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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode08 「非常識なじじいは質が悪いよな!」



 全長200メートルの宇宙船は向きを変え、全高200メートルの人型になった。


『ワシは宇宙船なんて造れやせん!』


「あのジジイはなにを自慢げに言ってんだ?」


 人型超巨大ロボットの足に、無理矢理タキオンエンジンを取り付けて、背中に砲塔を取り付けただけ。確かに宇宙船ではない。


「ははっ、とにかく拘り派の元気なご老人なんで、フォレス隊長もあの人を、高齢者扱いしてませんからね」


 リーノはラリーの知り合いの年配者と、さほど変わらないとも思うのだが、口にするとややこしくなりそうなので、ドクトルの印象はサラッと流した。


『さあ、出てこいブラストレイカー! 最強のロボットの座を懸けて戦え』


「とか言ってるぞ、リーノ」


「他人事みたいに言わんでくださいラリーさん!」


 それにしても非常識な大きさだ。


「相手になるなら、合体せずにやるべきだろうな」


 カートの言うとおり、戦闘の主流は小型のモビールである。


 それを人型に限って付き合ってやる義理はない。


 それに合体巨兵ブラストレイカーの全高はたかが15メートル。


 ノインクラッドで催される、ロボットバトルでも30メートルが通常。


 宇宙空間だからとは言え、200メートルロボットとバトルなんて非常識が過ぎる。


「あんなの相手にしてないで速度を上げろ。ミリシャを追い抜け!」


 とチームリーダーに言われても、ベルトリカに手を貸す気がなく、あっさりと置いて行かれたキャンショット・キャリバー号の姿は影も形もない。


『ま、待たんか!? ワシと戦えと言うておろうが!』


 頭の向きを変えて、全力で追ってくるデルゼルブス5228号。


『待てと言ってるのだ』


『じいさん、あんたの狙いはブルーティクスじゃあないのかよ!?』


『この銀河で名前を売るなら、地方のヒーロー気取りより、銀河の英雄の方が手っ取り早いわい』


 それもただ名前を売る事が目的。ではない。


 ロボット工学者として、銀河一と呼ばれたい。


 この銀河でロボット工学者の名を開発者に聞いて、個人名が上げられるのはソアラ=ブロンクスただ1人。


『ロボット工学者が巨大ロボットを作らないだけで、あの小娘だけが名を馳せるのがおかしいんじゃ』


 巨大ロボットなどと言う生産性のない分野で、名を売ろうというエンジニアは今の時代にはいない。


『ここで古代遺産の超兵器を倒せば、ワシの名は銀河に轟くのじゃあ!!』


「どうするんですか? 相手をしないといつまでも付いて来ちゃいますよ」


 コースを外れて回避したミリーシャに、もう押しつける事はできそうにない。


「しょうがねぇな。カート、いいか?」


「俺は最初から面倒がってはいないぞ」


 いやな部分はリーノがするのだから、人型を動かすくらいは言われるまでもないカートは、さっさと1人で格納庫へ向かう。


リーノも舵をソアに託してカートの後を追う。


『ようやっとやる気になったか』


 減速するベルトリカに追いつき、巨大ロボは正面を向く。


「ラリー、どうしましたか?」


 アンリッサが動こうとしないラリーに鋭い視線を向ける。


「はぁ……、しゃーねぇな」


 先に行った2人は格納庫で愛機の最終調整をしている。


「オリビエ、調節は必要か?」


『いつも通りだよ。けどいつも言ってるけど、自分でも確認してよ』


「いらねぇよ。俺よりも俺を理解してくれている、お前の調整が済んでるんだからよ」


 モニター越しのオリビエが、赤らめた顔を逸らしたことに気づきもせず、ラリーはいち早く発進した。


『はぁあ、二人はどう?』


「はい、問題ないですミラージュさん。それじゃあいきます」


 最後に残ったカートも、間隔を開けずに発進準備が整う。


「オリビエ……」


『大丈夫だから、行って』


 3機のモビールが真空の宇宙へ飛び出し、先ずは相手を観察するために、超巨大ロボットの周囲を飛び回る。


『えーい、ちょこまかするでない。待っててやるから早く合体せい!』


 巨大ではあるが、目立った武装は背中の砲塔くらい、ラリーは内蔵兵器に注意が必要だろうと判断し、戦闘プログラムを中距離用にセットする。


『俺は近接戦闘でもかまわんぞ』


『いいや、今回は俺が暴れさせてもらうぜ』


 やる気のなかったラリーに、突然スイッチが入ったところで。


『ブラストアップ』


 確かに変形プロセスに入ってもドクトルは動かない。


『レッツ、レイカーオン!』


 アークスバッカーは機首を90度追って、機体中央から頭部を出す。


 夜叉丸は3機の中では、一番複雑な変形で腕部と腹部になり、胸部と頭部を形成するアークスバッカーとドッキングする。


 シュピナーグは足を伸ばし、機首は180度回転。更に半回転して背中にコクピットがくる。


「本当に手を出してこなかったですね」


 シュピナーグの粒子加速砲を手に持てば変形は完了。


『合体巨兵ブラストレイカー!!』


 デルゼルブス5228号から、少しの距離を開けて見得を切る。


『よし、それではこいつでお主達の相手をしてやろう』


 巨大ロボの腹部隔壁が開き、中から15メートル級の軽量タイプのロボットが登場した。


『これがワシの最高傑作の一つ、デスバラック6628じゃあ!?』


『なんだよそれぇ!?』


 ラリーとリーノの声がリンクする。


 200メートルの人型ロボットがどんな動きをするのか、内心緊張のあったラリーと、期待で胸一杯のリーノを裏切って登場した細身のロボットは、見るからに火力が弱く、機動力特化型であるよう。


『ラリー、こいつは俺の本分だな』


『ああ、なんか一気に冷めたから、後は頼むわ』


 無駄な距離を取ってしまったので、粒子砲をシュピナーグからのエネルギー供給だけでぶっ放す。


 発射と同時に距離を詰めて、手に取ったブラストエッジでデスバラック6628に斬りかかる。


『ほぉ、こいつも剣を得意とするのか?』


 近接戦闘に突入する両者。


 武器を使わないのであれば、飛び道具担当のラリーと、音声入力担当のリーノに仕事はない。


 一部仕様変更したブラストレイカーは、よりチームにあった役割分担がされていた。


「はぁ、なんでここまで調整できるのに、パイロット登録だけ変更できないんでしょうね」


『俺が知るか。とにかくちょっとでもチャンスがあればぶっ放すから、お前も集中しろ』


「本当になんで音声入力システムも解除できないんでしょうね」


 機体の操作と出力調整を簡素化してもらったお陰で、体の動きもブースターやスラスターの操作も、一人でできるようになったカートは、まるで自分の体のようにブラストレイカーを操れる。


 しかし自分の体のようにと言っても、大型兵器が人間のように動けるはずはなく、人が巨兵に合わせて動くしかないのだが、そう言った煩わしさを除いても、格闘戦術でカートが瞬殺できないなんて思っていなかった。


「あいつ、早いですね」


 手空きのリーノは索敵を担当し、敵の動きをトレースして夜叉丸にデータを送り続ける。


 索敵データのお陰で視界が拡がり、死角がない感覚なのに、それでも捉えきれない敵の動きは異常なほど早い。


『って、もう1機いるじゃあねぇか!?』


 外を肉眼で警戒していたラリーが見つける。


「こちらには1機しか索敵に引っかかりません。完全なステルス機能が作動している模様」


 索敵をしていた事が仇になり、相手の好きなようにさせてしまった。


『問題ない。ブラストレイカーよ、少しだけ俺の動きに合わせてもらうぞ』


 カートの操作に従うブラストレイカーは、ロボットの動きを一瞬だけ超越し、2機を同時に切り刻んだ。


『なんだとぉ、ワシの最高傑作デスバラック6628とデスバラック6629が倒されてしまっただとぉ!?』


 ドクトルは特大ロボにいるようだ。


『くそぉ、こうなったら次は……』


『おいおい、まだ何か出す気だぞ!? リーノ、分離だ分離、さっさとずらかるぞ』


『まっ、待て待て待て待て、待たんかぁ!』


 最初に粒子加速砲でデカ物の足下を狙い、見事命中させていたラリー。


 敵は推力を失っている。


 これ以上無駄に付き合ってはいられない。


 モビールを収容したベルトリカは、最大加速でその場を離れていった。

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