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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode03 「はやく、もっと強くなりてぇ!」



「早く出てこねぇと、使用人が死んじまうぞ」


 逃げ場はない。危機を脱するには二人の男を倒すしかない。


 一気に二人を片付ける自信はある。入り口のセンサーの反応はこの二人分だけだが、近くにまだ犯罪者がいるかもしれないから、銃は使えない。


「どうする?」


 蜥蜴トカゲ男が小部屋に入ってきたところで、ナイフを口の中に突き刺す。


 エルガンド人の皮膚は硬くて、子供の力で貫くことはできないが、口の中へ下から脳天目掛けて突き上げれば、ラリーにだって即死させることができるはず。


「マフィー!」


「あっ!?」


 銃を左手に持ち、右手にナイフを取るのと、戸が開けられるのと、ミリーシャが外へ飛び出すのが同時だった。


「このガキ!」


 ミリーシャが股を潜っていく、男はそれに反応して頭を捻る。


 狙っていた口が見えない。銃を捨てて、ラリーは蜥蜴男の股間へと、ナイフに体重を乗せて突きつけた。


「ぬなぁあ!?」


 即死はしなくても、エルガンド人はこれで動けなくなる。程なく事切れるだろう。


「動くなよ」


 ナイフから手を離し、突進した勢いを殺さず、部屋から飛び出して、投げ捨てた銃を拾い上げる。


 しかしスキンヘッドの男の方が、動きが速かった。


「ガキを殺されたくなかったら、武器を捨てろ」


「お前らが探してたのは、その子じゃあないのかよ。殺してもいいのか?」


「だったら女の方だ」


「その人はもう助けられない。今更なんだよ」


「てめぇ、何モンだ? だったらこれならどうだ? 死なさずに苦しめる方法はいくらでもあるんだぜ?」


 男は銃をベッドに落とし、女性に飛びついたミリシャの頭を鷲掴みする。


 空いた右手に持つ瓶の蓋は開いている。


「液体、劇物か?」


「話が早くていいぜ。そんなに強くはないから死にはしない。けど死んだ方がマシだって、思うだろうぜ」


 ラリーが一発で男を撃ち殺しても、ミリーシャに液体がかかるのを阻止できない。


「大人しくお前の銃を、こっちによこしな」


 得体の知れない子供に恐れを抱き、男は武器を奪おうとする。


 ラリーにとってもその方が都合がいい。


 要求通りに足下に転がしてやると、男はミリーシャを掴んでいた手を離して銃を拾った。


 顔を上げた男は焦る。


 たった7歳の子供が、その一瞬で音もなく目の前まで迫ってくるとは、思ってなかった。


 屈んでいた男の頭の高さはベストポイント。


 懐に忍ばせていたナイフを、男の左目から脳天に向けて突きあげた。


「がぁ!」


 銃を拾うために、男はミリーシャ達に背を向けていた。


 劇薬と言っても、そんな強力な物ではない。


 強い刺激を与えると一気に高温を発して、肌に触れるとヒドイ火傷を負わせるくらいのものだ。


 お付きの女性に使った物と同じなら、直接浴びさえしなければ、大きな怪我を負ったりはしない。


 誤算があったとすれば、スキンヘッドが考えていた以上に、しぶとかったことだ。


 男はラリーを左手で振り払い、身を翻して薬品をぶちまけると、その場で仰向けに倒れた。


「くそっ! ミリシャ!?」


 不意打ちを食らって、受け身に失敗したラリーは、体だけを起こしてベッドに目を向ける。


 高熱を発する薬品がシーツに火をつけ、立ち上った煙がスプリンクラーを起動させた。


「火が消えた。ミリシャ、無事か?」


 どこを間違えたのかを考えるのは後だ。


 マフィリーリアという女性のお陰で、最悪の事態は免れることができた。


 しかしミリーシャの怪我は軽い物じゃない。


「大丈夫か、ミリシャ。意識はあるか?」


 息を引き取ったマフィーを抱え上げ、下敷きになっていたミリーシャを横抱きに立ち上がろうとする。


「アラーム!?」


 スプリンクラーが働いたことで、火災報知器が鳴った。


 この男達は隠し扉を閉めていなかったのだろう。


 侵入者は複数。


 手元にはハンドガンが一丁だけ。小部屋に行けば、サブマシンガンが入った鞄が転がっているが、拾いに行く間はない。


「これまでだな」


 幸い、ここで何が起こったか、知っているのは自分だけ。


 捕まった後の事は今はいい、ただの子供のフリをしていれば、殺されはしないだろう。


 なによりミリーシャだ。これ以上は保たない。


「見つけたぞ! 保護対象と他1名、子供がいる。……死亡者は3名だ」


 銃を持った男が3人。軍服は着ていない。


 持っていたハンドガンは、ベッドの下に蹴り飛ばした。後は自然に。


「う、うわあぁぁぁぁぁ!」


 全身ずぶぬれだから、涙が出ているかどうかなんて、マジマジと見られでもしなければ、大丈夫なはずだ。


「ふえ、ふっ、ふぅ、ふあぁぁぁぁぁ!」


 どうにも態とらしすぎたか?


 けれど大声を上げて泣くなんてのは、ラリーには経験がない事だ。


「さぁ、坊や。君もおいで」


 ラリーの抱えていたミリーシャは、一番に入ってきた男が代わって抱えた。


 思いのほか丁寧に扱ってくれている。


(こいつらって?)


 もっとも心配だったのは、ミリーシャが負った大怪我の具合だ。


 ミフィーに大火傷を負わせた薬。肌はただれて皮膚呼吸ができなくなり、その激痛に意識を失わせた。


 そんな虫の息だった彼女が、奇跡的に反応して、最後の力を振り絞り、主の上に被さった。


「早く、応急手当を!」


 頭や体は守られ、命を奪われずには済んだが、薬品が掛かってしまった両手両足が爛れてしまい、あまりの痛みにミリーシャは息を荒げて悶えている。


 救急セットを受け取った男は、早速注射器を取り出して、少女の肩と脚の付け根に麻酔を打った。


 医者でなくても機械が的確に針を打ち込んでくれるから、操作方法さえ知っていれば、誰でも使えるツールだ。


(やっぱり犯罪者なんかじゃあない)


 あまりにも手際が良すぎる。


 確証はないが、ミリーシャのことは、この人達に任せていれば大丈夫な気がする。


 ラリーは泣くフリを終わらせようと、しゃくり上げる演技をする。


「ああ、もういいぞ。泣き真似なんてしなくても」


 3人の内、ミリーシャを抱えた1人は先に上がって行き、別の1人は死体を確認している。


 ラリーは声を掛けてきた男に連れられて、隠し部屋を出る。


 隠し扉を出ると、多くの軍人と、多くのレスキュー隊員がいた。


「犯罪ギルドのテロ行為は、抑えることができた。もう安心していい」


 屋敷の外に連れ出され、ラリーは一台の車に乗せられた。


「あの……」


「無事でなによりだ、フェゼラリー=エブンソン君」


「えっ、なんで俺の名前を?」


 少し驚いたが理由は直ぐに分かった。男はラリーのウイスクを調べたのだろう。


「けど、いつの間に?」


「ウイスクは見せてもらうが、まだ調べちゃいないぞ」


 7歳の子供に向ける目ではない。


 軍人ではないようだけど、真っ当な一般人であるはずもない冷たい目。


「あなたは一体?」


「自己紹介がまだだったな。俺はモーバンド=グランテと言う。コスモ=テイカーだ。お前さんの親父さんとは、古くからの友人だ」


 ラリーを乗せた車が走り出す。


 目的地は統合軍基地だと教えられ、ラリーは助手席に深く腰掛け、脚をブラブラさせ俯いた。


 眠いわけだはないが、話す気分にはなれない。ラリーは狸寝入りをした。


 無言のまま走る車は数十分後、統合軍基地に到着し、ラリーは面会室に通されて、モーバンドと共に父を待った。


「ラリー、無事だったか」


「父さん、俺は……」


 父の指示を守れず、家族の側に居てやれなかった。


「分かっている。軍の、俺たちの対応が間に合わず、2人を助けることはできなかった」


 やはりあの時の反応、二人はあの場にいたのだ。


「ラナー……、母さん……」


「それでだ、ラリー」


「はい、父さん」


 覚悟はできていたから、切り替えるのは難しくなかった。


「お前をモーバンドに預けようと思っている。俺はこの件に関する後始末と、今後の対応も含めて、軍に詰める事になるんでな」


「モーバンドさんに?」


 事件を追うことに専念する。その期間は無期限だと、父は息子に言い聞かせる。


「分かりました。よろしくお願いします、モーバンドさん」


 父の言いつけに従い、差し出されたラリーの手を、モーバンドはしっかりと握り返してくれた。

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