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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode27 「大変な時だってのによ!」



『はじめまして、あなたがリリアス=フェアリアちゃんだね』


 カプセルは女性の顔の部分だけを残して、再び閉じられて立ち上がった。


 女性は目も開けてないし、口も動かしていない。


 声の主が、カプセル内の人であることは疑わない。


「声もソアのとソックリだね」


『私はソアラ=ブロンクス、こんななりをしていても歴とした20……22歳よ』


「誤魔化すな。あんたはもう27歳だろ」


 ラリーの突っ込みで場の空気が凍った。


「ラリー、あなた地雷踏んだわよ」


 ソアがジト目で注意する。


『本当にラリーってデリカシーないよね。次はないからね』


 変わる声色を物ともせず、ラリーは大笑い。


「まぁ、見た目だけなら13歳だもんな」


『うふふ、覚えているといいわ。改めまして、リリアスちゃん」


「あっ、はいリリアス=フェアリアです。リリアと呼んでください」


 13歳は言い過ぎだとしても、10代半ばに見えるソアラに名を呼ばれ、リリアは緊張で背筋をピンと伸ばし、ロボットが反応して敬礼する。


『それじゃあ、リリアちゃんのために、私も自己紹介するね』


 カプセルは完全に蓋を閉じ、大型のモニター画面が現れて、動くソアラの姿が映し出される。


『私の名前はソアラ。これは本名ね。ブロンクスってのも安直にもじってるけど、案外ばれないものよ』


 ソアラ=ブロンク=バーガー。正真正銘のバーガーコンツェルンのご令嬢である。


「ソアのお姉さん?」


『そう思うよね。ある意味間違いじゃあないんだけどね』


「いやいや、そんな訳ないだろう。どっちかと言えば、ソアの方が姉だな」


『もう、ラリーはいつもいつも』


 確かにソアよりも、ちょっと子供っぽさがあるとリリアも感じる。


『この子になら、本当の事を言ってもいいのよね』


「ああ、もうこいつは大事な仲間だ。責任感もあるから問題ない」


 ラリーの口から直接に、褒め言葉を聞くことはほとんどない。


 喜んでいることを悟られたくなくて、リリアはロボットとのリンクを慌ててオフにした。


 一瞬表情に出たのを、ラリーは見逃していないが、ここはそっとしておくべきだろう、大人の判断で話を先に進める。


「ここにいるソアの姿をしているのは、みんなロボットだ」


「そうなんだ。それじゃあソアは、どこかに行ってるの?」


「いや、俺達がよく知るソアは……、お前か?」


「残念でした。私がそうよ」


 ラリーが指差したのは、左から二番目の幼女。しかし手を挙げたのは、真ん中に立つ子だった。


「……ごめん。何言ってるか分かんない」


「だろうな」


 この話を知っているのは当人と親族以外は、ラリーとオリビエの二人だけ。


 カートもアンリッサもリーノも知らない、この世にソア=ブロンク=バーガーという8歳女子は存在しないことを。


『その話の前に、私のイズライトを説明するわね』


 それは驚きの、そして納得の能力だった。


「無機物との精神同調?」


『物心ついた頃から、お人形を手で触れずに動かせた。私は自分のイズライトを解析した結果、魂みたいなモノを、無機物に吹き込めるんだと解釈した。必死にロボット工学を学んだわ。脆弱な自分の代わりをしてくれる、精密な分身を作るためにね』


 ソアラの体は生まれつき弱く、幼い頃から1人遊びが当たり前。


 お友達はいなく、相手をしてくれるのは気遣いをくれる大人ばかり。


 自らの能力で動かす人形を、友達と呼んでいた少女はやがて、そのイズライトがもっと高度な制御に使えることに気付く。


『AIを自分の能力を使って組み上げると、人間のような振る舞いをするようになるって、分かった時は歓喜したわよ』


 AIに人間のフリをさせるのは簡単だ。


 1から性格や喋り方を設定してやれば、疑似人格は生まれる。


 ただ従来品のロボットAIは、まるで使用人の大人のようにしか、ソアラの相手をしてくれない。


『そんなロボットとでも、お友達になれたんだとは思うんだけどね』


 自分で作った、気の回らない勝手我儘を言うロボットは、一見失敗作のようだが、それこそがソアラの理想の友達だった。


 一度に動かせるAIは8体。


 動かせる機体に制限があるのかと、巨大ロボに搭載したりと、ロボット工学技術はもちろん、AIプログラムの製作技術とイズライトも向上していった。


『ロボットキングダムにもチャレンジしたり、充実してたんだけどね、体の無理を押して研究に没頭している内に、死の直前まで私の体は、病魔に冒されてしまってたわ』


 そこで生み出したのは、自分によく似たソアロボット。


『その一体を最後に、カプセルに入るしか延命の方法がなくなって、今もこうしているわけね』


 ソアを使って、巨大ロボットの開発も続けることができた。


 ロボットキングダムでは負け知らずの連覇を続け、今年もと考えていたが、助手に使っていたソアロボットが、ベルトリカと共に数々の事件に関わるようになって、それどころではなくなった。


『ロボットキングダムもそれなりに楽しかったけど、やっぱり緊張感の続く現場は違うわね。私自身もこの船に乗せてもらって、時々だけど、お手伝いもしてるのよ』


「本当に助かってはいるが、こっちの希望にちゃんと答えてくれたら、もっと嬉しいんだけどな」


 ラリーはいつまで経っても、ブラストレイカーの音声入力を外してくれないことに不安を抱いている。


「それでどうだ? 次元断層を抜ける方法は、どうにかなりそうか?」


 5人のソアに考えてもらっても、結果は出せず、それでも次元が揺らげば、その振動波を検知する事はできそうだと、それなりの成果は見せてくれた。


『そうだね。時間はもらうけど、試したいことはあるよ。リーノ君がいない以上、やれることは限られるけどね』


 ラリーは確認したかった言葉を聞けて、今はそれで良しとし、オリビエを残してリリアと倉庫を出た。


「ねぇラリー、聞きたいことがあるんだけど」


「なんだ?」


 リリアロボを工作室に残して、ラリーの肩に座るリリアが聞く。


「えーっとね」


 本当はこの時、一番気になっていたのは、カートもソアラも「リーノがいないからうまくいかない」ような事を言っていた事だったのだけれど、それをどう聞けばいいのか分からず、質問を変えた。


「ソアラさんの能力で動かせるロボットは、8体なんでしょ? なんでソアは5人なの? そもそもなんで5人もいたの?」


 聞きたいことがあると声を掛けた以上、質問はしなければならなかった。


 必死に頭を回転させて、絞り出しはしたものの。


「鋭いな。俺達の仕事にはそう言った感性が必要だぞ。リーノにも教えてやってくれ」


 同じスペックのロボットを、5体も作る理由が気になる。テイカーとして上を目指すならそうあるべきだ。ラリーは嬉しそうに高笑いした。


「ちょっと、この距離で大きな声を出さないでよ」


「すまんすまん、なぜ5人なのかか、そりゃ、あのソア達は活動を開始した時から、それぞれ別個体として成長している。5人いれば5人なりのアイデアが生まれるからだよ」


「じゃあなんで、8人じゃあないの?」


「簡単な話だ。2体はバーガーの実家にいるからな」


 1体はソアラとして、1体はソアとして家族と共に過ごしている。


「残りの1人は?」


「実験中だ。1人分の能力値で3人分のAIに振り分けて、それぞれが一人前の仕事をこなせるか? のな」


 3人分のAIと聞かされて、リリアはピンときた。


「モビールの3人?」


「ああ、そうらしい。だがなんだ、詳しい事はよく分からん。これ以上はソアかソアラに聞くんだな」


 ティンクからベルが生まれた。それと同じ技術が使われているというが、そういわれたところでラリーには理解できなかった。


「なるほどね。分かったわ。リーノのことはソアとソアラさんに任せる。何らかの答えが出るまでには時間が掛かる。それで、待っている間はどうするの?」


「そうだな。とりあえず今からでも優勝を目指すか」


 アポースに会って、聞かなければならないこともあるが、エリザをどうするかはまだ何も決めていない。


 ヴァンの動きも気になるが、今はどうしようもない。


 少し時間を置いて考えをまとめるには、このレースは都合がいい。


 ドン・ブックレット号とグラップレイダー号は、ただ単にレースをしているにすぎず、怪盗セレブ号のヘレーナ=エデルートはコースを離脱していった。


 クーランゲル号も姿をくらましたままで、ドクトルはリタイアした。


「トップのミリシャに、ブルーティクスもレースは続行中か。まだ追いつけるな」


 ウイスクで現状を確認、ラリー達はコントロールルームに入り、カートとアンリッサに「勝つぞ!」と、リーノの件を話す事なく宣言した。

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