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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
88/144

Episode28 「優勝するって言ってるのによ!」



『なるほどね。それじゃあレースの決着を優先していいって事だね』


『ミスター、本当にそれでいいのですか? あなたはボクに言いたいことがあるでしょう』


『オボッチャンよ。お前もプロなのなら、敵対者に簡単に頭を下げるんじゃあないぜ。お前さんは巨大グループの頭でもあるんだからよ』


『単純なあんたみたいに、頭を切り換えられる人間ばかりじゃあないでしょ。でも相手に弱みを見せない事は大切よ』


『ありがとうレディー、そうですね。今の100%を目指すのがヒーローですから』


『そいつについては同意してやれんが、時が来たら、貸しを返してもらうからな』


『いいわよ』


『当然です』


 バーチャルカンファレンスルームから出て、ゴーグルを外すラリーは自室を出る。


 トップのキャンショット・キャリバー号とはおよそ二日の距離、二位はグラップレイダー号。


 ブルーティクスとはまだそう遠くなく、距離としては一日程度、そして一つ前にドン・ブックレット号がいる。


「予定通り、セレブ号とクーランゲルはいないな」


「リタイアが宣言されています。さっき確認しました」


「サンキュー、アンリッサ」


「では私は待機していますので」


 アンリッサはコントロールルームを出て待機室へ。この部屋に彼の部屋はない。このレース中は客室を臨時の待機室にして、寝起きをしている。


「ティンク、調子はどうだ?」


『8割はキープできてるけど、これでミリーに追いつくのって、間違いなくギリギリだよ』


「オーケーオーケー十分だ」


『こちらはだめだな。全ての武装で必要数値が出せない。通常兵器として扱うしかないぞ』


「アースラ、カグラ、シュラン、もう少し、どうにかならないのか?」


『無茶言わないでよ、パパ』


『カート兄様がどうにもできないのに、我々では……』


『オレらだって万能じゃあないんだぜ、オジキ』


 ソア達はソアラの助手をしていて、コントロールに顔を出さない。


 1人くらいはとソアラに言っても、聞いてくれないのでしょうがない。


 リリアとアンリッサは交代要員、ここにはラリーとカートの二人きり。


 4人のAIがフォローにつくが、これではベルトリカを、完全な状態では運用できない。


「昔を思い出すな」


「お前とティンク、オリビエの4人でやってた頃のことか?」


「未だに俺達だけで、ベルトリカを使いこなせないなんて、成長しねぇな」


「お前も俺も、技術畑ではないからな」


「まぁ、もう戦闘なんてないんだ。久し振りに地味にがんばろうぜ」


 これより4時間後、ドン・ブックレット号を追い抜き、ベルトリカは三位に後退したグラップレイダー号を、目視できる距離にとらえた。






 戦闘開始から10分。


 事態の急変に、ソアラはソアの1人を、コントロールによこしてくれた。


「プラズマ、来るよ」


「カート、シールドの出力を上げろ」


 索敵リリア、機関カート、オペレーターのソアはいつもの席で、いつもの仕事をこなしている。


 リーノの席にはアンリッサ。しかし火器管制ではなく、役割は操舵。


 船長席にいるラリーがトリガーを握っている。


「グラップレイダーの奴ら、好き勝手やりやがって」


 搭乗員は田舎海賊ではなく、評議会の職員。のはず。


「フェルミ粒子増大!」


 真摯の夜明という新参海賊とは違う、訓練のされた戦闘力で、ベルトリカに猛攻を続けるグラップレイダー。


「反応弾頭まで使いやがって、本当にこいつら評議会のモンなのか?」


 まるで湯水のようにミサイルを散撒くなんて、一役人が振れる裁量を遙かに超えている。


「どうするの? どうするの?」


「落ち着けリリア、アースラ達が軌道計算やジャミングををしてくれているんだ。ミサイルなんて、いくらでも撃たせてやればいい」


 とは言え、反応弾の熱量は厄介だ。


 アンリッサはラリーの指示通りに、ティンクの未来予測を活かして、射程距離を維持してくれている。


 こうして有効範囲に入る前に、ミサイルは撃ち落としているが、お陰でグラップレイダーへのこちらからの攻撃も、届かせることができない。


「間違いないわ。標準仕様の8-C戦闘プログラムのパターンはβね」


 それは警察機構軍、特殊部隊が作戦用に採用している、艦体戦プログラム。


「それ一本なのか?」


「十中八九」


「通常は3パターンくらいを組み合わせるもんだが、本当に素人が乗ってるって事か?」


 荒くれ者よりは古代遺産の性能を引き出しているようだが、素人まるだしの戦闘技術では、田舎海賊の方がまだ強敵と言えただろう。 


「カート、機関を不規則に回すが、無理を通してくれ。アンリッサは俺と交代だ。適当に撃ってくれればいい。ティンク、リリアの索敵データを使って、回避をフォローしてくれ」


 ラリーは操舵を握り、グラップレイダーと距離を詰める。


 しかしベルトリカは反撃前に、進路を反転させた。


「どうしたのよ?」


「よく見ろよソア、あいつらは歴としたプロだぞ」


「えっ?」


 ラリーが気になったのは、チャージが終わったフェルミ粒子砲。


 反転したベルトリカがいたポイントに、プラズマ弾が飛んでくる。


「誘ってたの?」


「そう言うことだ。下手に飛び込んでいれば、プラズマもフェルミ粒子も、どちらも食らってただろうぜ」


 反転と同時にアンリッサが放った粒子加速砲も、絶妙なタイミングであったのに、グラップレイダーはシールドを張って直撃を避けた。


「狙いが甘かったでしょうか?」


「いや、タイミングも狙いもバッチリだ。俺がやってても同じだっただろうよ」


 こんなオペレーティングは、よほど厳しい訓練を受けなければ、できるもんではない。


「じゃあやっぱり特殊部隊?」


「いや、“オッグス”じゃあないな」


 いくらベルトリカでも、一対一の戦闘でオッグス相手に、ここまで無傷でいられるような、そんな甘い部隊ではない。


「どうするつもりだ?」


 カートはなんなら、夜叉丸で取り付いて乗っ取るか? と聞いてくるが、それを今は却下する。


「ソア、ブルーティクスのAIどもは、ティンク達と変わらないと報告していたな」


「今頃なによ?」


 青の戦隊のボールズは、明らかな古代遺産。そのAIも解析ができないのが、ソアには悔しいほどの超産物。


「いや、ちょっと考えすぎだな。ヤツの武装を潰すのは後だ。狙いを機関部に変更するぞ。古代遺産の発掘船という触れ込みが本当なら、簡単に轟沈はしないだろう」


 カートはビーム砲、粒子加速砲の出力を、最大までに上げる。


 操舵はそのままラリーが握り、トリガーはティンクに回した。


 索敵をアンリッサとリリアの二人体制にし、こちらのミサイルの設定はソアに任せた。


「やるぞ!」


 シールドの使用は必要最低限に、避けられない瞬間を見過ごさず、出力調整を細かくするカートのお陰で、ベルトリカは一直線に、相手の懐に潜り込む事ができた。


 ソアは4発のミサイルを発射し、それらが撃ち落とされると更に4発を発射。


 ミサイルの爆発には、粒子拡散幕を紛れ込ませ、グラップレイダー号のシールドを減退化させ、更に粒子加速砲で突破し、ビームの雨を機関部に叩き込んだ。


 大きな爆発が起きるが、まだグラップレイダーは健在。


 かなり落ちているが、まだ敵の推力は残っている。ベルトリカを正面に捉えるよう向きを変えた。


「フェルミ粒子、プラズマ弾が来るよ!」


 リリアが言い終わる前に砲撃があるが、粒子砲はラリーの操舵で左に逸れ、回避軌道に合わせてきた、プラズマ弾もシールドで相殺した。


 丸見えとなった敵の砲台を、ベルトリカのミサイル残弾で沈黙させた。


「機関部から更に大きな爆発を確認。グラップレイダー号にはもう、移動力は残っていないようです」


「了解だアンリッサ、これで俺らの勝ちだな」


 あちらこちらで、小さな爆発が見えるが沈む様子はない。


 大破するグラップレイダー号から白旗が揚がり、リタイアも宣言された。


 かなりのタイムロスがあったが、このままこの船を放置することもできない。


 ラリーとカートは、敵の正体を暴くべく、モビールで乗り込んだ。

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