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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode24 「もう、この仕事も終わりだな!」



「はじめましてね、英雄フィゼラリー=エブンソン。あなたの事はよく知っているけどね」


 スーツ姿の女性が頭を下げる。


「はじめてでしたかね? 俺もあんたの事はよく知ってるぜ、サルエラ=ブレエレラ最高議長」


 お互い報道でよく知った顔が目の前に。


「本当にあんたが怪盗なのか?」


「クレマンテに聞いていて、全部知っているんじゃあないの?」


「おやっさんをクレマンテと呼ぶ間柄なのかよ」


 二人が同年代である事は間違いない。


「そうなの。ぼーやはまだ、あの男の正体を知らないのね?」


「気になる言い方をするじゃねぇか」


 ニュースで見る彼女と振る舞いが違いすぎる。ライトを挑発しているのか?


「けどそんなもんは知りたかねぇよ。喋りたいって言うんなら、聞いてやるけどよ。こっちの質問にも答えてもらうぜ」


 弱みを握れるのなら聞いてみたいが、今はそれどころでないことをラリーも心得ている。


「あの老害、いつも私の邪魔ばかり……」


 小声で聞こえていないと思っているのだろうか?


「なんだよ、おやっさんのことかよ」


 老害と聞いて連想されるのは同じ人物。ラリーも大概失礼である。


「全く何が元老げんろうよ。表舞台にいて評議会をまとめている私の方が……」


「愚痴なら他で溢してくれ、俺も忙しいんだ」


 眉間に皺を寄せ、ブツブツと罵っているを、黙って聞くのはここまで。


「あらそう? じゃあ私はお暇するわね」


「おい待て、俺が用のあるのはあんた……」


「じゃあねぇ♪」


 引き留める間もなく、セレブ号の船長席に座ったまま、シートはリフトダウンしていき、サラエボは脱出用モビールへ乗り込み、飛び去ってしまった。


「なんなんだ、まったく」


「どうするの? ラリー」


「どうするもなにも、まさかの手際で逃げられちゃあ、どうしようもないだろう。相手が最高評議員様じゃあ、ティンクに取り押さえさせる訳にもいかないしな」


 ラリーは来た道を引き返し、シャトルでカートを待つ事にした。


「手伝いに行かないんだ」


「狭い船内だからな。俺もお前も、行けば邪魔になるだろうぜ」


 サブコントロールは広めに作られているようだが、4、5人で暴れられるほどではない。


 後は相棒を信じて待つのみ。

 





 ソニアル=フェアリアは膝をついた。


 さっきまで平然としていたのに、急に息を切らせて、目も虚ろになっている。


「どうしたの!?」


「イズライトの使いすぎだ。しかも進化した能力となれば、体への負担は計り知れないだろう」


 イズライトと言う、特殊な能力を駆使する為には、精神力を大きく消費する。


 使い方を間違えれば、廃人となってしまう諸刃の剣。


「コピー能力を乱用しすぎたな。彼女を潰したくなければ休ませてやれ」


 ここでソニアに脱落されては困るが、カートの指摘を認める他ない。


「ヘレーナ=エデルート、ソニアル=フェアリアがこんな状態では、お前も彼女の恩恵は受けられまい」


 そこまでカートは見抜いていた。これではもう……。


「ここまでって事ね」


 流石に観念したヘレンは、意識を失ってしまったソニアを支え、膝をついたままカートを見上げる。


「それじゃあカート、あなたには退場してもらうわね」


「なに!?」


 ヘレン達に注意がいっている間に、すっかり囲まれてしまっていた。


「これはドン・ブックレット号にいたボールか。それがなぜここにいる?」


「なんか滅茶苦茶量産されていたから、ちょっとくらいくすねても大丈夫だと思って、頂いてきたのよ」


 ちょっと?


 ざっと見ただけでも、20機はいるのではないだろうか?


「失敗作だって、廃棄された物よ。たかがフレームの設計ミスで、人型にならないってだけで」


 ボールは手足を伸ばして四足歩行する。首が伸びてまるで。


「亀だな」


「この形が一番効率が良いんですって、人の形を無理矢理取らせる方が、どうかしているそうよ」


「お前に聞かなくてはならない事が、また増えたな」


「だから、もうあなたに用はない。退場を願うって言ってるでしょ」


 ボールがカートを襲い、その間にヘレンはソニアを抱えて部屋を出る。


 隔壁は閉じられ、カートは閉じ込められてしまう。


 カートは端末に取り付いて、改めてシステムを乗っ取ろうとするが、時既に遅く。


「分離?」


『サブコントロールを失うのは痛いけど、あなたという邪魔者を排除するためなら、仕方ないわよね』


 電脳空間に潜るのを止めて、カートは普通にコンソールを操作する。


 どうやらこのブロックには、推進装置の類はないようだ。


『安心していいわよ。お仲間のシャトルが向かっているわ。またね、カート』


 ベルトリカのシャトルが、サブコントロールにドッキングする。


 その間に怪盗セレブ号は遠ざかっていった。


「まんまとしてやられたな」


「お互いにな」


 情報の確認も収集も叶わなかった。今回のミッションは失敗。


 二人揃っての行動で、これほどの惨敗はいつ以来だろうか。


「まぁ、今回、向こうは、万全の準備を整えていたわけだからな」


 分かった事と言えば、この件に銀河評議会最高議長が本当に関わっていた事と、ガードロボットのボールをヘレンが手に入れたと言う事だけ。


「そういや気になる事を言ってたな。アポースのおやっさんが元老だとか何とか」


「元老?」


 何度となく評議会とはかなり密に接して、様々な仕事をしてきたベルトリカだが、今まで元老なんて言葉は、一切聞いたことがない。


 フウマの里の諜報員でもあるカートなら、もしかしたら何か知っているかもと思ったのだが。


「銀河評議会顧問役員を差す隠語ね。その権限は最高議会よりも高いとか」

「なんだソア、知ってるのか?」


 向きを変え、ソアへ顔を向けるラリーが真剣に聞く。


「詳しい事は何も知らないわよ。ただ家に来る色んな偉い人が、話しているのを聞いて、そう言うのがあるって知ってる。その程度よ」


 それでも元老という言葉が、本当にある事は分かった。


 今はそれだけで良しだ。ラリーは頭を切り換えた。


「これでこのレースでの依頼は、全て完了でいいんだよな。後はティンクに任せて俺は……」


 レースに勝つ事が目的ではないし、完走をする必要もない。


 ベルトリカはフルオートで航行する事ができる。多少酒を飲んでいたって、問題はないはず。と、ラリーは考えている。


『クーランゲル号のこと、もしかして忘れてるの?』


「あっ!」


「あっ! じゃあないだろう。しっかりしろよリーダー」


 ティンクの突っ込みに、間抜けに返すラリー、カートが深い溜め息を吐く。


「リーノから連絡があったのか?」


『何もないから心配してるんでしょ!?』


「なるほどな」


 シュピナーグの位置情報は掴めているから、ティンクもいうほど心配はしていないが、いつもなら度を超して報告を寄せてくる、あのリーノが沈黙しているのは怖い。


「追跡任務中だからじゃあないのか?」


「それならいいけど、本当に何かあったんだとしたら、こっちも追いかけた方がいいんじゃない?」


 ソアの意見はもっともだ。


『向かって良いんだよね』


「ああ、向かってくれ。俺達も戻り次第コントロールルームに入る」


 シャトルは最大出力でベルトリカを追いかけ、ティンクは巡航速度で仲間を待つ。


「ボクたちはベルトリカに着いたら、このボールの事を調べてみるね」


「ああ、頼むぞオリビエ。ヘレーナ=エデルート一味に、こんなものを改造できる奴はいないはずだ」


 どれくらいの技術力で改造すれば、一瞬でもカートを足止め出来る機動力が作り出せるのか?


「ドン・ブックレット号のボールは、完成品だとは言っていたが、性能はそれほどでもなかったぞ。カート」


「なんでそっちも貰ってこなかったかなぁ」


「無理言うなよ。ソア」


 シャトルはベルトリカに追いつき格納庫へ、ティンクは最大加速でシュピナーグの跡を追った。

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