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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode16 「いつの間にか大所帯だな!」



 二人だけでの行動というのは、いったいいつ以来になるのだろうか?


 リーノが来るまでは当然だった、突入作戦の黄金パターン。


 対象拠点の外部端末に取り付き、カートがシステムのガードプログラムを排除し、簡単な設定をこちらに優位な物に変更する。


 内部に突入して、実力行使で中央制御室を乗っ取り、ラリーが端末を操作して、データを抜き取ってきた。


 端末操作の役割がリーノに代わりはしたが、カートの仕事は何も変わらない。


 ラリーとカートが一緒に行動する事もなくなり、リーノにどちらかが付いてやり、もう片方は単独で任務を果たす。


 ここ最近はリーノ1人に任せられる仕事も増えてきた。それこそ異例の団地行動があったりもしたが、ラリーとカートが2人で動く事はなかった。


 久しぶりだからと言って、パターンを変える事はない。


 潜入作戦ではあるが、今まで通りドン・ブックレット号の端末に接続し、カートはイズライトで電脳を乗っ取る。


 実はラリーに頼らずとも、データを吸い上げる能力もあるのだが、カートは機械音痴と言っていいほど、未だにデジタルに馴染む事ができないでいる。


 しかし今回は隠密性が重視される作戦だけに、中央制御室まで進むことはできない。


「どうだ、サクヤ」


『はい、カート兄様、端末接続と同時に、警報が鳴る設定となっているのは、間違いないようです』


 どんな開閉端末にもハッキング対策は、当然のように施されている。


「ちゃんと教えられた(組み込まれた)ことは理解しているようだな」


 AIの相手など、できるのかが心配だったが、今のところは何も問題ない。


「実践で使うのは初めてだ。おかしな事があれば、直ぐに遮断しろ」


『大丈夫ですカート兄様、サクヤは早く兄様と一つになりたいです』


「変な言い回しを仕込んだのはオリビエか?」


『そんな、仕込むだなんて……。ソア母様にご教授頂きましたのよ』


「そうか、作戦が完了したら話し合おう。サクヤ」


『はい』


 この作戦後、話し合いはしたが、カートがサクヤを変える事はできなかった。


「準備はいいか?」


『おう、周りに異常はねぇ。こっちは問題なしだ』


 カートは接続端子の付いたケーブルコードを握りしめ、イズライトを発動させると、電脳空間に潜り込むことができる。


 夜叉丸に専用コンソールを設置してからは、もっと精度の高いオペレーティングが可能となった。


 端子はモビールのアームを使って接続するが、今回はラリーが代わる。


『接続したぞ。念のために中で警戒する』


 ラリーには隠れていてもらう方がいいのだろうが、確かに隠密行動において、不測の事態に引っかかり、失敗なんてざらにある話だ。


「ああ、頼んだ。それではサクヤ」


 実験では成功しているが、まだどんな問題が起こるともしれない。


 それでも試験段階のプログラムを、実戦投入するのは、これ以上ない絶好のデータ収集の機会だからだ。


『お任せください。カート兄様に代わって、ワタクシが全システムを掌握してみせます』


 イズライトを直接対象端末内でではなく、一旦夜叉丸内で発動してから送り込む。


「いくぞ!」


『お供します』


 カートは電脳空間に意識を潜入させた。






 ドン・ブックレット号の中心よりも少し後方、エンジンブロックに近い辺りのロックが解除された。


 エアロックを潜り抜け、空気のあるエリアに入ってヘルメットを脱ぐ。


「さぁて、おやっさんの読みが、どこまで当たってるかが見物だな」


 ラリーは異変に気付き、手近な扉を開けて身を潜める。


「あれは?」


 ファイバースコープを通路に伸ばして、接続したウイスクに映し出されたのは、ゴロゴロ転がる割と大きめのボール。


「確か御曹司の所に、同じような物があるって、リーノの報告書に書かれていたな」


 人影はない。


 けれどここからは確認できなくとも、監視カメラはあちらこちらにあるだろう。


 しかしそれも待っていれば、頼れる相棒が、監視システムごと無力化してくれるだろう。


「うーん、……ぶっ壊すか」


 考えるラリーはちょうど、ボールが部屋の前を通りそうなのを見て決断する。


 愛銃ベイカーショットを抜き、出力を低めに設定。


 それは全くの直感のショットだった。


 おそらくは定期巡回をしていたのであろうボールは、部屋の前で動きを止めた。


「よし、流石は俺だな」


 ラリーは大胆にも通路に飛び出して、ボールを抱え上げようとする。


「クソ重てぇな、こいつ」


 動力源を撃ち抜かれて、完全に全機能を停止している、大きな合金の塊を持ち上げるのは一苦労。しかたなく蹴り飛ばして、部屋の中に転がし入れて、扉を閉めた。


「おっ、こいつただの球体じゃあないな」


 足蹴にしてコロコロ転がしていると、カチッという音がして、玉は球状を保てなくなった。


「ほぉ、人型になるってことは、間違いなさそうだな」


 どんな関連性でオレグマグナの自立型と、同型のロボットが稼働しているのかは分からないが、直感的にこれがアポースの狙いではないかと、ラリーは考えた。


「もしもカートがうまくやれなかった時の保険でここまで来たが、まだお呼びがかからないってことは、きっとAIともうまくいってるんだろうな」


 考える時間は、ともすればあったかもしれないが、ラリーの決断は早かった。


「待つってのもストレスの元だよな」


 行動を起こすなら、どうしても必要なことがある。


「おい、付いてきているな」


『はぁ~い、ホンの少し前からだけど、パパの居るすぐ壁の外だよぉ』


 夜叉丸の加速を手伝った後から、アークスバッカーはステルスモードで追跡を続け、ようやく横並びとなり速度を合わせた。


「俺のウイスクに、ドン・ブックレット号の船内データを、どこでもいいから、どっかから見つけてきて送れ」


『ちょっと待ってねぇ』


 ティンクのデータをベースにして、どう仕上げていけば、こうもバリエーション豊かに作れるのか?


 そしてサクヤのように落ち着いた性格ではなく、なぜこんなはしゃいだ子供のようにしたのか、ソアには後で聞く必要がある。


 などとつまらない事を考える暇もあったか、と言うほどの間を空けて、アースラは大声で報告する。


『……検索にヒットしました。ソアママのデータベースから拝借したよ』


「でかした。がその前に覚えておけよ。声は小さくだ! 特に仕事中にはな」


『えー、パパも大きいじゃん』


「俺は状況を、ちゃんと把握した上で、的確な判断をしているからいいんだ」


 送られてきたデータを映し出す。


「上出来だ。よくやったな」


『わーい、パパにほめられた』


「だから静かにしろ!」


 さてこれで向かうポイントは決まった。


「カートのやろう、怒るだろうな。いや、あいつがモタモタと時間を掛けているのが悪い。そう、俺は何も悪くない」


 銃を構えて走り出す。


 ワンブロック走ったところでまたもボールに遭遇。


 咄嗟の事で照準を合わせる事ができなかった。


 ラリーの攻撃はボールの姿勢制御回路に命中。蛇行しながら壁にぶつかり動かなくなる。


「こなくそ!」


 2発目で動力を撃ち抜いたが、勢いは殺せず壁に衝突。どうやら船内の衝撃関知センサーに引っかかったようで、ボールがウジャウジャと沸いて出てきた。


「警報装置は切られているようだが、カートの奴はいつまで防御プログラムと遊んでるつもりだ」


 ドン・ブックレットや他の乗員に気付かれる前に、このボールの山を片づけなくては。

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