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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode28 「無茶すんじゃあねぇぞ、オリビエ!」



「分かったよ。そこまではボクが連れて行ってあげる」


 この一言がオリビエを窮地に追い込むのだが、その事を今は誰も知らない。


 とは言え、この時点でも気付く心配事はある。


「2人で行くの?」


「厳密に言えば私は一人で乗り込むから、お前は私を降ろしたら、船に戻ってくれればいい」


 拠点はほぼ無人であったとしても、自動警備装置はオンになっているだろう。


「それくらいなら問題ないさ。全部ぶっ潰せばいい!」


 大打撃を与えたとは言え、敵の数はまだまだ多い、大きな陽動が必要となる。


「ストレス発散に大暴れしてやるよ」


「そう言うことぉ~!? あっ、ちょっとだけ待って、それならソアと連絡がとりたい」


 ベルトリカが位相差空間にいれば通信は不可能だが、通常空間にいてくれれば、多少の距離があっても繋がるはず。


『はいはぁ~い、待ってたよぉ』


「あっ、起こしちゃった?」


『ダイジョブ、ダイジョブ……』


「うん、それじゃあ最初は10からね」


『……分かった』


 短い通信を終えて、オリビエはミリーシャと共にブリッジから格納庫へ。


「後部を分離、コンテナの二番を持っていくから」


『りょうか~いママ、2分かかるけどいい?』


「なにかあったの?」


『ソアママが顔洗うからって、あの子達もたついちゃって』


「急がせて、1分で出るから」


『分かった。みんなぁ~、ママが怒っちゃう前に出発するよう』


 ベルはシャトルのコクピットブロックをセパレートさせ、一分後せり上がってきたコンテナをコクピット下部にドッキングさせた。


「さっきの遣り取りは何だったんだい?」


「ベルとの?」


「ああ」


「ふふふっ、キャプテンの役に立つ物を用意したんだ」


 ランベルト号の船底ハッチが開く。


 ガレオン船の主砲十門とバイク部隊が、船の周囲にいる賊を排除したタイミングで、シャトルを緊急発進させる。


 敵の死角になるよう船は傾き、前方のみに張った重力波は、敵の索敵に穴を開ける。


「あの大きな小惑星だよね」


「ああ、あれが田舎海賊共のアジトさ」


「どうしてそこなの? テロリストの基地の方が大きいんじゃない?」


「過激派にセオリーは通用しない。対比効果を考えたら、盗賊よりは海賊の方が反応がいいはずだ」


 海賊としての経験則を語るミリーシャに従い、シャトルは小惑星基地の宇宙船ドックに潜入する。


「キャプテン、1人でいくつもりだろうけど、役立つから連れてって」


「お前も戦ってくれるのかい?」


「ボクじゃあないよ。ボクが役に立たない事は分かったでしょ」


 エルディーと乱取りをした時のこと、確かに新型の義体を付けたオリビエは言い動きを見せた。並のチンピラでは触れる事も出来ないだろう。


 しかしプロからすれば、オリビエはやはり素人でしかなく、体の動かし方一つ分かっていない。


 銃の扱いはプログラムの補助が働けば、そこそこ使い物になる。


 しかし格闘術は機械任せにすれば、オリビエの生身を傷つけてしまう。


 広いところで後方支援は出来ても、狭いところではただの足手まといにしかならないと判断された。


「一緒に行くのはこの子達だよ」


 ブリッジのモニターに映し出されたのは。


「ヌイグルミ? ソア=ブロンクそっくりじゃあないか」


「ソアロボット・ミニだよ。2等親の身長は50㎝で肩幅が40㎝。戦闘能力はソアロボットの7割程度だけど、10体を動かせるようにしてあるから」


 同時使用の上限は25体。


 その全てを半自動ながら、リモートでベルトリカのソアが操作する。


『ヤッホー、キャプテン久し振り! でもないか、ヨロシクね』


 やたら甲高い機械音声だけど、確かにソアの声が聞こえる。


「こいつらを作ったのも、お前なのかい?」


『そうそう、期待してくれていいよ。アンリが珍しく予算度外視していいって言ったから、好き勝手作ったからね』


 それは頼もしい話だ。


 なにせ本当のところアンリは上限を設けていたのを好き勝手に、大幅に予算オーバーさせたことは、墓場まで持っていく秘密。


「それじゃあ、行こうか」


「待って、これを着けて」


「これってお前のゴーグルじゃあないか」


「ミニ達と繋がってる。もしソアとのリンクが途切れたとしても、この子達はゴーグルを着けたキャプテンと、ちゃんと連携を取るように設定してあるから」


「そうか、では有り難く借りておくよ」


 ヘルメットを被り、エアロックに入るミリーシャを見送る。


「さてと、後の15体も起動しておかないとね。って、あれって?」


 コンテナに向かおうとするオリビエは慌てて15体をたたき起こした。






 ミリーシャの足跡を追ってきたオリビエは、通路が破壊の跡だらけな事に苦笑を浮かべて、ミニ達の護衛の元、小惑星中心部にある発令所で合流することができた。


 全艦作戦中の基地内は閑散としていて、ミリーシャがここで捕縛したのは4人だけ。


 巨大スクリーンにはランベルト号が映し出され、その左右に四つずつあるモニターには恐らくは海賊達の戦力だろう船とモビールが逃げ回る姿。


「よぉ、ミラージュ。どうしたんだい、待ってるって言ってただろ?」


「それなんだけどね、ちょっと……」


 オリビエはシャトルのカメラに映った画像を見せようとする。


「待って、こいつはまずいよ」


「なに?」


「これ、分かるかい?」


 ミリーシャが基地内監視モニターで見つけたのは。


「……このタイプの砲身ならプラズマ砲じゃあないかな? ここから撃たれたら電磁フィールドも突破できちゃうよ」


「そいつの足下、人がいる」


「発射準備してるんだ。ちょっとここから離れてるね。どうするの、キャプテン?」


「私が行く。悪いがチビ共も15匹ほど連れて行くよ」


 基地内部は中心に近いほど、強い電波遮断がされていて、少し前からソアとは繋がらなくなっている。


 けれどオリビエは機械言語は読み書きできても、システムプログラムに詳しいわけではない。


「時間があれば、ボクでも乗っ取れると思うけど」


「だったら頼むよ。いいかい?」


「分かった。やるよ」


 捕まえた賊は気になるけど、残った10体のミニがいてくれれば安心だ。そう思っていた。


「あらら、お嬢さんお一人?」


「……ヘレーナ=エデルート一味」


 想定内で最悪な状況に、オリビエはゆっくりと顔を上げる。


 シャトルのカメラで確認してから、こういう対面も予想はしていた。


 ヘレーナ=エデルートとソニアル=フェアリアの2人だけだが、どちらもオリビエが勝てる相手ではない。


「あらら? 私達のことをご存じとは、いったい何者?」


 ヘレンには今のと言うか、オリビエとの接点もないに等しい。ばれていないなら隠し通すしかない。


「う~ん、キャリバー海賊団にもあなたみたいな子、いなかったと思うんだけど」


 ベルトリカはもちろん、目の上のたんこぶなランベルト号の情報もヘレンは調べている。


「もしかしてファクトリーの職人さん? だったらあの古代兵器について教えてもらえるかしら?」


 間違っているが、間違っていない。


 オリビエがヘレンの求めている情報を持っている事に、気付かれるわけにはいかない。


「そこのちっこいの、どことなくあの子に似てるわね」


 警戒はしているが仕掛けては来ないミニ達を睨み付け、ヘレンは情報を整理する。


「ベルトリカがまだ関わってるんだとするなら、目的をとっとと果たして、さっさと帰るべきね。あなた、名前は?」


「ワタシは……教えません」


 オリビエは咄嗟に自分をボクとは呼ばず、ワタシと答え敬語を用いた。


「あっ、そ。なんでもいいけど、またどこかで会うようなら、今度は邪魔者として排除させてもらうわよ」


「今日は見逃してくれるという事ですか?」


「急いでいるからね。ここはロックしておいて上げるから、後でキャプテン・ミリーに拾ってもらいなさい」


 端末を数分操作し、あっさりと小惑星基地のシステムを乗っ取り、ついでにミニ達を停止させた。


「まずいなぁ~」


 ヘレンは宣言通りに発令所の扉をロックしていった。


「モニター映像も切られちゃったし、端末もロックされてる。このウイスクだけだとどうしようもないや」


 オリビエは何度か端末にタッチすると手を止めた。


「……ラリー、助けて」


 その場にしゃがみ込み、溜め息を吐いた。

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