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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
80/144

Episode20 「今どきの警察は……、まったくよぉ!」



『まずい不味いマズイよぉ~、ソアぁ~~~~~!!』

「落ち着いてリリア、まだ保つから! と言ってもこのままじゃあ、いつオーバーヒートしてもおかしくないか」

 リリアーナは絶賛絶対防衛戦を死守する真っ最中。

 クーランゲル号、レースを目的とした高速船としては、桁外れの大きさで、一般的な高速船なら、簡単に着艦させられるほどの大きな格納庫を持っている。このレースでも活躍するドック船並みだ。

『もうこの船、壊しちゃっても、いいんじゃあないかな?』

 ソアが相手の要望を断ったら、攻撃を受ける羽目となった。

「ダメに決まってるでしょ。正式な警察所有の船よ」

 相手からの攻撃も、対人用のショックガンで、船を壊さないように加減されているので、リリアーナの防御フィールドで何とかできている。

「決定的な危害を加えてこないんだし、このままリリアーナでケーブルを繋いじゃってよ。乗っ取りが成功するまで、シャトルもケーブルも守ってね。それで問題解決!」

「いや、さっきから鳴りっぱなしの通信回線を開けば、手っ取り早いと思うよ。ワタシ(・・・)は」

『いくら対人用でも、30カ所から連射されてちゃ、前に進めないって』

 相手の要求はシンプルだった。

「どこで間違えたのかしら?」

 クララからの指示で、彼女のモビールを取ってくるように言われた。そう言って接近し、さっさとクラッキングして、必要なデータを頂こうとソアは考えていた。

 うまい具合に怪しまれることなく、格納庫のハッチが開いた。

 クララのモビールは今、クーランゲル内部に着艇したシャトルの隣にある。

 モビールのコントロールをもらうと言って、端末にケーブルを繋ごうとリリアーナが動いたところで、攻撃が始まった。

 そこで回線を開いたところ、ソアとオリビエ両名を拘束する。下手なマネができないようにリリアも捉え、人質とすると言ってきた。

 慌てて回線を遮断し、今に至るのだが。

「あの人達、本当に警察の人なの? 何でワタシ達を捕まえようとしているの?」

「ねぇ、オリビエ」

「なに?」

「なんで義体なんて着ているの? 白兵戦でも仕掛けようって言うの?」

「しないよ。ただなんとなく怖かいから」

「あっそ。とにかくケーブルさえ繋がれば、カートほどじゃあないけど、音速で敵のCPUを乗っ取ってあげるから、気張りなさいよリリア!」

 そのケーブルを繋ぐために、今をどうにかして欲しいリリアは、また『マズイ』を連呼しだした。

「ねぇ、ソア。ちょっと思うんだけど」

「なによ?」

 オリビエはシャトルに搭載している、ラリー達実行チーム用の装備を入れた第一コンテナの隣、オリビエ達サポートチームの装備が入った、第二コンテナを指さした。

「ミニにやらせたらどうかな?」

「おおー、その手があった」






 エアロックからラリーとカートがクーランゲル号に潜入した。

 クララはリーノと共に外で待機、この船で何があったか分かるまでは、慎重に行動しなくてはならない。

 侵入したエアロック周辺は静まりかえっている。

「ソア達は格納庫だ。シャトルから降りていない。リリアーナが戦闘中となっていたな」

「乗っ取りには成功したんだろ?」

「ああ、それなんだがな。この船のブリッジの回線には辿り着けなかった」

『あり得ない事ですが、無線でも入れない、単独運用されるシステムのようです。フェゼラリー兄様』

「サクヤ、作戦中は略称を使えと言っているだろう」

『すみません、カート兄様。もっとサクヤを叱ってください。そう、もっともっと罵ってください』

「カート、お前の趣味なのか?」

「ラリー、今後はベルトリカで食する物に、毒が入っていないか、十分注意するんだな」

 ウイスクの中の妹は、『おほほほほ』と楽しげだ。

『扉の開閉装置は全てこちらの手の内です』

「それだけでも十分か。ご苦労さん、いい仕事をしてくれたな嬢ちゃん」

『サクヤですわ、ラリー兄様』

 このクーランゲル号は。警察機構軍で訓練に使われる船。

 宇宙でのあらゆる場面を想定して、効率よく訓練ができるように無駄に大きい。

 それでいて航続距離も航行速度も、かなり優れているので、レースに参加する船に選ばれた。

 無論ブリッジも重要な訓練場。

 トラブルに対応するために敢えて、旧時代の異物のような不便さを実装している。

「厄介だが、奴らが自力で脱出する前に、格納庫へ行くぞ。3人はそこなんだろう?」

『はい、ラリー兄様』

「それが掴めただけで御の字だ」

 ここで新しい情報を手に入れようとしても、きっと何も出てこない。

 アポースの見立てが正しければ、だ。

「さっさと3人を連れ戻すぞ」

 相手はどんなに緩くても警察官。

 下手に手を出すわけにはいかない。

「カート、お前の術でどうにかできるんだよな」

「やってみないと分からんが、少なくとも九割は片付けられるだろう」

 格納庫への隔壁はこの一枚、カートは印を組んだ手に“氣”を込める。

「行くぞ!」

 ラリーが手を触れると同時に、サクヤは隔壁を開けた。

 最初にカートが走り込み、続くラリーは危うく相棒の背中にぶつかるところだった。

「どうした?」

「……わからん」

 格納庫は静まりかえり、動くモノの姿はない。

「リリアーナが仁王立ち?」

「オーバーヒートしたのよ」

「お、おお~、リリアか」

「うっ、なんだかまだ慣れないわね。ラリーがちゃんと名前呼んでくれるの」

「なんだ、ちびスケって呼ばれたいのか?」

「いやよ! やっと一人前に思ってもらえたみたいで、本当に嬉しいんだから」

「そ、そうか……、なんか悪い事してたみたいだな」

「それよりも、この状況について説明してくれ」

 ベルトリカのシャトルとクララのモビール、眼前のリリアーナ。

 壁際には転がる制服姿の男達。

「ソアの人形か」

 カートはソアに似たヌイグルミを一つ、足下から持ち上げた。

『二人とも来てくれたのは嬉しいけど、ちょっと遅かったよ』

 ソアに「説明するから中へ」と言われ、ラリーとカートはシャトルのコントロールに入る。

 リリアはリリアーナに戻り、熱暴走が納まったのを確認して、ソアロボミニ達と共に警戒にあたる。

「2人も無事なようだな」

「いったいどうなってるの? まさか警察に身柄を抑えられようとなるなんて、思ってもいなかったわよ」

 ラリーは食って掛かってくるソアをなだめる。「どうどう」と言ったら、怒られはしたが、落ち着いたところで話を続ける。

「言っとくけど、私たちから、なにかしたわけじゃあないからね!」

「対人用のショックガンだったから、大事にはならなかったけど、洒落にならないよね」

 ソアロボミニの制御をベルに任せ、ゴーグルを外したオリビエの顔をジッと見つめる男。

「どうかしたの? カート」

「本当にオリビエなんだな」

「そうだけど……、この義体見るの初めてだっけ?」

「そうだな」

「そうなんだ。……どうかな?」

「いいんじゃあないか」

 割と緊迫感が続く局面なのにユルユルな二人にも、いきなりの警報に少し緊張感が戻ってくる。

『ラリーさん、カートさん大変です』

「どうしたリーノ、慌てずに要点を話せよ」

『ラリーさん、早く戻ってください。俺だけじゃあ対応できません』

「お前、人の話聞いてるか?」

『は、早く!』

 クーランゲル号のシステムに再度アクセスを試みたが、やはりブリッジを抑える事はできなかった。

 ソアロボミニに警察官達を通路の中に放り込ませ、格納庫の空気を抜き、シャトルは外に出る。

 リリアーナも警戒を解かず後に続き、シャトルに戻る。

 シャトルに平行するアークスバッカーと夜叉丸に、ラリーとカートはそれぞれ乗り移った。

「これでなんてことなかったら、訓練レベルMAXで6時間だからな」

 レーダーにはベルトリカとシュピナーグ。それと未確認の反応があと三つ。

「識別信号、これは本物か?」

『わかんないけど、本物だとしたら急いだ方がいいよ。パパ』

「言われるまでもねぇよ。……なに考えてんだ。あのヤロー」

 夜叉丸とシャトルを残して、アークスバッカーは最大加速で最高速に達した。

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