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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode07 「今度はヤローの出番だな!」



 中央銀河評議会に未加盟のその惑星は、現地では違う名で呼ばれているが、登録名をガテンと言う。


 そこでは宇宙開発が始まってまだ、一世紀半しか経っていない、科学水準もまだ未発展に分類される、重力に逆らえずにいる低文明な星。


 住民の大半が、噂話程度でしか異星人を感じる事がなかった。秘密裏に銀河評議会と接触する、ごく一部の機関の高官や科学者以外はだ。


 人が住まう中で最も大きな大陸の、そのまた東にある列島国家には、古来より権力者を陰から支えてきた、秘密の諜報機関が存在する。


 特殊な体術や技を用いる“クサ”と呼ばれるフウマ一族は、人類が自力で宇宙に出るより以前から、仕事を請け負い評議会との接点を持っていた。


 中にはコスモ・テイカーとなり、里を抜けて宇宙に出る者もいた。


「カーティス、参りました」


 カーティス=リンカナムは4歳の頃から、諜報員になるための過酷な訓練を続け、10歳で里の外での実地訓練を受けるようになり、半年もしないうちに単独活動をするようになった。


「入れ!」


 呼び出された所属部隊の詰め所では、部隊長が1人で電算機を操作していた。


「指令書? ……宇宙ですか?」


「そうだ。星を出たお前は能力を使って、拠点の電子機器を抑える特殊工作員として、里を離れて活動してもらう。上層部からの命令だ」


「はっ! 拝命しました」


 いつもは腕に巻いた電子端末に、直接命令が送られてくる。


 こんな風に部隊長が自ら指令書を渡す理由が分からず、カートは顔をしかめる。


「お前は銀河評議会の隠密として、里を出ることになる。まったく、上はいつもそうだ。実力や能力ある若者を道具のように売り払う。俺はお前を預かった時から、こんな日が来ると思っていたよ」


 なるほど直接面会をして、上に知られないように考えを伝える為だったかと、カートは理解した。


「明朝の出発だ。部屋に戻り、ここを出る支度をしろ」


「はっ!」


 カートは詰め所を出て、自室へと向かった。


 一人前と認められた諜報員は、最初に教えられる事が幾つかある。


 これもその一つなのだが、里は評議会から様々な優遇措置を受ける替わりに、フウマの人材を提供している。


 数年前までは、里の工作員としては能力値の低い者でも、宇宙ではかなり重宝されていたので、どんな人材でも受け入れてもらえていた。


 だが数年前、そう言った位の低い者を選定している事実を評議会に知られ、優秀者も選定の枠に入れる配慮を求められるようになった。


 カートの特殊能力、“イズライト”は確かに里よりも、行動の自由度が高い

コスモ・テイカーの方が活躍できるだろう。


 部屋を出て行くカートに、隊長は最後の言葉として送った。


「呼び出しだったんですってね?」


「ヘレンか、何か用か?」


「用なんてないわよ。強いて言えば、顔を見に来た。ってところかしら」


 ヘレーナ=エデルート、年はカートの一つ上。幼い頃からの付き合いの、姉とも言える存在だ。


「ここを出て行っちゃうんだね」


「また覗き見か?」


 ヘレンは諜報員として、里の中央発令所の末端で、電子端末作業員をしている。


 彼女は超一流の電算士、所謂“ハッカー”というヤツだ。


 里の中枢の奥底にまで潜り込み、知らされていない合い言葉も、自力で突破する事が出来る。


 それが彼女の特殊能力。国家機密も隠し通せない能力は、機械を使っても止める事はできない。


 しかも彼女は自ら、厳重注意や罰則を受けても、懲りることなく覗き見を続けてしまう。


 それでもヘレンを任務から外すことはできない。それ程に有能なのだ。


「そんなだから、隔離部署に回されるのだろう」


 電脳空間で全ての作業ができれば、もっと楽になるもののを、無接続端末で、仕事を書面に移した書類で受け取り、終わった情報を紙に印刷して中央に戻している。


「そんなの何の意味もないって、いつになったら分かるのかしらね」


 彼女がその気になれば、どんな小さな端末からでも、中央に接続できてしまうのだから。


「私がカートの情報を、見逃すわけが無いんだから」


 フウマの里に生まれた子供は、物心のつく前に親元から離され、一生家族の名も知ることはない。


 里の者は全てが家族、そう言った考えを植え付けられる。


 ヘレンですら、親の顔も名前も調べられないでいる。そもそも情報が残されていないのだ。


 なので、共に訓練を受けた者達は、それぞれが兄弟愛を抱き、家族の大切さもその中で学び育つ。


「寂しくなるわね。あんなに私の後を追っかけて、甘えていた子がいなくなるのは」


「俺の記憶にない事を、さも事実であるように言われても、実感はないし、感情の向けようもないと、何度言わせるんだ」


「連れないわね」


 カートは感情の表現が上手くない。


 この性格は恐らく、生来の気質なのだ。


「嘘を言っているとは言わんが、お互い幼子では無いんだ。時間が惜しい、他に用がないなら、支度の邪魔になるから出て行ってくれ」


「そう言う意地悪を言うのね。私はこんなに別れを惜しんでいるのに」


「……俺はいつまでも、どこにいてもフウマの“クサ”だ。骨を埋める場所を変える気はない。お前が里を抜けることがないのなら、また会うこともあるだろう」


「……そうね。行ってらっしゃいカート」


「……ああ」


 彼女が出て行くのを目だけで見送り、カートは支度を調えて就寝した。


 翌朝カートは1人で宇宙に出る。11歳になる直前の、ある夜の出来事を越えて。






「カート! てめぇ、また独断専行かぁ!? ああ!」


 カートがコスモ・テイカーになるために預けられたのは、2人組のパルレギラ兄弟。


 兄のフーレマテスは、またも命令を無視したカートに噛み付く。


「兄貴、カートのお陰で、いつも通り楽々システムを乗っ取ってくれて、しかもお尋ね者も取り押さえてくれたんだ。そこまで怒鳴る事もないだろう」


 興奮状態の兄を羽交い締めにする、弟ボーラマテスもこうは言っているが、内心はカートの身勝手な行動に頭を悩ませていた。


「ふぅ~」


 評議会が付けるランキング、Bランクのパルレギラ兄弟は、Bランク超えが受けられる、指導員の資格を持っている。


 後進指導の報告書を提出すれば、ちまちまと仕事をするよりも、より効率よくランクポイントが稼げる。それに目を付けたのだが……。


 預けられたのは難癖だらけの少年。


 最初の模擬戦で、カートにこてんぱんにされたのが良くなかった。


 チームリーダーの言う事を聞かないカートに、兄フーレが苛立つのも分からなくはない。


「カートよ。俺はお前の能力の高さは買っているんだがな、せめて行動前にどうするとか、俺達にも教えてくれねぇか?」


 怒りを収めぬまま出て行ったフーレにも困ったものだが、一番の問題はこのまだ11歳になったばかりの謎の少年だ。


「評議会が時々、特例を認めるガキがいるってのは聞いていたけどよ。お前は規格外にも程があるよ」


 ボーラは思い出していた。最高ランクのテイカーで、自らの娘と預かるガキが特例を受けて、自慢しているなんて話を。


 向こうはこちらと違い、業界では名の売れたベテランではあるが。


「まさかハンパなBランクテイカーの俺達に、そんなのと同じ、いやそれ以上の逸材が廻されてくるなんてな」


 気は短いが、色んな事に頭の回るフーレと、生真面目だが臆病な性格で、どことなく抜けているボーラ。


 手に余る天才を前に、自然と溜め息が洩れてしまう。


「俺が厄介だというなら、事務局に押し返せばいいだろう?」


「それがな、兄貴がお前のその性格を気にしてな、お前のガキっぽい所を引き出してやるって言ってさ。俺もそいつは見てみたいって思ってよ。だkらもう少し付き合うことにした……」


「ボーラ! てめぇ!? 下らない事を言ってんじゃあねぇぞ!!」


「よう、兄貴」


 カートが「押し返せばいい」と言った辺りで戻ってきたフーレは、出て行った時よりも真っ赤な顔で弟に詰め寄った。


「物好きだな」


 チームリーダーの動揺を見た少年は苦笑を浮かべた。


「お、お、お、お前はそういう所が可愛くねぇ~、って言ってんだよ!」


 やかましい連中だが、テイカーとしての腕は悪くない。


 見習い現場はどこも同じだと思っていたが、ここは悪くない。カートは何となくそう思った。


 2年なんて待ってられない。


 必要な課程を最短で修める為、無茶なペースでも仕事量を増やせばいい。


 そんな方法があると知ってから、兄弟のケツを水面下で蹴り上げてきたが、肩の力を抜いて、2人のやり方に合わすのも悪くはないと、少しだけ考えを改めるのだった。

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