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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode26 「打つ手はあるにはあるけどよ!」



 煌びやかなキリングパズールにも、闇は存在する。


 経緯はともかく、評議会の管理が行き届かなくなった、とあるスラム街。


 名もなき女児には親もなく、生きる事に必死で耐えた日々が、思い出に残るだけだった。


 そんなスラムでも、情報は多く流れ込んでくる。


 あの銀河を揺るがした大事件の内容も、その一つだった。


 とはいえ幼女の興味は「食べ物」を探す。その一択に向けられていた。


 だからその出会いはただの偶然。幼女にはエリザという名前が与えられ、衣食住の心配のいらない日々が訪れた。


「私がイズライトを使えるようになったのは、義父と出会った日です」


 落ち着きを取り戻したクララは、先ほどまでのポーカーフェイスとは何かが違う、無表情で淡々と語り続ける。


「もちろん父さんは、私のイズライトにしか興味がない事は、あの街から連れ出された瞬間から分かってました」


 クララと名乗っていた、A級クリミナルファイターを父と呼ぶ少女、エリザ=アザルド。


「リーノに興味を示した父さんの命令で、接触するために警察機構軍へ潜入し、捕獲する機会を待っていました」


 リーノはある時以前の記憶がない。


「リーノはリーノであってリーノではないからな。それをヴァン=アザルドも知っていたという事か」


「そうですか、やはりラリーさんもご存じでしたか」


 リーノは子供の頃に大けがをし、その時にそれまでの記憶を無くした事になっている。


「君がラリー達に聞かせた当時の事故。ちゃんと調べれば、それが嘘であると直ぐに分かる事実がありました」


 アンリッサはアポースの話を聞いて、急いでノインクラッドの管理コンピュータにクラッキングを掛け、データを入手、急いでベルトリカに戻ってきた。


「クララリカ=クニングスと、その一家が引っ越したのは事故の前でした」


 嘘を暴かれても顔色一つ変えず、エリザは話を続ける。


「そもそもクララリカ=クニングスと、ボサリーノ=エギンスは、顔見知り程度の間柄でしかなかったんです」


 記憶のないリーノに都合のいい昔話で接近し、時間を掛けて接触を続け、疑惑が生まれないように道化を演じてきた。


「警察内部でも怪しまれないように四六時中、設定したキャラクターを演じ続けたってのか」


 アポースはいつから、クララリカ巡査を疑わしく思い始めたのか?


 ラリーはいつもの事ながら、アポースの秘密主義には、溜め息一つでは納められない思いだが、今は愚痴を溢してもいられない。


「ちょっ、ちょっと待って!?」


「なんだリリア、文句なら後にしろよ」


 アポースが確証はなくとも、エリザの事を諭してくれていたなら、リーノは奪われずに済んだ。ラリーだって怒っているのだ。


「うん、それは後にする。そうじゃなくて、リーノがリーノじゃないってどういう事?」


「そんな事か」


 その件に関しては、リーノを預かると決まった時に、アンリッサに裏資料を調べてもらい、ラリーとカートはその事実を最初から知っていた。


「ボサリーノとして生を受けた少年は、もうこの世にいない」


「どういう事よ。じゃあリーノは動く死体とでも言うの?」


「嬢ちゃんが言っていた事故でリーノ少年は死んで、エギンス夫妻は同い年で、見た目もそっくりな孤児を引き取った。それが今のリーノだ」


 実の息子が死んだばかりの夫婦に、評議会職員は孤児との面会を無理に推し進めた。


 言われるままに顔合わせをした瞬間、エギンス婦人は孤児に抱きつき、家族になる事を即決した。


「実子は密葬で弔われ、リーノは代わりとなって、新生活をスタートしたんです。その点に置いては幸いな事に、彼は過去の記憶を完全に失ってましたから、大きな問題はなかったようです」


 当然、このような事は公の記録には残っていない。


 性格が変わったのも、記憶喪失のせいにして、周囲を納得させた。


「分かったか?」


「えっ、えぇ。大丈夫よ」


 リリアはまだ何か残っている気もしたが、首を縦に振ることにした。


「それで嬢ちゃんのことは、どっちで呼べばいい?」


「どういう事ですか?」


「俺達はクララリカという名前で馴染んでいるが、お前さんは今までみたいに、まだその道化の芝居を続けるのかって、聞いているんだよ」


「えっ、だって私は……」


「ヴァンのヤローに捨てられたっていうなら、元いた場所には戻れんだろう? おやっさんに相談もしなくちゃならんが、警察を続けられんとなるなら、コスモ・テイカーになるって言うのも一つの道だろう」


 なんにしても、呼び名は必要だ。


「正直、演じてきたクララリカ=クニングスは捨て去りたいので、今後は私をエリザと」


 しかしアザルドを名乗らせるわけにはいかない。


「アポースでいいんじゃあないか? おやっさんの隠し子って事にすればよ」


 バツ1のアポース巡査長には、二人の息子と末の娘がいるが、親権は母方に渡し、養育費を送ってはいたが、どの子とも一切会っていない。


「そんな話は後にしてよ!? リーノの事、どうすんの?」


 リリアはエリザの事を許す気はないが、ああも大人げなく泣かれては、流石にこれ以上攻める事もできない。気持ちを切り替えて、本題に集中する。


「どうするも何も、ヴァンのヤローが連れて行ったってんなら、居場所はイグニスベルグランテだろうよ」


「えっ? なんで言い切れるの?」


「そいつはまだ秘密だ。しかしイグニスベルグランテとなると、直ぐには手が出せないな。あの次元断層をなんとかしないと、ヴァン=アザルドにもリーノにも届かねぇぞ」


「何か策があるのか?」


 ブラストレイカーが使えれば簡単だが、カートは現状で有効な手があるのかと、ラリーに問い質す。


「その手立てを見つけるのは俺じゃあない。ティンク」


『はいは~い、こっちの話が落ち着くの待ってるよ』


 ラリーは特に説明することもなく、カートとリリアを連れて移動する。


「アンリッサ、エリザの事を頼む」


 部屋を出る時に、ただその一言だけを残した。


「ここって工作室じゃない」


 ベルトリカにおいてどこよりも、格納庫よりも広い内部は、所狭しと物が置いてあって、アンリッサでさえ、中に何があるのかを把握していない。


「ようやく来たね。早速奥に入るけど、その前にリリアはロボットに入って、カートごめん、ここで待っててよ。手狭なところだから、入れる人数限られてるけど、この子は入れてあげたいから」


「俺の事は気にしなくていい。ブリーフィングルームに戻っているよ」


 その扉の存在は知っていたが、決して中へ入らないようにと、注意されていた部屋のロックが外され、オリビエが招き入れてくれた。


 そこはいつもオリビエがいる部屋の、倍ほどあることは、リリアも船内案内図を見て知っていた。


「入室禁止にしてるけど、ここはただの倉庫だから、別に怪しい実験とかしてる訳じゃあないからね」


 見た感じ、用途の分からないものだらけで、入室禁止にされるのも分からない場所だ。


「絶対に触らないでね。特にラリー」


「おっ、おぅ!」


 注意が一歩遅ければ、目の前の棒を持ち上げようとしていた、ラリーは手を引っ込める。


「おーい、ソアぁ~、連れてきたよぉ」


 わざと暗がりにした部屋の、最も奥に待っていたソアに声を掛け、照明を点灯させた。


「うわっ!? えっ? えっ? ソアがひぃ~、ふぅ~、……5人もいる。ああ、そっか、ロボットかぁ~」


 こうして改めて見ても、どれも本物のようで、誰がソア本人なのか、リリアは目を凝らすが、どうしても見分けが付かない。


「5人の頭脳でも、答えは導き出せなかったのか」


「だから最初から言ってるでしょ。同じ頭脳がいくつ集まっても、出てくる答えは変わらないって」


「それで彼女は了解してくれたのか?」


「不承不承ではあるけどね。この船にも長い間お世話になってるし、やれる事はやってみるわ。でもそれで無理だったとしても、責めたりしないでよ」


「ふっ、よく言うぜ。銀河一のプライド王が、勝算なしで出てきたりしないだろ。オリビエ頼む」


 ソアの向こうにある大きな装置に、オリビエが手を伸ばす。


「それじゃあ、開けるよ」


 装置の真ん中が割れて、左右に展開する。中に人影を見た時だった。


「コールドスリープカプセル?」


 人影は女性で、年齢的にはリーノと同じくらいだろうか?


「この人もしかして、ソアのお姉さん?」


 リリアはなんとなく似ていると感じた。


 と言うよりは、ソックリ過ぎて姉妹と言うのもしっくりこないほどだ。


「そうね、今のこの私が人間だとすれば、そう言っていいと思うわね」


「そろそろ、その勿体振った言い方やめてよ。ちゃんと解りやすく教えて」


「ここからは第一級秘匿事項だ。リリア、秘密が守れるなら右手を挙げろ」


 リリアは即決で手を挙げた。何に対して覚悟を決めるのかも分からないけど、迷いはなかった。


 ラリーとソアはその瞳の輝きを認めて、リリアに真実を語り始めた。

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