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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode14 「ようやくおやっさんが動いたか!」



『ストップ、ストーップ!!』 


 警察機構軍から参加しているクーランゲル号から、クララリカ巡査のモビールが発進、ブレイブティクスとオーガンの間に割り込んだ。


『そこの……小さい方のロボット、えーっと、ヘンゼンブル=サンクペスさんの、デルゼルブス5228号乗員の……オンクラ=ボルゼンさん、ですよね?』


『だったらなんだ?』


『あなたの母船はリタイアしました。よって直ちに機体を停止してください。あなたのレースに関する、あらゆる行為が認められなくなりました』


『あのジジイ! 勝手な事をしやがって』


『それとそのロボット、古代異質文明の品である疑いがあります。銀河評議会許可のない物品である恐れがある為、調査に協力してください』


 突然の乱入、レーダーには警察機構の船が八隻、それとモビール40機が周囲を包囲していると、索敵担当のリリアが報告する。


「取り押さえってやつですかね」とリーノが呟き。


「そうだな」とラリーが答える。


「予定通り、一チーム脱落というわけだ」とカートがまとめた。


 モビールから降りて格納庫にいた3人は、コントロールルームに入って様子を窺う。


「それにしても、アステロイドに入らなかった奴さんらが、もう追いついてきたんだな」


「違うわよ。かなり遅れてだったけど、クーランゲル号も危険地帯を抜けてきたみたいね」


 キャプテンシートに着くラリーにソアが返す。


 狙いはギブン=ホグワープとその愛機オーガン。警察はブレイブティクスとベルトリカには目もくれない。


「特異遺失物管理法でしたっけ?」


「いくつかの条件を満たしてようやく、運用が許される代物だな。このベルトリカもその一つだ」


 ベルトリカ元リーダー、フランソア=グランテとクレマンテ=アポースが評議会に提案可決させた法律だ。ラリーはフランからよく自慢されていた。


『あっ、ちょっと待ちなさい!?』


「逃げられた」


 オーガンは高速移動タイプに形を変え、宇宙空間の彼方へと飛んでいった。


 クーランゲル号以外の警察の艦艇が跡を追う。


「クララから着艇の許可を求められてるけど」


「入れてやれ」


 ラリーの許可が下りたことを、リリアはクララに告げる。


 程なくクララのモビールが、ベルトリカの甲板に取り付き、解除されたエアロックから入ってくる。


「お疲れ様です。みなさん」


「はい、お疲れ。嬢ちゃんは元気有り余ってるみたいだな」


「それだけが取り柄みたいなものですから」


 その元気をラリーは削ぎにかかる。


「随分と先に行っていたはずのクーランゲルが、いきなり進路を変えて、接触してきたら怪しまれるだろ。今は事情聴取として接触していると言えるが、それをするのは、レース参加者のお前さんの仕事じゃあない。何か理由があるにしても、単独で隠れてやってこい。そうおやっさんに言われてなかったか?」


「うう、確かにラリーさんの仰るとおりです。警部補からの依頼書を持って行くように言われました。目立たないようにと……」


 クララとしてはクーランゲル号の順位修正に役立つと上申し、船長が採用したと言うのだが。


「その船長も大概だな」


 問題児の寄せ集めクーランゲル。の絵が思い浮かび、ラリーは深いため息を一気にはき出した。






 クララのモビールをオートでクーランゲル号に戻させて、ベルトリカはレースを再開する。


 4号艦と5号艦の修理が必要なブルーティクスは、ここで一時脱落となり、フォレスとも別れた。


「おやっさんはわざわざ紙の指示書を使って、どんだけの情報を持ってきてくれた、ってんだ」


 ラリーが開いた封書の中には、手書きの依頼書が。


 一通り目を通したところで、アンリッサとカートにも回して確認してもらう。


「どういう事でしょう。これはどこまで裏のとれた話なのでしょうか?」


「レース開催の、本当の理由と言ったところか」


 ラリーは書状を返してもらい、顔を顰める。


「おかしいだろう? どうやって評議会は、こいつらをまとめて参加させたんだ?」


「それ以前にどこからの情報で、どれだけの信憑性があるとして、今回のレース企画が、持ち上がったんでしょうね?」


「実際に真実が含まれている。今は疑うより、行動して確認するほかないだろう?」


 アンリッサの疑問も分かるが、カートの言うことも尤もだ。


「前向きに進むしかないか」


 ラリーは依頼書をコンソールの上に投げ出した。


「ねぇ」


「どうしたガキんちょ」


 3人の意見交換を黙って聞いていたソア、クララをコントロールから追い出すために、リーノとリリアがレクリエーションルームに連れて行ったので、居残りは八歳児のみ。


「そうなるとクーランゲル号も怪しくなってこない?」


「そうだな。おやっさんの書き方だと、どうとでも判断できるからな」


 アポースの依頼は、ドン・ブックレットと怪盗セレブの船にも接触して、その性能の確認をする事。


「それだけですか?」


 改めてアンリッサは依頼書に目を通す。


「評議会からの依頼は、間違いなくそれだけですね」


「それで警部補自身からはどうなんだ?」


 アンリッサもカートも、アポースという男をよく理解している。


 まさかこの程度の事を、ベルトリカに持ってくるはずがない。


「わざわざ紙の封書をよこしたんだ。あのおっさんの趣味に、もう少し付き合ってやろうぜ」


 封筒の中にあった用紙はたった一枚。


 依頼内容はものすごい小さな文字で書かれている。


 参加者の細かい分析データがほとんどだが、変わったところは特に見られない。


「こっちだよ」


 ラリーは封筒の方に視線を集め、愛用のナイフで解体して広げる。


「内側にも何も書かれていないようですね」


「ちげぇよアンリ、紙ってのはもっと便利に使えるんだぜ」


 ラリーは開いて一枚となった封筒を、さらに層をめくって二枚にし、テーブルの上に並べる。


「何も書いていないじゃあない」


「ガキんちょ、こういうのを知ってるか?」


「ペンライト? それをどうするのよ?」


「ブラックライトか?」


「カートは流石に知ってるか」


「ブラックライト? それでそれで?」


 聞き覚えのないアイテムに興味を示すソアと、後ろから黙って覗き込むアンリッサ。


「こいつで照らすと変化が出る」


「へぇ、ブラックっていうから何かと思ったら、紫外線じゃあない」


 浮かび上がった文字を読み、ラリーは目を閉じた。


「紫外線に反応するインクで書かれてるのね」


「ガテンでは子供のオモチャに、今も使われていたのでは?」


「ほぉ、アンリも知っていたんだな。紙は俺達諜報員も未だに使う事がある。このライトも単純だが有効だからな。デジタルデータより信用できる物だ」


 目を開けたラリーは、指示書をカートに渡した。


「この件はカート、お前に任せるよ」


「そう言うだろうと思ったさ」


「タイミングは言うから、準備だけはしておいてくれ」


「ああ」


 次にしておかなくてはならない事は。


「ガキんちょ、さっき言っていたクーランゲル号の話だが」


「オリビエのシャトルで行ってあげる。けど一つ条件を出していい?」


「なんだよ? 高いもん強請ったりとかはなしだぞ」


「そろそろ名前で呼んでよ。ラリーの事だから、リーノの事も新入りとか、若造とかって呼んでたんでしょ?」


 ソアは報酬代わりに、ちゃんと仲間として認めて欲しいと望んでいる。


 しかしそんな事を今さら望まなくても、当然ラリーはソアもリリアも、とっくに仲間として認めている。


 だがその証明となる、名前を呼んでほしい。いたって簡単な願いだった。


「……そうだな。考えておくよ」


「いえいえ、考えるまでもありません。問題ありませんよソア」


「おいこらアンリッサ、てめぇ!?」


 どんどん離れていくクーランゲル号に追いつくには、直ぐにでも出なくてはならない。


 クララがベルトリカに残って、自分はモビールで護衛に付く事に、不満を露わにするリリアと一悶着あったが。


「すまんが、これがベストの人選なんだ。オリビエとソアの事は頼んだぞ、リリア」


 ラリーの一言に驚くリリアがフリーズ、冷静さを取り戻す前に、3人はシャトルで飛び立った。

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