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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode07 「退屈なんだよ、なんとかしろ!」



 スタートから5時間が経過した。


 今のところ他のチームに目立った動きはない。


 操舵桿を預かるリーノ、索敵担当のリリア、そして機関を調整しているカート達は、忙しそうに手を動かしている。


 火器担当のラリーだけが、ただただ退屈をしていた。


 この船のキャプテンである以上、航行中はこの場を離れて酒を飲む。なんて事もできず、欠伸ばかりを連発している。


「リーノ、そろそろ時間」


 ソアに入れ替わってもらい、リーノが退席する。


 操舵は念のために二人一組になって、三時間毎に交代をしている。


 動力の調整はカートの担当だが、非常時でなければ、ティンクに任せられる。


 索敵も通常航行中なら、こちらもティンクにお任せとあって、クルーは羽を伸ばして長旅に備えている。


 ラリーを除いて。


『ごめんねぇ、そうだよね~』


 “ギャラクシーレース”参加申し込みの際に、副長を設定していなかった為に、ラリーは航行中はコントロールルームを離れられないのだ。


『機嫌直しなよ、アンリが申請変更手続きを済ませてくれたんだからさ』


「はん、それくらい当然だろ」


 ふてくされる最年長者は、アルコール切れでイライラも膨れ上がっていた。


『あははははは……あっ、ラリーお待たせ』

「なにをだよ」


『ランベルト号が来てくれたよ』


「ランベルト? キャリバー海賊団が何しに来たんだよ」


『やっぱり不機嫌になってますね』


「アンリ? お前何でランベルトにいんだよ」


 いつも説教臭いしかめっ面が顔を出した途端、腰を浅くして足をコンソールに投げ出し、両手を組んで目を瞑る。


『こらっ、ラリー!? 足を乗っけるなぁ! バカなの? バカなんじゃあないの!?』


 ティンクの心の叫びはアンリッサが引き継ぐ。


『なるほど、では私はこのままノインクラッドに戻らせてもらいましょう。最後までキャプテンシートは任せましたよ。ラリー』


「ああ、くそ! 悪かったよ。早くこっち来てくれ」


 話の流れが読めたラリーはコンソールを叩いて立ち上がり、モニターに右人差し指を突きつけた。


『だから大事にしろー』


 ベルトリカの推力は通常の運搬船の実に13倍。


 この速度に追いつくには、ランベルト号に協力してもらうしかない


「よう旦那、お届けもんだぜ」


「おう、パメラ久し振りだな」


「そんなに久し振りって言うほどじゃあないよ、旦那」


 相対速度を合わせるランベルト号の突入艇は、ベルトリカの上部甲板に飛び移り、エアロックから入ってきたギャレット海賊団突撃隊隊長のパメラ=ビオフェルマ。


「お届けもんだぜ」


 パメラの後ろにいたのはベルトリカチームの金庫番。


「私は荷物ではありませんよ」


「そんじゃあな、がんばってくれよ旦那。勝つのはうちのキャプテンだけどよ」


 パメラはギャラクシーレース執行部のスタッフと共に、ランベルト号に戻っていく。


「へぇ、あの無愛想な兄ちゃん、そうだったのか」


「ええ、公正委員ですよ。あなたの為人ひととなりも見られていたと思います。今回の登録変更は問題なしと言ってました」


 ラリーのよく言えば飾らないいつもの言動で、相手の心象を悪くすることを懸念していたアンリッサだったが、流石にそれは考え過ぎだったようだ。


「新人も育ってきているのですから、今度からちゃんとチームリーダーらしく、書類にもちゃんと目を通すようにしてくださいよ」


「なに言ってる。お前がちゃんと最終チェックをしてれば、こんな事になってなかったんだろ」


「もう、忘れたんですか?」


 顔を見たら文句でもと、ラリーはタイミングを計っていたようだけど、これは完全な薮蛇。


「あなたはリーノに書かせた書類の確認もせずに、ティンクのチェックも受けずに、勝手に評議会にデータを送信してしまったのですよ」


「そう、だっけか?」


「せめて送信作業をティンクがしてくれていれば、私が止めることができたんですけどね」


 データを送るだけならティンクでなくても、たまたまそこにいたオリビエでも大丈夫だろうと、中身がなにかも知らせずに頼んだのが悪かった。


「もういいだろ。問題は解決したんだ。俺は休憩を取るぞ。5時間取るぞ」


「うるさいわね。長々となに騒いでるのよ」


 操舵を受け持っていたソアが、ヘッドフォンを外してラリーを睨む。


「ティンクも気を遣うことないでしょ。この人ずっと高いびきで寝てただけなんだから」


「てめ、ソア」


 AIがリーダーを立ててくれているのに、空気を読まない8歳児の告げ口に大の男が声を荒げる。


「ああ、いいですよ。全部分かってますから、ほらほらラリーも早く休んでください。2時間ですよ」


 こうしてベルトリカチームは全員集合を果たしたのだ。






 アンリッサが合流して40分。


 アポース警部補からの指示で、航行速度まで指定されて、序盤は他のチームとの接触をなるべく避けろと言われている。


「どうしますか? ラリーさん」


「スピードアップだな。前はミリシャだ。それならおやっさんも文句言わねぇだろ」


 リーノは命令を実行して加速は最低限に、後ろから追ってくるヘンゼンブル=サンクペスこと、ドクトル・ヘルの宇宙船と速度を合わせる。


「やつは御曹司を狙って、速度を落とすと読んでたんだがな」


「いや、ああ言うやつは、名を売るのが最優先であったりするもんだぞ」


 カートの読みは正しい。


 今回の参加チームで、一番名前が売れているのはダントツでベルトリカ。


「狙われてるってか?」


 このレースは死者を出さなければ、どんな妨害をしてもいいと言うルールがある。


 とは言ってもかなりの長丁場は走破だけでも大変。ライバルを蹴落としたからと言って、ゴールできなければ意味がない。


「まさか仕掛けてはこんだろうな」


「どうしますか? もう少しスピード上げたら、逃げられなくはないと思いますけど」


「それでミリシャに押しつけるってか」


「そんなことは言ってないでしょう」


 慌てるリーノを見てラリーは楽しそうに笑っている。


「いっそのことキャリバーの船と合流するか」


「キャプテンからも攻撃されて挟み撃ちになっちゃったりして」


 ラリーの決断を聞いて笑うリリア。


「そんなフラグが立つような事は言わないでくれ」


 リーノの予感は的中する。


『やっとその気になったようですわね。ラリー様』


 先制の精神攻撃。


 キャンショット・キャリバー号の船長、ミリーシャ=キャリバーはフィッツキャリバーの金髪お嬢様スタイルで、真っ赤なドレスが過酷なレースに似つかわしくはない。


 後ろに控えるノエルもいつものスーツ姿でなく、淡いブルーのドレス姿だ。


「お前、ずっと今回その恰好で?」


『ええ、そうですわよ。今回はフィッツキャリバーの最新鋭クルーザーの宣伝が目的ですもの。当然1位をいただきますわよ』


「あれ、誰?」


 商魂逞しいと感心するラリーに、明らかに不機嫌顔をしているミリーシャの姿をモニターしながらリリアが問う。


「ああ、キャプテンだよ。キャプテン・ミリー」


「あれが?」


「リリアはあの姿のキャプテンに会ったこと無かったっけ」


 ミリーシャの実家に言ったのはリーノとクララだった。


 旧知の仲であるラリーとカートはもちろん、ティンクやオリビエだって知っている。


 ソアは当然社交界で顔を合わすこともある。


「ぶー、私だけ仲間外れじゃん」


「たまたまだよ。たまたま」


「けど確かに顔はキャプテンだけど、どう見たって別人だよ。妹さんじゃあないの?」


 誰もが抱くであろう疑問については、リーノが後ほどゆっくりと話してやるのだった。


『勝負ですわよ。なんならこれから直接対決をいたしますか?』


「すまんがややこしい問題を抱えているから却下だ。協力しろミリシャ。そいつが片付いたら相手になるからよ」


 他チームとの共闘もルール上問題なし。


『……話を聞こうじゃない』


 退屈でしかたなかったミリーも、急に楽しくなってきた。


 ラリーはチームメイトとミリーシャ、ノエルを加えて、簡単な作戦会議を始めた。

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