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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion03 青の章
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Episode01 「がんばって学んでこい!」



 無人戦隊ジャッジメントオール・ブルーティクス


 万能戦艦ブルーティクスは上部は空母、下部は戦艦という異形の船。


 搭載するのは無人モビール部隊、数は20。


 その全てに高性能AIが使用されていて、戦闘データは熟練のコスモ・テイカーにも引けを取らない経験値を誇る。


 これらを駆るのは名うてのテイカー、フォレックス=マグナただ一人。


 戦隊と呼ばれながら、オンリーロンリーな孤高のヒーロー。


 キリングパズールにある大企業、オレグマグナカンパニーの若き総帥でもあるフォレスが客人を招き入れる。


「へぇ、ブルーティクスって5隻の船が合体してできてるんですね」


 格納庫からは合体状態で発進し、先ずは空母と戦艦が分裂する。


 戦艦は中核となる大型艦から2隻の中型艦が分裂し、空母の艦橋は小型艦となっている。


「全部ボクの趣味で造ってもらった自慢の船さ」


 今回もリーノがオリビエに代わって持ってきたグラビティーカノンを見て、更に理想に近付けたと興奮している。


「大企業の社長さんなのに、トップ・テイカーと呼ばれるなんて、すごい二足のわらじじゃあないですか。本当に大丈夫なんですか?」


「大丈夫だよ。会社の方は有能な秘書がボクの指示をキチンと活かしてくれているからね」


 それは素人目にも心配以外の何ものでもない。


「なんて嘘嘘、ボクも昼間は社畜さ。テイカーの仕事ができるのは、定時から就寝までの少しの時間だけさ」


 活動のほとんどはキリングパズールでとなり、大抵が警察に協力して、クリミナルファイターを捕まえるのを手伝っている程度の活動。


 そんな軽い感じで最上級テイカーと呼ばれるまでに、登り詰められるものなのだろうか?


「そんなに忙しいのに、俺なんかが来ていいんですか?」


「もちろんだ。ボクも君に興味津々だからね。押しも押されぬ人気のベルトリカチームの新人テイカー。いま最も伝説に近い男なのだから」


 リーノは納品の後、ここでしばらくテイカー研修を受けることになっている。


「納品完了と言うことでいいんですよね?」


 制作者のオリビエも来ていない。「ちゃんと注文通りに作ったのに、ボクが行ってなにするの?」と言われたけど、リーノには不安しかない。


「よかったんですか?」


「うん、問題ないよ。いままで付けていた圧縮粒子砲と付け換えるだけで、すぐにでも使えるらしいし、懇切丁寧に仕様書も入れてくれていたし、本当にいい仕事をしてくれたよ」


 それにしても大企業のトップとは思えないほどに気さくに接してくれる。


 本人たっての希望でフォレスと呼ぶことになり、代わりに自分もリーノと呼ばれることになった。


 けれどリーノは本当に、フォレスの言葉に甘えていいものだろうか?


 悩むところでもある。


「どうかしたかい、リーノ君?」


「あ、いえいえなんでもないです。フォレスさん」


 このあと無人戦隊の秘密基地の中を案内してもらううちに、打ち解けあい自然と愛称で呼び合えるようになった。






 フォレスが会社員をする日中に、出動要請が全く来ないかと言えばそうではない。


 むしろ悪党は陽の高い頃に悪さをする。


 オレグマグナの広告塔であるジャッジメントオールの活動。


 要請を最優先として、仕事を止めてまでして出動する為に、フォレスは緊急出動装置に力を入れた、趣味を100%実現させた秘密基地を、大枚を叩いて完成させた。


「30メートルの巨大ロボ同士の決戦かぁ」


「すごいだろ」


 この都市には、巨大ロボットを持っている悪党がいる。


 オレグマグナのお膝元、トキオーガ・シティーの中心にある大きな公園が、巨人の決戦場になることが多い。


「カンパニーからはそこそこ離れてますよね」


「周囲に迷惑をかけるわけにはいかないからね」


 連携する警察の誘導のお陰で被害を最小限に抑えている。


「基地の場所を誤魔化す為に、ここから3カ所ある発進口で海に出るんだよ」


「海まで行って現場にとなると、結構な遠回りですよね」


「必要なことさ。それに拘りなんだよね。子供の頃から今も観てる、スーパーなんて言われる巨大ロボットが活躍する、大昔のアニメーションに憧れて、夢を実現したってところかな」


「へぇ、お金持ちってすごいですね」


「そうだね。お金持ちになれたって事が、夢の第一歩だったよね」


 非公表なのだがフォレックス=マグナは、オレグマグナカンパニーの創始者、ラグレオ=マグナの血族ではない。


 パスパード出身のフォレスは物心ついた頃に、目の前で両親を殺害され、自らも毒牙にかかる直前にコスモ・テイカーに助けられた経験がある。


 犯罪者の標的は成長著しい造船会社を後継者に託して、一線を退いたばかりの当時会長であったラグレオ。


 退陣しても尚、会社に貢献しようとパスパードを視察していたラグレオ。


 その視察中に賊からの襲撃を受け、賊は同行したテイカーが処理してくれたが、仲間が取り押さえられていく中、一人が逃走に成功した。


 現地の警察も加わり捜索した結果、安全圏への脱出を前に犯人を発見する。


 尚も悪足掻きをするファイターは、捕まる寸前に出会した一般市民の親子を盾にしようと、若い夫婦を殺して子供を人質にするが失敗した。


「昔の名前は覚えてないんだ。グレーリオ、前社長の養子になってボクはマグナになったんだよ」


「どうしてその事を俺に?」


「非公表ってなってるけど、みんな知ってるからね。義祖父は後々のトラブルを避ける為に、ボクの事を関係各所に説明して回ってたから」


 その上で義弟と共に帝王学を学ばせ、2人は切磋琢磨を重ねた。


「5年前に空席になった社長職を埋める候補者は4人いたんだけどさ」


 ラグレオは何事にも前向きで、努力を惜しまないフォレスを押した。


「それに候補者の一人だった義弟おとうとも賛同してね。あいつはそれまでもボクの補佐をしてくれていたんだけどね」


 企業経営者として能力が抜きん出ていたのは明白、役員会も全会一致でフォレス着任を承認した。


 フォレスが自分の立場を弁えて、その後も品行方正に努めたので、問題が浮上することなく、何か反発があっても最低限で鎮火することができている。


「話を戻すよ。そうして多くの利権を手に入れたボクは、更なる向上の為に大きな広告塔を造った」


「はあ……、それがブルーティクスですか」


 リーノは初めて間近にする万能戦艦を見上げ、大きな溜め息を吐いた。


「ああ、何となくどんな風に分離するのか見えてきますね」


 ティックス1、ブルーコマンダー。

 ティックス2、ブルーアタッカー。

 ティックス3、ブルーデストロイヤー。

 ティックス4、ブルーバトルシップ。

 ティックス5、ブルーキャリー。


「しかもその内の3隻が変形合体するんですよね」


 巨人の名はブレイブティクス。フォレスの手足として大活躍を続けている。


「ティックス1~3までの3艦だけでも飛び出せるように、小さめに作った発進口もあるけど、大抵は戦闘母艦のままで出撃するんだ」


「ジャッジメントオールの活躍は俺も毎回録画して、楽しませてもらってます」


「最近は月に一度、あるかないかの出撃回数に落ち着いているけどね」


 それでも定時以後はパトロールの為に、ブルーコマンダーで巡回を欠かさず行っている。


「ボクの仲間を紹介しよう。みんな!」


 無人戦隊の仲間は当然人間ではない。


 フォレスの呼びかけを受けてやってきた4つの物体。


「ボール、ですか?」


「そう、このボールズが頼れる仲間さ」


 バウンドさせる球技で使うボールサイズの球体が、リーノの前で横並びになる。


『はじめまして、私が副長のレイラです。担当はティックス5です』


 レイラをはじめ、ティックス2のフローラ、ティックス3のクロード、ティックス4のバックスの自己紹介が済んだが、並び替えられたら誰が誰かを当てられる自信はリーノにはない。


「それもそうか、だったらね」


 次へ行こうとするフォレスだったが、突然サイレンが鳴り響く。


「出動ですか?」


「ああ、そうだな」


 スクランブルがかかっているのに、フォレスは考え込み動こうとしない。


「隊長?」


「君も来るといい。コマンダーはボクの他に2人乗れるからね」


 出向初日、突然の急展開に弥が上にも高揚するリーノは、フォレスと共にブルーコマンダーに乗り込み、サブシートに座ると間も空けずにブルーティクスは発艦する。

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