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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode17 「俺、一回休み!」



 イズライトを発動させると、一度真っ暗な空間に放り出され、そこが宇宙空間であっても、重力を感じるようになる。


 初めてカートが自分のイズライトと向き合ったのは、里から諜報員の役職を賜って3年。


 過酷な訓練を受け続ける10歳の事。


 情報処理能力修得中に、一人の指導員がカートのイズライトを発見した。


 同時に機械音痴のレッテルを張られたカートだが、イズライトのお陰で、電脳世界に意識をリンクさせる“サイバーダイヴ”の、更に上位のオペレーションが可能となった。


「ゲーム、スタートだ!」


 辺りが明るくなり、目の前に1人の少女が現れた。


 身長はカートの半分ほど。白帯に淡い紫の着物姿。髪留めはなくサラサラの長い白髪美少女。


「カート兄様!」


「ここまでは実験通りだな。問題は?」


「特に今のところは」


 それはそうだろう。本番はこれから、今はまだ夜叉丸の中だ。


「よし、行くぞ」


「お待ちください」


「どうした?」


「その、……少し、緊張するので、手を握っては、いただけませんか?」


「……それは誰の入れ知恵だ?」


 緊張と言われても、流石のカートでも、その違和感に気付かないはずがない。


「もちろんソア母様です」


「……もういい、行くぞ」


 カートは無駄な時間を省くため、サクヤの手を取ってやり、ケーブルコードを通って、ドン・ブックレット号の電脳空間に移動する。


 先ずは警備システムだ。


 入ってきた扉のアラームは黙らせたが、中のセキュリティーはまだ活きている。


 早く止めてやらないと、このままではラリーが動けない。


「いや、あいつを待たせると、何をしでかすか?」


「考えるまでもありませんものね」


「サクヤ、ルートは探れるか?」


「少しだけお時間を頂きます」


 サクヤはカートの能力を拝借して、ドン・ブックレット号のシステム内を覗き見る。


 1人では細かい作業のできないカートは、いつも力業で防御プログラムを排除し、どこからでも簡単に制御回路にアクセス可能にして、後の事を仲間に委ねてきた。


 ソアには宝の持ち腐れだと言われ続けてきたが、この実験が成功すれば、ベルトリカはチームとして、大きくパワーアップできる。


「カート兄様、どうもおかしいです。ここのセキュリティーはガーディアンが一つ。そこまで簡単に行けそうです」


「考えても答えは出ない。その障害を排除する。いくぞ」


「ああ、カート兄様、ワタクシ少々ストレスが溜まってしまったようですの。ガーディアンの元まで抱っこしてはもらえませんか? チラっ、チラチラ」


 AIの人格をどのように設定するか? と聞かれた時に、「なんでもいい」と言った事が悔やまれる。


 協力を惜しまないとオリビエとソアに言ったお陰で、希望通りのお淑やかで有能な助手を得る事ができた。つまらないいたずらと代償に。


「って、カート兄様!?」


「なんだ? こうして欲しかったのだろう?」


「いいえ、そのワタクシは、その願望は口にしましたが、その、これはその……恥ずかしいです」


 カートに横抱きに抱えられて、真っ赤になるサクヤ。


 いくら基本プログラムとは別タスクだとは言え、技術の押し売り満載の人工知能の反応に、カートは構ってはいられない。


 なによりカートは、夜叉丸から出ても、機能を損ねない妹分に満足している。


 サクヤは学習をする。下手なアピールは自滅につながる。己のマスターとの接し方をうまく構築していく必要があると。


「ここか?」


「は、はい。そうです。この奥に防衛プログラムが陣取っています」


 電脳世界はイズライトで、カートのイメージを投影した疑似空間。


 フウマの里で能力を具体化するために、担当者は一般的なゲームをベースにし、カートに世界構成の方法を植え付けていった。


 だから未だに、それが疑似空間の基になっている。


「これは?」


 夜叉丸内で始めた、ゲームのスタート画面は通常通りだった。


 ブックレット号の電脳空間に移ってきた時も、よく知ったRPG的な風景が拡がっていた。


 サクヤの案内で駆け抜けたエリアも、いつも通りだった。


「ここはどうやら、いつもとは様子が違うようだな」


「ワタクシを加えた今回は、これまでと違うオペレーションとなるため、カート兄様の能力に変化が見られても、なんら不思議はないとオリビエ母様が」


「その報告を、なぜ俺ではなくお前にしたのかは、帰ってから本人に問いつめるとして。それにしてもここは、まるでリアルな空間のようだな」


 進行した通路は宇宙船内部のようで、サクヤが傍にいなければ、イズライトの効果が途切れたと、勘違いをしていたかもしれない。


「戦闘になれば、お前は下がって隠れているんだぞ。あいつは流石に、これ以上待てる男ではないからな。速攻で片付ける」






 カートのイズライトは電脳空間を支配する事で、全システムを意のままにできるようになる能力である。


 一般のクラッキングと違うのは、一つ一つ確実にブロックを破っていかないとならないハッキングに対して、イズライトは一挙に制御系統を奪う事ができるチート能力である。


 たとえソアであっても、スピードでカートに勝つ事はできない。


 中央制御システムを抑えるまでは、一苦労はあるものの、大抵の装置は強力な防御プログラムを多くは設定していない。


 この船もブロック毎に補助回路は設置されているが、防御プログラムは中央制御回路に唯一つ。


「こいつがそうなのか?」


 カートの能力で出てくる防御プログラムは、ドラゴンタイプという、ゲームでも強力とされるキャラクターの形をしている。


 しかしカート睨みつけているのは、いつものゲームキャラクターとは異なっていた。


「ボールですわね」


「ボールだな」


 二人の前には3メートルほどの巨大なボール。


 サクヤの鑑定に間違いなければ、こいつを倒せば警備システムもフリーズさせられるはず。


 加えて中央制御装置までの障害もなくなるという事だ。


 これまで地竜に火竜、海竜を倒してきたが、機械仕掛けのボールとは、リアルでも戦った事がない。


「ブルーティクスのボールズそっくりだな」


「そうですわね」


『それはそうだ。奴らとは同じ出自。だからな』


「まぁ、言葉を?」


「キサマは何ものだ?」


『それを知りたければ。お前らが来た。ここの目的。果たせばいいだろう』


 確かにこの空間にいると言う事は、何ものであれ、今はデジタルデータの塊に過ぎない。


 やることは今までと何ら変わらない。


「まあいい。どのみちこちらに余裕はない。お前を倒さなければ、このミッションは失敗で終わる」


 カートは烏丸を抜き、ボールの出方を観察する。


 直刀一本で解体するとなると、弱点や急所がどこにあるのか、読まなくてはならない。


 生物の形をしていると言うだけで、情報は十分なのだが、ロボットでしかも球体で、カートがせめてブルーティクスのボールズと接触していれば、気付く事もあったかもしれないが。


『来ないのか? こちらから行ってもいいのか? 余裕を見せていていいのか?』


 この言葉の辿々しさは態となのか?


 リーノの報告書にあった、ブルーティクスのボールズと同型とは、どうにも思えない。


「……動かない? なら」


 爆薬を仕込んだ短剣を投げつける。


 電脳空間でのダメージの大きさは、大技を決めるか、プログラムの侵食率によっても変わる。


 ボールは短剣を左に転がり避けるが、その動きを読んだ2本目が命中。


『大したものだ。だが弱い。けど警戒する』


 爆発をもろに浴びても、ビクともしないボールが変化を見せる。


『本気を出すぞ』


 巨大なボールは人型を取り、反撃を開始した。

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