、よかった無事だな』


 心配するその声こそが不安になる。


『ネットを抜けてくれてよかった。ダイヴナビの影響で、お前にもダメージが行ったはずだ』


 お前にも? と言う事はやはり。


「何かあったんだな」


『……しまったな。フーレなら絶対気付いてないだろうによ』


 息が荒いとか、苦しそうだとかは感じない。


『おお、心配はいらねぇ。けどちょっとよくない展開だ。マークホープは大破した。ここの連中の仕業だとしたら、俺達の侵入はバレてるってこった。ところで本当にダメージはないんだな?」


「何かあるのか?」


『ダイヴナビで繋がった俺らは、どうやらどっちかに何かあると相手にも伝播するようなんだ』


「なるほどな、さっきの痛みはそう言う事か。なら問題ない。ダメージでもなんでもないからな」


『そうか。ならお前はフーレと合流してくれ、俺は別の船を探す』


 流れはいつも通り、全てはスムーズに進んでいた。


 もちろんマークホープだって、光学ステルスを使っていた。


 それが見つかり破壊されたとなると、作戦は失敗したのだろうか。


 ボーラやフーレの事は心配だが、カートはもう一度ダイヴした。


「セキュリティーはまだ普及されていない。外の様子はどこで見られるんだ?」


 監視モニターのシステムに潜り込み、宇宙空間を確認する。


「警察機構軍がいない。失敗を察知して引き上げた? にしても早すぎる。くそ! 何も分からない。……フーレと合流するか」


 ボーラはなぜか回線を切ってしまっている。それにフーレも武器庫には居らず、小部屋で動きを止めている。


「カメラが設置されてないのか? ……行くしかないか」


 久し振りに諜報員本来の技術で、内部工作行為を実行する。


「フーレ、何があった?」


 通信回線が開いたのは兄の方だった。


『カートか?』


「何かあったんだな。直ぐに行く」


『来るんじゃあねぇ。こいつは……』


 通信は途切れた。もうどちらにも繋がらない。


 二度目のダイヴでシステムを滅茶苦茶にしておいた。通信傍受や妨害はできないはずだ。


「スタンドアローンで作動する、ジャミング装置を使っているのか?」


 しかしおかしな電波は探知していない。


 フーレが来るなと言うなら、本当に行くべきではない。


 カートを疎ましくしていた頃も、そういった裏切りをした事はない。


「ここの図面は手に入れた。……ここから行けば、誰にも見つからないか」


 ボーラが船を用意したとして、どうやって合流するかの問題もあるが、先ずはチームリーダーの今の状況と、作戦の成否を確かめなくてはならない。






 フーレは捕まり、椅子にロープで括り付けられている。


 見張りの数は3人。手配書に見た事がある犯罪者だ。


「大物はいないが、これで全部ではないだろうな」


 通風口から見下ろす室内に、変わった物はない。


 クロークがあり、その中には武器が隠されているはずだが、このエアーダクトにはメンテナンス用の小さな端末がある。


 システムは潰したが、この部屋のロック機能くらいなら、作動させられるはず。


 全てにロックを掛ければ、外からの増援もなくなる。


 念のために通風口の隔壁も閉じた。


「フーレ、お前も一緒に寝ちまいな」


 重力は働いている。カートは飴玉くらいの黒い小さな玉を、5個ほど落とした。


「なんだ、今の音は?」


 犯罪者が音に反応するが、もう遅い。


 黒い玉は床にぶつかった衝撃で粉々になり、中の睡眠薬が拡がった。


「効き目は十分だな。フーレも寝たか」


 2メートル下の床に転がる3人と、椅子に縛られる仲間の脳波は睡眠状態。


 カートは睡眠薬が効力を失う、1分が経過したところで下に降りる。


「フーレ、起きろ」


 布にしみ込んだ気付け薬を鼻と口に押しつけると、軽く呻った後に覚醒、カートの顔を見て大声を上げそうになる。


「静かに」


「……何で来たんだ。俺は来るな。と言っただろ」


「ああ、ボーラの方も船をやられて、別の物を探している。作戦は失敗だ」


「そうじゃあねぇ、今回の件はそもそも……」


 カートは抜刀し振り返った。


 ロックしたはずの扉が開いたからだ。


「ボーラ!」


「よ、よぉ……カートも、兄貴も、無事だ、ったか」


 と言う弟はボロボロになって、今にも気を失いそうだ。


「このガキがそうなのか?」


「はい、間違いありませんよ。偽装空間内で好き勝手やってくれましたからね」


「偽装、空間だって?」


 カートがネットダイヴをし、奪ったと思っていたシステムは、それそのものが罠だった。


 つまりはこの依頼は最初から仕組まれた物だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ