Episode30 「その後ってやつだ!」
現場に駆けつけたベルトリカは、ラリーとカート、そしてソアを小惑星で降ろして宇宙の戦場に戻った。
カートが基地のシステムを乗っ取り、ソアが預かって内部の様子を確認する。
カートは一人でプラズマカノンの元へ。
ラリーは発令所の内部をモニターするやいなや走り出し、ソアもそれについて行く。
キャプテン・ミリーはソニアに斬られる寸前、カートが割って入ってきて、
難を逃れた。
「本当に目の上のたんこぶになっちゃったわね、あなたって」
「そっくりそのままお前に言葉を返そう、ヘレーナ=エデルート」
結末が見えたヘレンたちは、結局なにもしないで帰って行った。
そして発令所では……。
「なにこれ!? 蹴り跡とか、壁に投げつけるとか、まったく子供みたいなことしてくれちゃって」
後ろで泣きやまないオリビエを気にしながら、ソアはミニたちを回収し、一つ一つを再起動していく。
「何かあっても、一度電源落として再起動すればいいって、わたし言わなかったっけ?」
怖い思いをして、自分も義体という鎧をまとっているのに、その事も忘れるくらいなんだからしょうがない。
「ほんとう、なんとか間に合ってよかったわよ。外はどうなったのかな?」
発令所のモニターを復活させ、外の様子を映し出す。
ティンク、リーノ、リリアの加勢で、一気に残党を片づけたランベルト号がこちらに向かっているのを確認し、向きを変えて頭の上に大きな丸を作る。
そのソアからの合図に、オリビエを抱えていて手の空いていないラリーは苦笑いを返した。
ノインクラッド衛星軌道にある宇宙船ドック、並んで入港するベルトリカとランベルト号。
ベルトリカに残っているのはソアとオリビエのみ。
ラリー達はランベルト号にお呼ばれして、祝勝会をしている。
当然2人も誘われたが、オリビエは晒し者になるのを嫌った。
通信で見ていたソアと、つき合いの長いラリーとカートは表情一つ変えなかったが、リーノとリリア、アンリッサまでもが、義体姿のオリビエの変化に想像以上の驚きを見せ、その後のべた褒め攻撃がすごく居心地悪く、サッサと工作室に入り、いつもの姿に戻した。
「ミリシャから変身したお前を連れて来いと言われたんだが」
ラリーのいらない一言がオリビエに殻を閉じさせて、2人だけでしたい相談があると言って拒否、参加したがっていたソアには犠牲になってもらった。
「それで相談って?」
「うん、この義体に戦闘プログラムを組み込んで欲しいんだ」
自動メイクマシーンは完成した。必要とされるなら公の場に出るのもやぶさかではない。
「見せ物になるのはいやだけどね」
オリビエが前衛に出ることはないだろうが、今回のように何もできず、ただ祈るだけの自分ではいられない。
「ヘレンはオリビエを見て、誰か分からなかったんだよね?」
「うん、そうだね。そもそもあまり接点はなかったんだから、当然だとは思うけど」
「いやいや、あの手のタイプが、オリビエの写真を手に入れてないなんて有り得ないから」
しっかり情報を揃えた相手にばれなかったのは利点となる。
「名前も考えた方がいいよね」
「偽名を使うの?」
「全くの別人になるの。オリビエはいつも自分を“ボク”って呼んでるけど、咄嗟に“ワタシ”ってヘレンに言ったのは有効だったんだよね。よし、キャラをしっかり作り上げちゃお」
なんて悪のりで進んだ企画。
凝りに凝りまくった改造が一応形になった頃、オリビエはまたまたランベルト号に呼び出された。
重力波装置はフル稼働の影響で不調が見られると言われ、ファクトリーではなく、キャリバー海賊団の基地がある宇宙コロニーに招かれる。
コロニーのシャトルポートに誘導されると、そこにはキャプテンが待っていてくれた。
「よう、よく来てくれたなオリビエ、じゃなかった、その姿の時はオリーブになるんだったな」
ミリーシャはミラージュと呼んでいた名前をオリビエと改め、更に訂正して出迎えてくれた。
「悪いなオリーブ=ミラーバ。何というか、その……、いいのか、そんな偽名ってバレバレので」
オリーブとミラーバ。ノインクラッドで放映中の幼児向け番組名を、そのまま偽名に使っている。
なんとなく本名に似ているので、間違えなく使えそうだと言ったリーノの案を採用した。
「キャプテン、笑いすぎですよ」
「そ、それにその喋り方……」
「なんなんですか、これでも結構努力したんですよ。って、ソアの暗示プログラムのお陰で、そんなには苦労はしてないんですけどね」
晒し者になるのはイヤだといいながら、白を基調とした上下。
ウエストを絞って胸を強調した上半身。
膝上10㎝の短いスカートから伸びるのはスラッと長い足。
頭も髪を金髪にして、瑠璃色の瞳によく似合っている。
「いや、ははっ、……いいんじゃあないか」
「散々笑った後に言われても……、ありがとうございます」
膨れっ面がまたかわいい。
「けどあんたのトレードマークはどうするの?」
「トレードマーク?」
「ゴーグル、ないと不便だろう?」
「ああ、それはこれ付けてるから大丈夫なんですよ」
と指差したのは、右目の目尻に付けた逆三角形の小さなアクセサリー。
「これがワタシの新しいツールなんです。目に入れた無色のレンズに情報を映してくれるんですよ」
因みに暗示プログラムもこれから投影している。
「はぁ、そいつがあれば、もうウィスクも要らないって事かい?」
「どうです、売れると思いませんか?」
「ああ、最高だな」
「と言っても色々と問題点も多くて、なかなか商品化までは遠いんですけどね」
堂々とした態度、はつらつと喋る姿、今のオリビエ、もといオリーブは自信に満ちている。そんな様子を見ているとミリーシャは自然と口元がほころんでしまう。
「な、なんですか?」
「いいんじゃないか、今のあんた」
「か、からかわないでくださいよ。そんなことよりお仕事、お仕事」
ここでまたキャリバーに来ないか勧誘をうけるが、オリーブは軽い冗談だといなして話題を戻し、2人はドックのランベルト号の元へ行く。
「使うたびにオーバーホールまでしないとならないのは問題ですよね。気休めですけどリミッターを設定しますね。それでもメンテは必要だし、ワタシも古代ユニットは弄れないので、万全にしてあげられるか分からないですけど、それでもいいですか?」
「ああ、今はそれで十分だ。メンテナンス方法をうちのスタッフにも教えてやって欲しい」
ランベルト号は次の仕事準備の為、物資の積み込みや船体の清掃をしている。
「海賊団の人は?」
「ウチは完全分業だよ。ランベルト号はフィッツキャリバーの広告塔でもあるから、スタッフを無償で借りてるのさ。団員は休む時はしっかり休む。突入隊員はトレーニングしているだろうけどね」
オリーブは専門家相手に伝わりにくい、感覚頼りの作業についても丁寧に説明し、二日かけて重力波ユニットを新品同様に整備した。
一日目の夜には歓迎会があり、レクリエーションだとエディーと試合をすることとなったが、実装したばかりの戦闘プログラムはいい線いったものの、勝利することはできなかった。
「プログラミング化は悪くないが、戦い慣れたヤツには通用しない。お前んとこの伝説ヤロー共に監修してもらって改良するといいぞ」
ついでにエディーとパメラの戦闘データももらい、歓迎会は大いに盛り上がった。
「楽しんでもらえたかい?」
「うん、昨日の夜もだけど、ここのスタッフさん達、みんな繊細で正確な技術を持っててビックリした。ファクトリーの新人さんに教えるのに役立ちそうだよ」
「やっぱりそっちの方がしっくりくるね」
ゴーグル姿のオリビエに、ミリーシャは右手を差し出す。
握り返した手を眺めながら、オリビエも「ボクも」と答える。
「まだあの姿を見られるのに慣れないや」
「なに、すぐ慣れるさ。ラリーにアピールするのに、いい切っ掛けだって思ってるんだろ?」
「キャプテンに負けない為だよ。その前に勝たないといけない人もいるけど」
「なに、もう勝ちのない相手を気にしてもしょうがないさ。じゃあな」
「うん」
シャトルに乗り込み、コロニーを出る。
スペースコロニーはキリングパズール近くまで移動してきており、惑星近くまで来ていたベルトリカと合流し、赤の船での仕事は終わりを遂げた。
次は青の戦隊。
まだあと少しある時間を利用して、戦闘プログラムを全員協力のもとでより使える物にし、ソアのミニも新たにオリビエタイプを新造したい。
オリビエは工作室に籠もり、義体の調整に取りかかった。




