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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode02 「俺は俺のできることを!」



 混乱は街の方まで拡がっているようだった。


 それはそうだろう。このエリアで一番大きな公民館で爆発と火災が起きて、銃撃音まで聞こえてくれば、一般人は遠巻きに見ているしかできないが、黒煙の上がる会館に注目が注がれるのは当然の事だ。


 上空に多くのモビールが飛び回り、消化剤を散布しようとするが、地上の犯罪者達がロケット弾を撃ってくるから、消防隊は現場に近づけないでいる。


「この辺りは静かだな」


 ラリーが警備隊に協力を申し出たところで、子供だからと保護されるだけ。


 一人でできることを見つけることが最優先。


 流石にニュース報道も始まったが、有力な情報は何も伝えられていない。


「高いところから見渡したいけど、上の銃撃戦は激しいみたいだな」


 このホールのマップは手に入れた。


 建築データもあり、配管図もある。


「地下室があるな。公開マップにはないエリア? 隠し部屋ってことか」


 現在地からは、そんなに離れていない。


 重要人物を匿うには調度いいが、出入り口は一箇所しかない。


「考えなしに逃げ込んだりしていたら、マズイよな」


 ここに来るまでにハンドガンを二丁と、サブマシンガンを一丁。ナイフも二本拾って、カバンの中に詰め込んだ。


「ここか……」


 周りに同化したカバーをスライドすると、コンソールが顔を出す。


 パスワードの入力が必要ではあるが、ラリーは直ぐに察した。


「ロックが解除されている……」


 コンソールの穴を取っ手にして右に滑らせると、地下へつながる階段が現れる。


「内側からロックは掛けられないのか。と言うことはまだ、何者かがいるって事だな」


 戸を閉めて、階下の様子を窺う。物音はしないが、なんとなくだけど誰かがいる気がする。


 両手持ちにしていたサブマシンガンを左手に持ち替え、右手にハンドガンを持って降りていく。


「すすり泣く声? 子供がいるのか?」


 隠し部屋は高級ホテルのような調度品があり、キッチンにトイレやシャワールームもあるはずだ。


 恐らくここはシェルターで、ひと月くらいなら、生活することも可能なのだろう。


「女の子が1人? 他に人の気配はなさそうだな」


「誰?」


 室内に入り、ベッドに座る少女の前へ、サブマシンガンはカバンに入れてたが、左手のハンドガンは安全装置を外してある。


「お前はさっきの?」


「……テラスにいた子? 銃なんて持って、何してるの?」


「いや、それはこっちも聞きたいんだが、お前1人なのか?」


「……うん」


 1人泣き崩れて、化粧はボロボロ、着飾った衣装もすす汚れて、靴も履いていない。


 ここへはメイドに連れてきてもらい、その人は助けを呼んでくると、出て行ったらしい。


「ならここにいた方が安全か……。俺はフィゼラリー=エブンソン。ラリーって呼んでくれ」


「ミリ、シャ……キャリバー、ひっく」


 やはりこの子が、フィッツキャリバーのご令嬢で間違いないようだ。


 でなければ、この部屋にいる事を説明できない。


「ミリシャか、よろしくな。まだ騒動は治まってないはずなのに、ここは静かだな。振動も感じない。ここなら安全だから、安心して待ってればいい」


 銃を持ったままのラリーに、おびえる様子のない少女に、もう一つのハンドガンを差し出す。


「……やっぱりこう言うのは怖いか。ここに置いておくから、俺はっあ!?」


「ど、どこへ行こうって言うのよ。こ、ここにいて、いてよ。お、お願いよ」


 捕まれたスーツの裾を思いっきり引っ張られて、倒れそうになる。


「お、おい、ミリシャ!」


「やだったら、やだ!!」


 ラリーは銃をカバンに詰めて足元に置いた。


「ミリシャは」


「違う。ミリーシャ、ミリーシャ=キャリバー」


「そうか、わりぃわりぃ……、けどミリシャでいいだろ? なんか特別感あっていいじゃん」


「特別? ……な、生意気な子ね。い、いいわよ、特別にそう呼んでもいいことに、してあげる」


 険しい顔が少し解れたか、ミリーシャにテラスで見た、強気な笑顔が戻ってきた。


「ミリシャは俺のことが怖くないのか?」


「怖くなんかないわよ。この辺りは危ないところだから、みんな銃くらいは持ってるって、お祖父様から聞いているもの。本当なら年上の私の方が、ちゃんと落ち着いてなきゃならないのに、恥ずかしいところを見せたわね」


 本調子を取り戻したのか? 少し気に障るが我慢しなきればならない。


 ラリーはすぐに気づいた。負けず嫌いで我慢していても、足や肩が震えは隠せていない。


「年下って言うけど、そっちは何歳なんだ?」


「レディーに年齢を聞くなんて失礼な子ね」


「……じゃあいいよ。何歳か分からないんだから、年下扱いはなしな」


「8歳よ。今日8歳になったの」


「1歳違いか。俺も先月7歳になったばっかりだ」


「ほらやっぱり思った通り、年下だったじゃない。……けど7歳にしては小さいわね」


「ほっといてくれ。これでも気にしているんだ」


 よかった。ミリーシャの体の強張りも取れてきた。


「なに? もしかしてイジメられっ子なの? あんた」


「どうしてそういう話になる。いや、イジメも何も俺はいつも一人だったし」


 頭脳も身体能力も、同年代とは比べものにならないほど大人だし、友達ができないのはしょうがない。


 確かに身長は平均的な4、5歳男児くらいだから、絡んでくるガキ大将はいたが、当然ラリーの敵ではなかった。


「なるほどね。分かるはそう言うの。本当に同い年の子って、お子ちゃま過ぎて話にならないものね」


 何を分かった風なことを?


「人を名前や身なりで態度を変える大人も、そんな親の顔色を窺う子供も、本当に気持ち悪いわ」


 なるほど少女も気の許せる友達がいないということか。納得してしまえばほんの少しだけど、距離が縮んできたようにも思える。


「本当に新鮮だわ。君みたいな子に出会えて、お祖父様に感謝しなくちゃ」


 どうやらミリーシャもラリーと同じことを考えているようだ。


「そうだ、この騒動が、むぅ!? むぅ、むぅ!!」


 上機嫌なミリーシャの口を、突然ラリーが左手で塞いだ。


「頼む、大人しくしてくれ。誰かが隠し扉を開けたみたいだ」


「むふぅ?」


 もしかしたらミリーシャを、ここに残した人が帰ってきたのかも知れない。


 しかしラリーは用心のために、隣の小部屋にミリーシャと共に身を潜めた。


「なんだよ、いねぇじゃねぇか?」


 入ってきたのはがさつそうな大柄の男が二人、どう見ても軍人でも警備員でもない。


 念のためにセンサーをセットしておいてよかった。


 隣の部屋の様子も、隠しカメラで確認できる。


 男の大声に驚いて、ミリーシャが静かになってくれたのも助かった。


 入ってきたのはスキンヘッドと爬虫人間の二人。


 初めて見るエルガント人が不気味だが、二人くらいなら不意打ちもできる。


「おい、まだ生きてるか?」


 スキンヘッドの男が、ベッドの上に何かを放り出した。


「はぁあ……」


 服は引き裂かれ、晒される肌は血が滲み、斑にただれている。人だ。


「女の人? 惨いことを」


 目を背きたくなる姿だが、その爛れはヤケドのようにも見えるけど。


「薬品でか? いや、肉がえぐれているし……」


「おい!」


 ラリーはその大声に一瞬動揺するが、言葉が浴びせられたのは、ベッドの上の女性。


「ガキがいねぇじゃねぇか! 本当に殺すぞ!!」


 蜥蜴男が息も絶え絶えの女性の髪を掴み、引き起こして怒鳴り散らす。


「ったくよう、結構いい女だったのに、こんなボロボロにしやがってよ」


 スキンヘッドは女性の乳房を弄ぶが、当人はまったく反応しない。


 女性は可哀想だけど、もう助からないだろう。


 飛び出して片付けるか、声を潜めてやり過ごすか。ラリーは即決の二択を迫られる。


「マフィリーリア!?」


 外の様子に気を取られて忘れていた。


「誰だ!?」


 慌ててミリーシャの口を再び塞いだが、少女の取り乱しようは半端ではない。


「頼むから、暴れないでくれ……」


 興奮するミリーシャを必死に抑えるラリー。


「この辺りだったよな」


 蜥蜴男が小部屋の前に立った。

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