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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode09 「退屈な時間の多い仕事だな!」



「ミリシャ、てめぇ!」


『ワタクシは効率を優先したまでです。こちらもコースを逸れるという、大きなロスをさせられたのです。場を荒らさなかっただけ、感謝してほしいくらいですわ』


 ミリーシャの方針も序盤は様子見だった。


 長丁場なのだから、それが当然の判断と言える。


 全チームがそうするだろうとみていたが、ドクトル・ヘルのように、最初のうちにライバルを排除しようするチームは他にもあった。


 怪盗セレブ号がドン・ブックレット号を強襲し、怪盗も無傷では済まなかったが、マフィアの船は航行が難しいほどの大ダメージを受けて、メンテナンスドッグに入っている。


 移動式ドッグではあるが、メンテナンス中は停止する。


「ドンはここで一時離脱か。それで順位はどうなったんだ」


 ミリーシャが機嫌が悪いのは、ベルトリカに抜かされたのもある。


「トップはドンに深手を負わせた怪盗セレブ……」


「じゃあないわよ」


 リーノが順位を読み上げようとするのを、ソアが止めた。


「ついさっきトップが変わったわ」


 グラップレイダー号が、ダメージを受けたセレブ号を抜き去ってトップに。


「おいおい、もしかしてうちが3位かよ」


 ラリーは頭を抱えた。


 アポースからのどんな司令がくるか、分からないだけに、真ん中より少し後ろあたりの順位にいようと考えていたのを、修正するのが困難な位置にきてしまっている。


 因みにデルゼルブス5228号は、メンテナンスドッグを呼んでいないという話だ。おそらくは自分で修理しているのだろう。


「俺達の後ろがミリシャで、その後にクララの嬢ちゃん、そんでオレグマグナのボンボンか。ドンと変人工学者がどこで戻ってくるかにもよるけど」


 どうにかして自然に順位を下げる。けれどそれはかなり難しい。ラリーはしばらく押し黙って考え込む。


「よし、おやっさんの我が儘は、嬢ちゃんに処理してもらおう」


 難しい事を考えないのが、ラリーのポリシーだ。


「面倒がっているな」


「うっせぇ! なんならお前が指示を出すか、カート?」


「チームリーダーはお前だ、決定には従う。しかしお前が俺をサブとして認めているというなら、意見はさせてもらう。なるべく早くクーランゲル号との距離を修正すべきだ」


 警察チームとの距離を縮めるとなると、不自然な減速が必要となる。


「だったら後ろから追いかけるようにした方が、楽なんじゃあない?」


 まだまだ序盤なのだから、少し無理をして連続加速をしても、怪しまれる事はない。


「となるとセレブより、トップの連中とやり合うか?」


 真摯の夜明けをターゲットにすることをラリーは選択する。


「ソア、どういう事なの? 後ろに下がるために、他のチームにちょっかい出す。っていうのは分かるんだけど、なんでセレブ号じゃあ駄目なんだ?」


 目と鼻の先にいる怪盗ではなく、かなり距離のある先頭まで行く理由が想像つかない。


「理由は二つだ」


 直ぐにラリーの考えを理解した、カートが説明してくれる。


「なるほど、確かにトップから最後尾までの距離が広がりすぎたら、対応しきれませんものね」


 わざとダメージを受けたフリをすると同時に、トップを後退させる。それが一つ目。


「それじゃあ、もう一つは?」


「それこそ簡単よリーノ」


「えっ、リリアには分かってるの?」


「だって傷ついたセレブ号に、停止させられるほどのダメージをもらうなんて、それこそ不自然な話じゃない。このベルトリカは英雄の船よ」


「まぁ、そう言うこったな。ちびスケの答えは半分正解だ」


「半分?」


「俺達がちょっかいをだしたら、セレブ号をぶっ壊しかねない。あの程度のダメージだとメンテナンスドッグは呼べないようだし、自力で直すとなると、それなりに時間がかかるだろうから、放っておいても飛び抜ける心配がない」


 ベルトリカが手を下すまでもなく、怪盗は順位を落とすだろう。


「ガキんちょ、セレブ号のダメージの具合は探れるか?」


「いい加減にガキんちょやめなさいよ。もうとっくにティンクに保存してもらってるわよ」


 リーノがようやく話の流れを理解したところで、ベルトリカの指針も決定する。


 ティンクはメインエンジンを使わない最高速で、グラップレイダー号を追う。


『向こうが今の速度を維持するなら、38時間後に追いつくよぉ』


 相手は発掘船を名乗っているだけあってか、普通なら長丁場では考えられない速度を維持している。


「面倒だな。メインエンジンに火を入れたら、半日くらいで追いつけるだろうに」


『燃料補給ポイントまで保たないよ』


「俺達はトップの奴らとやり合った後、メンテナンスドッグのお世話になるんだ。ここで無駄遣いしても問題ないだろう?」


 追いつくまで暇だとしても、作戦中では飲酒は許されない。


 ラリーはティンクに再計算を要求するが。


『ボクの仕事を増やさないでよ』


 メンテナンス担当のオリビエが、ラリーのウイスクに抗議をしてきた。


 メンテナンスドッグに入っても、評議会の職員にベルトリカを任せるつもりはない。


 外装の修理は受けてもいいが、機関部や武装までは診せるわけにいかない。


 全力でエンジンを半日も回せば、オーバーホールは免れないほどのダメージを受けるだろう。


 順位の調整が目的なのだから、修理に時間をかけすぎる事もできない。


「分かった分かった。奴らに追いつくまではお前らに任せた」


 とは言え、空いた時間をどう過ごすかなのだけれど。


「しゃーねぇな」


 普段あまり使わないトレーニングルームで、ラリーは交代までの時間つぶしをする事にした。






「あれ、珍しいですね?」


 トレーニングルームでは、リーノがリリア相手に訓練をしていた。


 リーノは空き時間があると、ここでシミュレーター相手に戦闘訓練を行っているが、今までラリーがこの部屋にくるのを見た事がない。


「今日はリリア相手に模擬戦か」


 銃撃を得意とするリーノは、新人テイカーとしては申し分ない成果をあげている。


 けれどこれからの成長を考えれば、近接戦闘のスキルは必須条件。


 ソアの戦闘プログラムが組み込まれた、リリアロボと闘うのは間違いなく為になる。


「ちょうどいい、俺が遊んでやるよ」


「ラリーさんと、本当ですか!?」


 リリア相手に汗だくのリーノだが、このチャンスを逃すことはできない。


 果敢に挑むリーノだが、チャンスを活かす事はできなかった。


「そ、そんな……、手も足も出ない、なんて」


 仰向けになり息を整えるのがやっとのリーノは、自分の不甲斐なさに落胆する。


「普段は飲んだくれていても、さすがは銀河の英雄ですね」


「お前、もっかい泣かせてやろうか?」


「ラリーは普段から訓練を欠かさない努力家だぞ」


「あっ、カートてめ、いつの間にか入って来やがって、余計なこと言ってんじゃあねぇぞ」


 チームリーダーのラリーは依頼達成が早く、いつも一番最初に戻ってくる。


 不慣れなリーノが戻ってくる前にトレーニングを終えて、汗を流すと直ぐ飲み始めるから、新人が白鳥の足下を知らないのは仕方がない。


「……あのぉ」


「なんだよ?」


「お二人って素手で戦ったら、どちらがお強いんですか?」


 普段から拳で戦うラリーと、超人的な体術を使うカートが戦えばどちらが勝つのか、非常に興味深いのだけれども。


「そう言えば模擬戦をしなくなったのは、いつ頃だったかな」


「フランがいなくなってからだから、かなり前の話になるな」


「そうか……。カート、いっちょ後輩のために模擬試合を見せてやろうぜ」


「珍しく熱くなっているな」


「うっせ、ただ退屈なだけだよ」


 胸が熱くたぎる思いを鼻で笑われ、やる気をみなぎらせるラリーに、カートも無言で構える事で答える。


 リーノは部屋の隅に立って固唾をのむ。


「リーノ、大丈夫?」


「大丈夫だよリリア、それより目を凝らして二人を見るんだ」


 リーノは無策で突っ込んでいったところを、カウンター一発で沈められた。


 それでも根性で立ち上がったリーノだったが、後はもうサンドバック状態。


 リリアロボとはいい線いってただけに、それなりにショックだった。


 二人の戦いを見れば、自分の何が悪かったのか、少しは分かるかもしれない。


「なんかすごい重い空気だもんね。瞬きも禁止だねリーノ」


 リーノの肩にリリアが腰を下ろし、妖精族の少女はゴングを鳴らした。

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