Episode21 「思いがけない苦戦。ってやつだな!」
「リーノ、これは一体どういう事だぁ~?」
シュピナーグと合流して目にした物に、ラリーは深いため息を漏らした。
『こっちの話を全然取り合ってくれないんですよ』
「どんな説明をしたんだ?」
『仲間を迎えに来ましたと』
「で、奴さんは?」
『問答は無用だそうです』
ラリーはフォレックス=マグナという人物の為人は知らないが、こういった強引な手を使ってくる輩とは、ずっと真っ向から対峙してきたから、なんとなく判る。
「ようはブラストレイカーとやってみたい。ってところか」
生粋のロボットマニア、ロボバトルバカのみが参加するロボットキングダムフェスティバル。
ソアラ=ブロンクスが参加しなくなってからというもの、取って代わってチャンピオンに君臨していたフォレス。
そして完成をしたブレイブティクスで挑んだ、今期の大会は惨敗だったと聞く。
「そんでリーノの手伝いで、再度調整した結果を試したいが、あのヘルとかって爺さんや他の犯罪者では、満足のいくデータを得られなかったとか?」
警察の船を襲うベルトリカを、犯罪者として突っ掛かってきた。ラリーは首を縦に振って、勝手に解釈をした。
「いいじゃあないか、問答無用って言うなら、俺達も本気で相手してやろうじゃあないか」
各モビールにAIを実装して、初の合体。
「いくぞ」
三機は合体ポジションに位置付け、ラリーをマネた声で『ブラストアップ』と響き、各機が変形を始める。
『レッツ レイカー、オン!』3人の声が重なり、3つのモビールは1つに繋がる。
決め台詞も3人で『合体巨兵ブラストレイカー』と力いっぱいに轟く。
15メートルの巨人が降臨した。
「なんでお前だけ、自分で叫んでるんだリーノ」
『いや、俺に任された仕事を簡単に取られるのは、その、寂しいのでせめて、ここだけはと思って』
外された事よりも大きな仕事を任せられたのに、何を熱くなっているのか、ラリーは自然と口元が綻んだ。
相手は30メートルのバトルロボット。
『来るぞ、ラリー』
目の前で変形合体なんて隙だらけの状態を晒したのに、全く動きを見せなかった青いロボットからの先制攻撃。
アームボンバーを予想していたが、オープニングアタックは、胸部放熱板のすぐ下にある、熱量高めのビーム砲だった。
『ブラストシールド!』
重力レンズの壁が、ラリーの武器名絶叫に合わせて広がり、ビームを掻き消した。
「いいぞシュラン、これで戦闘に専念できる」
『おお、任せておきなオジキ』
突っ込んでくるブレイブティクスは、愛用の青皇剣ではなく、プラズマをまとった手刀で斬りかかってくる。
「おい、コクピットにいるのは本当にあの御曹司なのか?」
『ブレイブティクスが本物なら、隊長以外に動かせないのは間違いありませんよ』
言い切るリーノを信じてやるなら、目の前のロボットが本物なのかを疑うところだが、このタイミングでこんな巧妙な偽物を用意できる訳もない。
『それに近くにブルーキャリーがいないから、青皇剣は使えないんですよ』
「なるほどな」
攻撃はまだブレイブティクスのターン、手刀攻撃を続けながら小型ミサイルを連続発射、額の光子レーザーを目前で放たれ、エネルギー消費の多い重力レンズを展開し続けさせられ、ブラストレイカーは一端距離を開ける。
追随するように、青の巨人腹部から、大型ミサイルが発射される。
移動速度は当然ミサイルが上。
ブラストエッジで斬ると同時に前に、しかしそこにはアームボンバーが。
「よくあれを両断できたな?」
両断されて、ミサイルと共に爆散する巨大な拳。
『サクヤのお陰だ。俺の体内電気信号を読み取り、反射速度を電脳内から引き上げてくれている』
撃たれっぱなしからの反撃、ラリーはハイランドキャノンで、敵の小型ミサイルを全て撃ち落とし、連射を続けてブレイブティクスを後ろに下がらせる。
「あの巨体でよくあれだけ動けるな。モビール基準で見ちまうと距離感見失うな」
接近戦に持ち込み、懐に潜り込めれば、深手を負わせる事ができるだろうが、最も有効なレンジが掴めない。
「クロスレンジでの応酬は、機械でサポートできないからな」
『少し時間をくれ、人型ロボットの戦いにも直ぐに慣れてみせる』
「その前に終わらせるさ。リーノ! 距離を取るからデカイのを咬ましてやれ」
出力調整やその他諸々、ラリーが担っていた細かい作業はアースラに、チームリーダーは操縦に神経を注ぎ込む。
ナーグミサイルとアークスミサイルをばらまいて、ブラストレイカーは射程ギリギリまで後ろに下がる。
『バスターキャノン!』
リーノが担当する長距離攻撃の音声入力は、今まで通り、本人が叫んで発動させる。
粒子加速砲は遠慮なく最大出力で放たれ、ブレイブティクスは胸の放熱板、ブレストブラスターで対抗する。
「あの放熱板、こんなに強力だったか!?」
まさかの趣味の産物が、思いがけない威力を発揮する。
『パパ、あの胸のビーム発振器の束は粒子砲だよ。荷電粒子が無重力で互いを引っ張り合って、集束してるから、すんごい熱量になっちゃってる』
説明台詞ご苦労さま、アースラ。
ラリーは悪寒の走る背中に、大量の汗が噴き出す不快感を覚え、相手も超兵器の塊である事を改めて認める。
「オレグマグナ、恐れ入るぜ」
主にランベルト号から入手した古代兵器のデータを元に、現代科学文明の叡智を結集したブルーティクスは、今だ全機能の解析の終わらないベルトリカに劣っていない。
「やっこさん、あんなのを1人で動かしてるのか」
『ラリーさん、あちらにはボールズの皆さんがいらっしゃいますから』
ボールズ。
恰好はドン・ブックレット号にいたやつらとそっくりな、しかし中身はティンク達に匹敵するAIを搭載していると聞く、厄介者。
「そうか、そうだったなリーノ。……もしかして、その人形をオレグマグナは商品化しようとしてるのか?」
『えっ、そんな話があるんですか?』
「いや、俺の勝手な想像だよ。忘れろ」
ブルーティクスのフォレックス=マグナとの面識はラリーにはないが、人柄は色々と伝え聞いている。
「……いくら考えても分からん。あって聞くのが一番だが、敵はハンパなく強い」
これ以上のタイムロスは避けたいのだが。
「う~ん……、ぶっ壊すか?」
動きを止めて、その後のことは、それから考えるとする。
「ベルトリカ、こっちに来れるか?」
『無茶言わないで、こっちは青の戦艦と空母、無人モビールの相手でてんてこ舞いよ』
「おお、ソアか」
キャリバー海賊団のバイク軍団を真似て、ソアロボミニにミニカーを用意した。
頭だけを覗かせたファンシーな攻撃機。
オリビエとベルの指揮下で、ミニ達はジャッジメントオールの無人モビールと戦闘中。
ベルトリカもブルーバトルシップとブルーキャリーの相手をしている。
来いと言われて、「よろこんで」とはいかない。
「そのままこっちに連れてくればいいさ。それならいけるだろ」
『まったく、もう!』
レーダーに映る船影が近づいている。ラリーは顔を上げて前を向く。
『ラリーさん、いつまで遠距離で撃ち合いを続けるんですか?』
こちらの粒子加速砲と、向こうの荷電粒子砲のチャージにかかる時間はほぼ同じ。
ミサイルの残弾はゼロとなり、単調な砲撃戦が続いている。
『向こうもミサイルが切れたのか? とにかく膠着状態です』
「カート、そろそろいけそうか?」
『そうだな。大体のイメージは固まった。おそらくはやれるだろう』
ベルトリカに青の空母も連れてこいと言った以上、ここまでくればブレイブティクスは青皇剣を手にするだろう。
「それを待ってからでも、おもしろいだろうがな」
ブラストレイカーの刃が届くよう、ラリーは最大加速で前へ突っ込んだ。




