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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode06 「ガキばっかだな! 俺も含めて」



 深海に眠る謎の宙航船、その修理を手伝うことになったラリーだが、正直に言えば、メカニックの技術なんて、まったく持ち合わせていない。


 モーブの船、ガルラゲルタの整備なら、いつもフランに手伝わされていたが、あくまで手伝い。横にいて言われたとおりにしていただけ。


 それでもいならと、軽く考えていたが、この船はどこをどう見ても、見たこともない機械だらけだ。


「すまない、俺は役に立てそうにない」


「ラリーの役目は決まってるから、今は何も求めないから、そんなに気負わなくても大丈夫」


 ソアと名乗っていた依頼人の本名は、ソアラ=ブロンクスと言う。


 いやでもそれも本当の名前ではないのだけれど、ソアラ=ブロンクスは名高い天才ロボット工学者だ。


 裏の情報はモーブが、ラリーのウイスクに残して行ったものだ。


 15歳と偽っていた少女は13歳であり、12歳のラリーの一つ上であることを知る。


「この船の工作室すごいのよ。ワンボック・ファクトリーよりも充実した工作機械が山ほどあって、何より私はここで、心から望んでいた夢の一つを、叶えることができたわ」


 なんの冗談かと、保護者を疑いたくなる依頼人の履歴。


「バーガーコンツェルンのご令嬢様だって?」


 ただそれは抹消された記録。表向きは戸籍から外され、別人として生きているという事。


「3歳の時に病気が見つかって、1年ほど治療を受けたんだけどね。結局はコールドスリープで時間稼ぎ。検査結果を解析研究してもらったけど、いつまで経っても成果は出なくてさ」


 彼女の病気は深刻なものだった。


 そのままにしていれば、肥大し続ける脳は、頭蓋に潰されて絶命する運命だった。


「それも今では問題も解決して、こうして道楽にかまけているって事か?」


 だとしたら名を戻し、バーガーの性で、コンツェルンの重役に就任すればいい。なにせ天才の名を世に知らしめる工学者様なのだから。


「俺が知ったのはここまでだ。冗談言って悪かった。まだ解決してないんだよな、その病気」


「モーバンドさんは一流のテイカーね。素性を隠して接触した私が、ホントにバカみたいだったわ」


「あんな性格だけど、一応は俺の目標の一人だからな」


「まぁいいわ。けど教えられるのはここまで。君が私の見込んだ人だってわかったら、全部を教えてあげる」


 ソアラの素性についての話は終わり。


 とは言ったが、ラリーはもう少し深いところまで、ソアラの事を知っている。道楽云々は相手に合わせた発言だった。


 ソアラ=ブロンクスの脳肥大は、悪いことばかりではなく、彼女に大きな力を与えた。


 彼女のイズライトは無機物操作、そこに追加されたのが、脳肥大による脳領域の拡張。


 拡大する脳量子波は、超常的な想像力を生み出した。


 銀河評議会科学技術局はおろか、古代遺産とされる超科学を理解する異端児。


 彼女ならこの宙航船、古代テクノロジーの産物を復活できるというわけだ。


「それで、その役目ってのがくるまで、俺は何をしていればいいんだ?」


「だから気軽に構えててって言ったでしょ。私の話し相手になってくれればいいの。あっ、あとお掃除とお洗濯もお願いするわ」


「家事をしろってか。飯の支度もしてやろうか」


「あら、料理なんてできるの? それは楽しみね。……その話は後回しね。お客様のご到着だわ」


 その来訪者にはラリーにも心当たりがある。  


「思ったよりも遅かったな」


「格納庫に行きましょうか」






 水浸しだった格納庫の、排水機構の修理は完了している。


 潜水艇から降りてきた訪問者は、ラリーとソアラの想像通りの人物だった。


「なんで三日も留守にしてるのよ!」


「知ってんだろ、仕事だよ。だいたい今までだって、2週間以上空けたこともあっただろう」


「父さんと一緒の時にね。本当にいつもいつも、私ばっかり留守番させてさ」


「愚痴を零したいなら、聞いてやるから離れろって、お前も来年は一人前のテイカーになるんだろ。恥ずかしい事すんなよ」


 先日、依頼主の少女と裸のつき合いをしてから、異性を意識するようになった少年は、背中に当たる感触にドキドキが止まらない。


「うっさい! 心配させたバツだ。私がどれだけ!?」


 父親をしばき倒して、乗り込んできたフランソアは涙ぐんでいる。


 ラリーは、そんなに留守番させられるのが悔しかったのかと、溜め息混じりに苦笑した。


「お前がモーブに言われて、ソアラの事を調べてくれたんだろ?」


「そうよ。私に隠れて何かしようとしても無駄なんだから」


 ガルラゲルタをワンボック・ファクトリーに預ける手続きを終え、戻ったフランは問答無用でモーブを殴った。


 潜水艇の隠し場所まで案内させると、その場に父親を置き去りにして、ここへ乗り付けてきたのだ。


「そんなに弟が恋しいの? とんだブラコンね」


「なによ、このガキんちょ。姉弟間の事に口突っ込まないでよ」


 超一級のクラッカーであるフランはもちろん、ソアラが年齢よりも年若く見える理由も知っている。


 一つ違いの少女を、敢えてガキ扱いしているのだ。


「いきなり押しかけてきて、男を獲られたくらいで、大きな声を出さないでよ」


「なっ!? お、男って何よ。って、ラリー! どこ行ったのよぉ!?」


 ラリーは1人、格納庫から出ていった。


 妙な雲行きを肌で感じて逃げ出してきたわけだが。


「ちょっとラリー!?」


 食事の支度でもしようかと、向かった食堂の入り口が見えた時である。


「なんだよフラン? 仕事があるんだから、手短に頼むぞ」


「だから、ちょっと待ちなさいって!」


 フランのタックルを躱し、ラリーは後ろからゆっくり付いてくるソアラを見る。


「ラリーに悪さなんてしてないでしょうね。ってうるさいから、正直に答えただけよ」


 右足にしがみ付くフランを振り解こうか。一瞬迷ったが、さっきよりも涙目が酷い。


「ラリー……」


「なんだよ?」


「お、お風呂入ろう。い、いっしょに……」


「なっ!?」


 正直に答えたという、ソアラの言葉の意味を理解した。


 姉を公言する2歳上の14歳を、さてどうしたものか……。


「フラン、見てみろよ。相手は実質9歳の幼女なんだぜ」


「ちょっとラリー!」


 姉を慰めるつもりが、依頼主の自尊心を傷つけることとなった。


「まぁいいわ。けど、どうだった? 実際は9歳の体じゃあなかったでしょ?」


「し、知らねぇよ。成長期の女の体型が、どんななのかなんて」


 まずい、口を開ければ開くだけ、ドツボにはまっていく。


 ここは逃げ回るのが一番。


 小型とはいえ、りっぱな航宙船だ。上手く走り回れば、捕まりはしないはず。


 フランはまた「一緒に入る!」、なんて言い出している。


 彼女の性格上、「じゃあ入ろうか」と言ったところで、尻込みをして更に醜態を晒すだけだ。


「あっ! 逃げた!?」


 フランの腕を振りほどいて、猛然とダッシュ。


 船内マップなら、とっくに頭に入っている。


 どこかに隠れたとしても、天才工学者のソアラ、天才ハッカーのフランに見つからずに、暫くやり過ごすなんてできるわけがない。 


 体力だけで言えば、ラリーが一番なのは間違いない。


 裏方で頭脳労働専門のフランや、病人のソアラが付いてこられるはずがない。


「くっ、しまった!?」


 しかし完全に失念していた。


 ソアラの作ったロボット達は、みんな創造主の味方なのだと。


「……なんてこった」


 蹴散らすことは可能だ。しかしここで壊してしまっては、作業に支障が出てしまう。


 考えがまとまらないままに包囲され、躊躇している間に、す巻きにされてしまった。


「つぅかまぁえた」


「フラン」


 涙でグチョグチョじゃないか。ラリーは呆れて言葉を無くすが。


「湯船にお湯が張れたって。ラリー、入りに行こう。それとも君のあんなことやこんなことも話してあげようか、お姉さんに?」


 ソアラのそれは、いたずらっ子の無邪気な笑顔。


 屁理屈ばかりのモーブにも勝てないラリーでは、天才少女の言葉攻めを回避することは不可能。


「はぁ~あ、降参だ。好きにするといいよ」


 す巻きのラリーは、作業ロボット達に運ばれて、浴室に向かうのだった。

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