表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
73/144

Episode13 「どうにも、きな臭くなってきたな!」



 アステロイドを抜け出したベルトリカに並ぶ、デルゼルブス5228号。


 序盤と言えば、まだ序盤だが様子見はここまで、ベルトリカチームの三機のモビールは、巨大人型宇宙船の前に躍り出て、ブラストレイカーに合体する。


『ほほぉ、今度は本気で、相手をしてくれるようじゃな』


 ベルトリカも速度を落とし、デルゼルブスに照準を合わせる。


 先制攻撃はしない、完膚無きまで叩き潰すとしても、遺恨を残さないよう、ドクトルが出てくるまで様子を見る。


「ハッチ、開きましたよ」


『いったい何機のロボットが、乗っかってんだかな』


 呆れるラリー達の前に登場したのは、マッシブな寸胴ロボット。


『重武装型か』


 両肩と両足にあるミサイルポッド、背中のサブアームには何らかの発振器があり、他にも多数のビーム砲がある。


『こいつはお前の出番だなラリー』


 火器担当のラリー、操縦系統の一部も扱えるようになった。


『後ろのやつなら、目を瞑っていても当てられるだろうがな』


 照準を合わせた200メートルに、粒子加速砲を発射する。


『きさま! デルゼルブス5228を狙うんじゃあないわ!? 相手をするのはこのゲッペラーデ3335だと分かっておるだろう」


「すごい、粒子を分解した」


 合体した後は音声入力しか仕事らしい仕事のないリーノは、各種センサーのチェックも担当している。


『あの背中の円盤か! この反応は電磁バリアーか?』


「ラリーさん、俺の仕事……」


 センサーの端末は各コクピットに設置されている。


 ゲッペラーデ3335は母船(?)を護りきったバリアーを解除して、胸と腰と太股にあるビーム発振器で、波状攻撃を仕掛けてくる。


『嘗めてかかっているとやられるぞ』


 カートは敵の攻撃を読んで、ビームを躱しながら距離を詰める。


「早い!?」


 ブラストエッジで斬りかかるが、ゲッペラーデは下がりながら、肩と下腿の小型ミサイルも発射する。


『任せろ、全て切り刻む』


 ドクトルがカートの切込みを凌げば、ブラストレイカーはミサイルを爆発させることなく無力化する。


 地上ではずっと、パワータイプのロボットで暴れていたドクトル・ヘルだった。


 レース開始すぐに絡んできた機動力重視のロボットは、あっという間にカートに切り刻まれたが、あのデスバラック6628の動きは、機動力特化型のモビールに匹敵していた。


『それを上回るか』


『全身のスラスターの数の違いだな。カートの剣を避ける姿勢制御を、AIに仕込むとは恐れ入るな』


「どういう事ですか、ラリーさん」


『あんなでっかいロボットで、アステロイドを通り抜けるほどの、制御システムの実力がスゲーってことだ。まさかリーノ、ジイさんが操縦しているとでも思ってるのか?』


「いや、それはないっすよね」


 ブラストレイカーはミサイルを放出するが、ゲッペラーデはジャミングで暴発させてしまう。


 動きを止める両者。


「ラリーさん、もうこれ以上は」


『そうだな。これだけやれれば上出来だ』


 ラリーはリーノの提案を承諾した。


『アームボンバー!!』


 刀を収納するブラストレイカーの前に、割って入ってきたのは巨大な鉄拳。


「隊長!?」


 ブルーキャリーの甲板上に立つブレイブティクス。


 飛ばした左右の前腕がぶつかり、バリアーをパリンと割って戻っていく。


「なんでガラスみたいに割れたんですか?」


『プロのこだわりだな』


「どういうことですか? ラリーさん」


『深く考えるな』


 地上では飛ばしっぱなしだった鉄拳は、コントロールされて本体に戻っていき、再度合体。まさに隊長が再現したかったギミックが成功した瞬間だった。


『ブレストブラスター!!』


 胸の放熱板が赤く燃えて、熱光線が飛んでいく。


「正にアニメーションの再現!」


 ビーム発振器は、宇宙空間では焼き付きにくい。


 破壊力も地上の数倍に。


 重力波を使って、スラスターよりもスムーズな軌道をし、ブレストブラスターはゲッペラーデの下肢を奪った。


『おのれ、ミサイルに誘爆してしまったか』


 どうやらブレイブティクスは、宇宙空間で実力を発揮する、マシーンだったようだ。


『ぐふふふふふふ……』


 誰の目にも勝敗は明らかなのだが、ドクトルが声を震わせて笑いを堪えている。


『どうじゃ、小僧』


『ああ、申し分なさそうだな』


 デルゼルブス5228号の腹部ハッチが開き、新たなロボットが出てきた。


『あのでっかいの、古代文明の産物じゃあないだろうな?』


 ラリーはもうすでに、四次元にでも繋がっていそうな格納庫から、次に何が出てくるのかを期待し始めている。


『久しぶりだな。フォレックス=マグナ』


『ギブン=ホグワープ、お前がドクトルと組むとはな』


『組んじゃあいないぜ。ジイさんが俺に合うロボットをくれるって言うから、付いてきてやっただけだ』


 ギブン=ホグワープ、傭兵経験もある自称天才パイロット。


 自称でも天才を名乗るだけあって、侮れない相手である事は、フォレスが一番よく知っている。


『見ろ、それこそが我が最高傑作。ワシではその性能の半分も発揮できんが、そやつならキサマらを一纏めにして、血祭りにしてくれようぞ』


 ドクトル作というが、そのフォルムはブラストレイカーによく似ていて、全長も20メートル。


『あれ絶対ジジイの作ったもんじゃねぇだろ?』


 なにより目が二つあり、鼻の筋が通ってて、額に角が生えた頭部がある時点で、誰もドクトルが作製したとは思わない。


『くだらない話はどうでもいい。俺と戦えフォレックス』


『いいだろう。相手になるから、その前に』


 ブレイブティクスが右手人差し指を突き出し、ギブン搭乗のロボットの名を聞く。


『よくぞ、聞いてくれた我が最高傑作。その名はグラゴラオス……』


『オーガンだ。オーガン』


『キサマ、我が最高傑作に勝手に!』


『オーガンだな。よし、いくぞ!』


 ブレイブティクスとグラゴラオス9999改め、オーガンはブラストレイカーから離れていく。


「ラリーさん、ブラストレイカーの出力上げていいですか?」


『そうだな、これ以上は付き合ってられんし、さっさとジイさんを片づけるか』


 全力のバスターキャノンで、半壊したゲッペラーデ3335と、デルゼルブス5228号を大破させた。


「ドクトルは無事に脱出しました」


『よし、なら御曹司と、あの怪しげなロボットの勝負を見物しにいくぞ』


「ラリーさん、趣味悪いですよ」


『バーカ、お前もよく見とけよ。習う事は多いからな』


 笑顔で説得力のないラリーは、ブラストレイカーを分離させた。






 モビールを回収したベルトリカが、ブレイブティクスを見つけた時には、ブルーバトルシップとブルーキャリーは、戦闘ができる状態ではなかった。


「何があったんだ?」


 ラリーは沈黙する戦隊の、無人モビール部隊の向こうに光を見つけ、モニターを望遠カメラに切り替える。


「大丈夫ですか? レイラさん、バックスさん」


『はい、船体自体は問題ありません。ですが戦闘は無理ですね。今は修復のためのチェック中です』


 ドクトルを黙らせるのに、さほど時間はかけていない。


 その瞬間に無敵を誇る戦艦と空母、その艦載機を行動不能にした実力。


「あのオーガンっての、古代文明の遺産のようだな。どうだ、ガキんちょ」


「でしょうね。まったくなんなの、このレース」


 大々的に執り行われている催しではあるが、伝説級の古代兵器がゴロゴロと参加しているなんて、どう考えてもおかしい。


「ブラストレイカーを出すか?」


 カートの言葉に、クルー達は一斉に、チームリーダーへ顔を向けた。


『ストップ、ストーップです』


「クーランゲル号! クララか?」


 リーノは後ろから接近する警察機構軍の船に、慌てて進路を譲った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ